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映画を観た日のアレコレ No.39

編み物作家
編み物☆堀ノ内の映画日記
2021年3月22日

映画を観た日のアレコレ
なかなか思うように外に出かけられない今、どんな風に1日を過ごしていますか? 映画を観ていますか?
何を食べ、何を思い、どんな映画を観たのか。 誰かの“映画を観た一日”を覗いてみたら、どんな風景が見えるでしょう? 日常の中に溶け込む、映画のある風景を映し出す連載「映画を観た日のアレコレ」。
39回目は、編み物作家 編み物☆堀ノ内さんの映画日記です。
日記の持ち主
編み物作家
編み物☆堀ノ内
Horinouchi Amimono
1967年神奈川県生まれ。桑沢デザイン研究所を卒業後グラフィックデザイナーに。2013年に編み物を習得し、2015年より「編み物☆堀ノ内」名義で活動を開始。家庭用編み機を使用した機械編みと手編みの二刀流で製作。編み物において大きな影響を受けたのは、小説家の橋本治さんが1984年に刊行した『男の編み物 橋本治の手トリ足トリ』(河出書房新社)。初めて編んだ作品は、心の師匠(マスター)、ブルース・リーのチョッキ。オーダーメイドで肖像を編むほか、フィギュアメーカー「メディコム・トイ」とコラボでニット・ブランド「KNIT GANG COUNCIL」も手掛ける。

2021年3月22日

いつものように午前6時台に起床。
朝食を作って食べ、片付けをしてから家を出る。
9時過ぎに代々木にある仕事場に到着。

編み物の仕事がやや軌道に乗り始めてからは、映画を観る時間を取りにくくなってしまった。
編み作業ははてしのない単純作業の繰り返しで、これを1日8〜9時間。
目と手と集中力は使うが心は退屈で、だんだん単純作業が苦痛になってくるので、
ラジオやポッドキャスト、音楽を聴きながら作業するようになった。
あるときふと、「吹き替えなら映画かけながらも作業出来るんじゃ?」と気付き、
試しにやってみたら、いける!
このときから編み作業中に映画を観るようになった。
洋画を吹替版で観るなんて、英語がわからずとも洋画の楽しみ半減じゃん!
と思っていたけど、このさい仕方ない。
映画が観られないより、吹替版でも観られたほうがずっといい。

ただ編み作業中は手元を見なくてはいけないので、画面をあまり観ることができない。
そのため、セリフではなく映像で物語が進むアクション映画は不向き。
会話中心の映画が理想で、たとえばスコセッシの『グッドフェローズ』『タクシードライバー』『カジノ』は作業中に何回も観ている。
映画を選ぶのが面倒なときは、このうちのどれかをBGMみたいに流す。

困っているのは、DVDでも、NetflixやAmazonプライム・ビデオでも、日本語吹き替えが付いている映画が意外と少ないこと。
とくにNetflixでは面白そうなドキュメンタリーも多いのに、ほとんど吹き替えがないのが残念。

今日の1本目は、Netflixのドキュメンタリー『HOMIE KEI 〜チカーノになった日本人〜』。
いや〜。こんなことほんとにあるんだ!と驚きの連続。
日本のやくざだったKEIがアメリカの極悪刑務所(毎日のように殺人や抗争が起こる。刑務所の中なのに!)に10年以上収監され、
最強のチカーノギャンググループに仲間として受け入れられた実話に基づく作品。
『ブラッド・イン ブラッド・アウト』や『スカーフェイス』を地で行くエピソードがすさまじくて「漫画みたいだ!」と興奮していたら本当に漫画化されていて(『チカーノKEI~米国極悪刑務所を生き抜いた日本人~』秋田書店刊)、いまや100万部以上のベストセラーだそう。すごいな。

毎日14時前後に昼食。休憩時は画面に集中できるので、字幕映画を観る。
でも毎日20分くらいしか休憩を取らないので4〜5日に分けて。
今日の2本目は先日なんとなくレンタルした映画『パブリック 図書館の奇跡』。これがなかなか面白い。
特に主役のエミリオ・エステベスがいい。
お騒がせのチャーリー・シーンの兄だし、『レポマン』や『アウトサイダー』の粗暴な印象しかなかったけど、
こんなしみじみとした芝居をする役者だったのか……。
「この映画いいな〜誰が作ってるんだ?」とググったら、エステベスが脚本を書いて監督もしてる。
えー全然知らなかった。この人、立派な映画作家だ!
エステベスが脚本と監督を手掛けた『星の旅人たち』も観なければ。

昼食後ふたたび編み作業に戻る、合間にメールの対応や発送など。

コロナの影響で新作洋画がほとんど作られていないので、古い作品を観直すことが増えた。
今日の3本目は1970年に放送が始まったTVアニメシリーズ『あしたのジョー』。
先日、世田谷文学館での「あしたのために あしたのジョー!展」でちばてつや先生の圧倒的なクオリティの漫画原稿を見て、
小学校卒業以来ふたたび、ジョーへの熱が再燃中。

観たのは20何話目で少年院時代のジョーの話。
しかし今改めて見るとジョーの悪童ぶりはすごい。
梶原一騎先生の自伝漫画『男の星座』を読んだ後に『ジョー』を観ると、
梶原先生とジョーの姿が重なり、リアルに迫ってくる。
昭和育ちの男子は心のどこかで何らかの形で、梶原一騎の影響を受けているのではないか。
それにしても、どこまでも素直で人に優しく、ひ弱な青山くんがなぜ極悪特等少年院に収容されていたのかは謎。
どんな理由があったんだろう。

20時頃に仕事終了。
帰りの電車で本当はもう1本くらい観たいけど、気力が残ってない。
スマホでダラダラSNSを見たり大貧民をやったりして帰宅。

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PROFILE
編み物作家
編み物☆堀ノ内
Horinouchi Amimono
1967年神奈川県生まれ。桑沢デザイン研究所を卒業後グラフィックデザイナーに。2013年に編み物を習得し、2015年より「編み物☆堀ノ内」名義で活動を開始。家庭用編み機を使用した機械編みと手編みの二刀流で製作。編み物において大きな影響を受けたのは、小説家の橋本治さんが1984年に刊行した『男の編み物 橋本治の手トリ足トリ』(河出書房新社)。初めて編んだ作品は、心の師匠(マスター)、ブルース・リーのチョッキ。オーダーメイドで肖像を編むほか、フィギュアメーカー「メディコム・トイ」とコラボでニット・ブランド「KNIT GANG COUNCIL」も手掛ける。
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