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命と向き合う。その生き方が「命の大切さ」そのものとなる

林遣都 インタビュー

命と向き合う。その生き方が「命の大切さ」そのものとなる

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人の暮らしが自然からどんどん離れていく中で、「命の大切さ」という言葉に、私たちはどれだけの重みを与えることができるでしょう。
『犬部!』(2021年7月22日公開)は、行き場のない犬や猫を救うために立ち上がったサークル「犬部」の奮闘を描く青春群像劇。犬や猫の“可愛さ”だけを持ち上げるのではなく、保護犬・猫問題や多頭飼育崩壊などに目を向け、「命と向き合う」最前線で活動する人たちを映し出します。
「犬部」を生み出した主人公・花井颯太を演じるのは、自身も大の動物好きだと語る林遣都さん。たくさんの命に触れ、動物たちと心通わすことで強くした思いについて、ひとつひとつ言葉を確認するようにお話しいただきました。
林遣都 インタビュー

人にも動物にも
「心」で向き合いたい

今作の撮影はオールロケで撮影されたそうですね。そのロケ地の中心となる青森県十和田市の大自然の中、たくさんの動物たちに囲まれての撮影は、率直にいかがでしたか? あんなに多くの命に触れる経験はなかなかないと思うのですが。

実家で犬を飼っていたこともあって、もともと動物が大好きなんです。語弊を恐れずに言うと、「人も動物も変わらない」と思っているタイプで。今回、撮影を通して動物たちと触れ合うことで、よりその気持ちが強くなりました。

林さんは、過密な撮影スケジュールの合間を縫って、犬用宿舎に何度も足を運んで一緒に散歩したりお世話をしたりと、「犬部」のような生活を体験されたそうですね。警戒心が強い犬も林さんに心を開いていたと、今作のプロデューサーが語っています。

林遣都 インタビュー

人と動物、どちらにも「心」があって、心と心で向き合うことができると思っているんです。人と動物であっても、理解したいと思って一緒に過ごすことで、お互いに特別な存在になることができる。それは、動物たちと一緒に過ごす中で常に感じていました。

林さんをはじめとした出演者の皆さんが、動物たちと密にコミュニケーションをとったからこそ、なしえたシーンが多くあったと聞きました。

正直、最初に脚本を読んだときは「このシーンは不可能なのでは…」と思ったところがあったんです。けれど、実際の撮影では動物たちがこちらの予想を超えてきて。それは、僕だけでなく今作に関わった皆が、「犬部」での人と動物の関係性を正確に伝えようと、動物に向き合い、そして、動物たちがそこに応えてくれたからだと思います。

「犬部」は、獣医学部生たちが行き場を失った動物を、自分のアパートで保護し、新しい飼い主を探す活動をするサークルです。保護された動物たちの多くは、その劣悪な環境などから問題を抱えていましたが、「犬部」のメンバーが愛情を持って接していく中で変化していく様が描かれていました。

動物たちはみんな本当に感情表現が豊かで、表情があるんです。撮影中は、出演者やスタッフさんと「こんな幸せな撮影はないよね」と毎日のように言い合っていました。

『犬部!』林遣都 インタビュー
©2021『犬部!』製作委員会

その「犬部」を立ち上げた林さん演じる主人公・花井颯太は、獣医学部生の時に保護犬を引き取り、“花子”と名付け、相棒として一緒に過ごし始めます。その花子を務めた“ちえ”も、実際に保護犬だったそうですね。表情が豊かで驚きました!

今日、この前の取材現場で“ちえ”と会ったんですが、嬉しくて普段では出ない声が出ました(笑)。そうやって、動物は人間の仕舞い込んでいたり、忘れていたりする感情を引き出してくれるんです。

今作には動物たちの豊かな表情だけでなく、動物たちに引き出された人間の表情も散りばめられています。動物だけが変化していくだけでなく、向き合った人も心が豊かになっていくんです。

林遣都 インタビュー

人が動物をケアするだけでなく、
人も動物に助けられている

颯太は「一匹も殺したくない」という信念のもと、当時は獣医学部生としては避けては通れなかった“生体実習犬での外科実習”も拒否する、異端の存在として描かれています。その際、獣医科大学の教授・安室源二郎(岩松了)にかけられる「一人で世界を変えられるなんて思わない方がいい」という言葉が印象的でした。

今作の原案となったノンフィクション『北里大学獣医学部 犬部!』(ポプラ社)は、実在のサークル「犬部」の活動に感銘を受けた片野ゆかさんが、「保護犬や猫たちの現状を、一人でも多くの人に知ってもらいたい」という思いから、長期間の取材によって形になった本です。

『北里大学獣医学部 犬部!』 (ポプラ文庫)

片野さんが取材された当時は、まだ犬猫の保護や譲渡活動に関わる人が少なく、獣医師の卵である若者がそういう活動に携わるのは想像もできなかったそうですね。

映画『犬部!』も、ゴールがないことに挑んで、状況を変えようとしている人たちを描き出そうとしています。演じるからには、その人たちの考えや生き方をしっかり学んで、思いを背負って、覚悟を持って挑まなければと思っていました。

颯太たち「犬部」のメンバーは強い信念を持っていますが、立ちはだかる現実はとても辛く、痛みを伴います。それでも、信念を貫き通そうともがく姿が描かれていますね。

颯太のモデルであり、「犬部」の創始者である獣医師の太田(快作)先生にお話を伺った時、「自分が活動を続けてこられたのは、花子の存在が大きかった」とおっしゃっていました。人が動物をケアするだけでなく、人も動物に助けられているんだなと。

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柴崎(中川大志)も、学生時代や社会人になってからと、動物たちに助けられていましたよね。

颯太と柴崎は、「殺処分をゼロにする」と言う目的が同じでも、そこへの向き合い方が対照的な存在として描かれていました。颯太は、信念とともに一人で真正面からぶつかっていくタイプ。柴崎は、信念と違ったとしても一度は自分の中に取り入れ、バランスをとって進んでいくタイプ。林さんはどちらにより共感しましたか?

©2021『犬部!』製作委員会

どちらにも、共感しました。颯太の生き方はかっこいいと思います。現状を変えていくためには、必要な存在です。僕も、颯太までとはいきませんが、何事もやらないで後悔するなら挑戦してみようという心意気でいるつもりです。でも、やってみてダメだった時は、柴崎のように「人の意見を受け入れる」ことも心がけています。

「周囲の意見を受け入れる」というのは、自分の意見を貫くこと以上に難しい面もありますよね。

僕にとっても、そこは難しい…。人間関係の悩みも、そこに通ずるところがあります。でも、そうやって「試行錯誤する」という過程自体が、自分にとって必要なんだろうなと。悩んだ上で自ら選択する。たとえ、進んだ先が思ったものと違っても、そこに学びがあって成長がある。そうやって過ごしていくのが人生……(笑)、じゃないでしょうか。

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林遣都の「心の一本」の映画

では、最後に林さんの「心の一本」の映画を教えてください。

大好きな映画が一本ありまして…『きっと、うまくいく』(2009)です。

公開時にインド歴代最高の興行成績を記録したコメディ映画ですね。インドの競争社会への疑問を投げかけつつ、3人の大学生の友情を通して「幸せな生き方とは?」を描く作品です。

公開の際に、映画館に観に行ったのですが、純粋に笑えて、泣けて、心を打たれて…衝撃を受けました。それをきっかけにインド映画を大好きになって。

林遣都 インタビュー

どんなところに、衝撃を受けたのですか?

突拍子もなく歌とダンスが始まる、などの演出がありますよね(笑)。

いきなり背景がアニメーションになったり、コメディの中にミステリー仕立てがあったり、と常識を飛び越えた驚きの演出がありますね。

そういう頭の柔らかさはとても大事だなと、同じ表現者として気づきがあるんです。感動の届け方は多様なんだなと。それから何度も観返しているのですが、その度に感じるものがあります。

同じ映画を、その時々で観返すことがあるんですか?

林遣都 インタビュー

あります。『ゴッドファーザー』(1972)もそうですね。昔、観たときは深く理解できてなかったのですが、時間を置いて観返したら、人生の一本になりました。…2本も挙げてしまって、すいません。

いえ、何本もお伺いできて嬉しいです。『ゴッドファーザー』は、アメリカのイタリア系移民が形成する、巨大なマフィアの内情を描いた壮大な叙事詩シリーズの第1作。巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督による、世界的ヒットを記録した不朽の名作ですね。

映像づくりに携わっているものであれば、誰もが追求する先の答えがあるような作品だと思います。

林さんにとって「映画を観る」とはどんな体験ですか?

う〜ん…、僕にとってずっと変わらないのは「特別な時間」だということ。なくすことはできないです。映画に限らずかもしれないけれど、劇場で映画を観ると、違う世界へ連れて行ってくれて、色んなことを忘れさせてくれて、そういう意味でもなくてはならない時間。…だから、僕はこれからも関わっていきたいと思っているんです。

林遣都 インタビュー
INFORMATION
『犬部!』
出演:
林 遣都 中川大志
大原櫻子 浅香航大 / 田辺桃子 安藤玉恵 しゅはまはるみ 坂東龍汰
田中麗奈/酒向 芳 螢 雪次朗 岩松 了

監督:篠原哲雄
脚本:山田あかね
原案:片野ゆか「北里大学獣医学部 犬部!」(ポプラ社刊)
主題歌:「ライフスコール」Novelbright(UNIVERSAL SIGMA / ZEST)
配給:KADOKAWA
7月22日(木・祝)全国ロードショー
公式HP: inubu-movie.jp
Twitter: @inubu_movie
Instagram: @inubu_movie
©2021『犬部!』製作委員会
青森県十和田市に、一人の変わり者がいた。花井颯太(林遣都)22歳、獣医学部の大学生。子どもの頃から大の犬好きで、一人暮らしのアパートには保護動物がぎっしり。周りからは変人扱いされても、目の前の命を救いたいという一途な想いで保護活動を続けていた。ある日颯太は、心を閉ざした一匹の実験犬を救ったことから、ひとつでも多くの命を救うため、動物保護活動をサークルにすることを思いつき「犬部」を設立。颯太と同じく犬好きの同級生・柴崎涼介(中川大志)らが仲間となり動物まみれの青春を駆け抜け、それぞれの夢に向かって羽ばたいていった。颯太はひとつでも多くの命を救うため動物病院へ、そして柴崎は動物の不幸な処分を減らすため動物保護センターへ――。
「犬部」から16年後。獣医師となっても一途に保護活動を続けていた颯太が逮捕されたという報道をうけて、開業医として、研究者として、動物保護センターの一員として、それぞれの想いで16年間動物と向き合ってきたメンバーたちが再集結するが、そこに柴崎だけがいなかった……。
PROFILE
俳優
林遣都
Kento Hayashi
1990年12月6日生まれ。滋賀県出身。2007年、映画『バッテリー』(滝田洋二郎監督作)で俳優デビュー。第31回日本アカデミー賞新人俳優賞ほか、多数の新人賞に輝く。『DIVE!!』(08/熊澤尚人監督作)、『ラブファイト』(08/成島出監督作)、『風が強く吹いている』(09/大森寿美男監督作)、『パレード』(10/行定勲監督作)などを経て、ドラマ&映画『荒川 アンダー ザ ブリッジ』(11~12)に主演。その後も順調に出演数を重ね、『しゃぼん玉』(17/東伸児監督作)、『チェリーボーイズ』(18/西海謙一郎監督作)といった主演作品でも新たな魅力を披露。今後の待機作に映画『護られなかった者たちへ』(21/瀬々敬久監督作)、『恋する寄生虫』(21/柿本ケンサク監督作)などがある。
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