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想像を形にする 「はじめの第一歩」

沖田修一監督×橋本愛×本谷有希子×シソンヌじろう インタビュー

想像を形にする 「はじめの第一歩」

どんなベテランや巨匠と言われるつくり手にも、はじめの第一歩があります。そのデビュー作に触れると、経験がないことは時に強みとなることが感じられるのではないでしょうか。
動画配信サービスのHuluが、新世代の映像クリエイターの発掘・育成に重きを置いた「Hulu U35クリエイターズ・チャレンジ」プロジェクトを2021年から開催しました。その大きな特徴のひとつが、プロ・アマ問わず、35歳以下であれば参加可能なこと。企画書から選考が始まるので、企画力と熱意があれば、全くの未経験者でもグランプリを狙うことが可能な映像コンペです。
本プロジェクトの審査員を務めるのは、沖田修一監督、橋本愛さん、本谷有希子さん、シソンヌじろうさん。849企画の中から、ファイナリスト5名を選出しました。今回は、グランプリを選ぶ最終審査直後の皆さんに、それぞれの審査を通して感じた「ものづくりにおいて自分が大切にしていること」、また「自身のはじめの第一歩」について伺いました。

自分の「好きなこと」「感じたこと」が、
誰かの心を動かす瞬間

新世代の映像クリエイターの発掘・育成プロジェクト「Hulu U35クリエイターズ・チャレンジ」(以下、HU35)の最終審査が終わり、先ほどグランプリ作品が決まったそうですね。

沖田はい。

今回、沖田修一監督、橋本愛さん、本谷有希子さん、シソンヌじろうさんの4名が審査員を務められました。

…皆さんが一同に集まると、スーパーヒーロー集結のような趣があります…!

本谷それぞれのフィールドで活動し、異なる役割を担う4人ですよね。

じろうあぁー、そうか。言われてみると、そうですね。

映画監督として、俳優として、劇作家・小説家として、芸人・脚本家として、独自のスタイルを貫かれてきた皆さんという印象です。

本谷私が映像作家の未来を背負えるのか不安ですが…。沖田さんと橋本さんは、わかるんですけどね(笑)。

橋本私は審査員という言葉に、恐縮してしまいます。

沖田僕も、自分自身のことで精一杯ではあるんですが…。

と言いながらも、ファイナリスト選考会では熱い議論を交わし、落選した人へも「今回選ばれなかったとしても、諦めないでほしい」「自分が作りたいものを作り続けてください」などの言葉を投げかけられていましたね。最終審査会でも、グランプリを決めるまで、色々話し合いがあったと思いますが…。

沖田はい、殴り合いの大乱闘で。

一同(笑)。

「HU35」は、“発掘”だけでなく“育成”にも重きを置かれたコンペです。そのため、作品として形になる前の企画段階から選考し、その後、ファイナリストとして選ばれた5名が自ら監督として手がけた作品の中からグランプリが決定されます。

第1回「Hulu U35クリエイターズ・チャレンジ」
●一次選考
・企画書
・応募者情報
●二次選考
・詳細プロフィール
・脚本もしくはロング・シノプシス
・PR動画:3~5分程度の、自身もしくは企画をPRする動画
●三次選考
プレゼンテーション選考により、ファイナリスト5名を選出
・審査員への10分以内のプレゼンテーション(映像・スライド等、形式は自由)
●作品制作・配信
5名のファイナリスト自身が監督と脚本を務め、オリジナル作品として映像化。
完成した作品は、制作風景に密着したドキュメンタリーと併せてHuluで独占配信
●最終選考
審査員の協議により、グランプリ作品を決定

皆さんは、ファイナリスト5名を選考する段階から関わり、企画書や脚本、プレゼンなど「作品になる前のタネ」から、この5作品に触れられてきたわけですが、グランプリを決めるまでの過程で見えてきた「自分が作品を評価する上で大切にしていること」はありましたか?

沖田そうですね…審査する中で、僕が初めてテレビドラマを撮ったときのことなどを思い出していました。まず映画づくりは企画段階が特に楽しいわけですね。夢いっぱいで。

でも、自分の「面白い!」と思った企画をそのまま実現できるわけではなく、実際は予算とスケジュールなどの制約を受けてつくっていかなくてはいけない。その中で、最終的にどのくらい頭に描いたままのものを作品として形にできるか。そこを僕たちは見ていたと思います。

「HU35」の最終審査では、ファイナリストに残った5名は自らが監督となり、プロの映画制作チームのサポートを受け、制作費1000万円、4-5日間の撮影期間で制作した約40分の作品で争われます。

沖田制約の中でも、いかに自分の「面白い」企画を、「面白いまま」つくれるのか。最終審査でもそこは大きなポイントとなりました。実際、企画より作品の方が、面白さの想像を大きく上回ったものをグランプリとして選べたのは、本当に嬉しかったです。

では、今回のグランプリ作品をお伺いしてもいいでしょうか?

沖田最終審査会で決まったグランプリ作品は『まんたろうのラジオ体操』です。

老山綾乃さんの作品ですね。報道番組のADとして働く主人公を片山友希さん、主人公の向かいに住む老人を長塚京三さん、その姪を渡辺真起子さんが務めています。

©2022 HJ Holdings, Inc.

老山さんは、撮影時、日本テレビの報道番組「真相報道 バンキシャ!」のAD3年目として働く23歳でした。今作では、出演者だけでなく、撮影・鎌苅洋一さん、音楽・坂本秀一さんなど、スタッフ陣も最前線で活躍するプロフェッショナルが、老山監督をサポートしています。

©2022 HJ Holdings, Inc.

制作中に大変だったこととして、老山監督は「俳優さんやスタッフとのコミュニケーション」を挙げられていましたが、ベテランの中で自分の意見を通すことも大変難しいことだったと思います。

橋本私は、ファイナリストの作品の中で好きなものが2つあって、そのひとつが『まんたろうのラジオ体操』でした。

劇中での時間の積み重ね方が他作品と違うように感じたんです。40分という短い尺ですが、『まんたろうのラジオ体操』は全然窮屈ではなくて、むしろ時間を感じさせなかった。そして、40分という時間の中で「これこそ人生だよな」というものを感じることができました。

第1回ファイナリスト5作品
『脱走球児』
監督・脚本:近藤啓介(映画監督)
『まんたろうのラジオ体操』
監督・脚本:老山綾乃(テレビ制作)
『速水早苗は一足遅い』
監督・脚本:上田迅(演出家)
『鶴美さんのメリバ講座』
監督・脚本:幡豆彌呂史(大学生)
『瑠璃とカラス』
監督・脚本:吉川肇(テレビ制作)

橋本さんは、ファイナリスト5名が決まった選考会において「どれだけ観客を没頭させられるのかというのは、作品づくりにおいて大事」とおっしゃっていましたね。

橋本例えば「主人公が自信を持つ」変化を描くときに、他の作品は、誰かの言葉だったり、ある出来事だったり、すごくわかりやすい記号的な描写が、ストーリーに組み込まれているように思いました。でも、『まんたろうのラジオ体操』はそうではなかった。

橋本主人公とまんたろうさんの二人が積み重ねた時間が、自然と主人公の心を変化させていったんだなと感じられて…あっこれだと。なんかそれこそがドラマティックなんだなと思いました。

本谷「“ストーリー”ってなんだろう?」というのは、今回の審査で考えたことのひとつですね。『まんたろうのラジオ体操』だけが、ストーリーありきではなく、描写を積み重ねることによってラストシーンが導かれているという印象を受けました。

それと、「“作品”と“コンテンツ”の違いってなんだろう?」ということも、審査を通して考えたことのひとつです。

本谷さんは、審査員を務めるにあたってのコメントで「バズりそうなものとか、ウケそうなものとかどうでもいいから、とにかく作り手が『これ、最高に面白いよね』と思い込んでるものが観たい」とおっしゃっていますね。

本谷「死ぬほどどっかで観たことあるような作品」って、山ほどあるじゃないですか。コンテンツの山の中で、あえて新しいものをわざわざつくる意味って何だろう? その中で、何ができるんだろう?…と、色々考えました。

今は、創作する環境として過酷だと思います。でも、だからこそ「もっと失敗して欲しかった」とも思います。

「5作品中、3作品くらい失敗してほしい。失敗の仕方もある。失敗作を観て、私はむしろ才能を感じるかもしれない」と、ファイナリスト5名が決まった選考会でもおっしゃっていました。

本谷そういう意味では、全員が、もっとめちゃくちゃ失敗しても良かったのかなと。

じろうコンペにおいて、“正統、王道”な作品より、粗削りでも“新しい”作品が評価される傾向ってあると思うんです。

お笑いでも、審査員の見る目があればあるほど、そういう結果になることが多いので、“正統”な漫才やコントをしている芸人は、ちゃんと観客にはウケているのになぜ評価が低いんだろうという葛藤がある。

じろうだから、もちろん「粗削りでも“新しい”」ものも評価しつつ、着実に面白いものをつくれる能力というのも、自分が審査するにあたっては評価していきたいと思いました。

本谷そうですね。そういう意味でも、「現時点での作品」で評価するか、「これから作家が生み出す作品」まで視野に入れるかは大きな争点でした。どちらの方が、監督のためになるのかは難しい判断だねって。

なるほど。それで最終的に皆さんは、どちらを選択されたのでしょうか?

沖田そうですね…若さとは…何でしょうね……。これから、どんな作品をどんな風につくっていくのかなぁと、そこが未知数、わからなくて楽しみな方がいいなと思ったんです。

だから、その監督が生み出す未来までを加味した選考になりました。

©2022 HJ Holdings, Inc.

自分の背中は、自分で押せ

先ほど沖田監督は、審査する中で自身が初めてテレビドラマを撮ったときのことを思い出したとおっしゃっていましたが、皆さんにも「はじめの一歩」があったと思います。そのときの自分に、現在の自分が声をかけてあげるとしたら……じろうさんは、何て伝えますか?

じろうえ!? 僕ですか?

本谷目をそらしてたから…。

じろうえー(笑)…何だろう…。「恥はかきすて」じゃないですけど、僕が中高生だった頃、すごく悩んでいたことがあったんです。けど、今になってみると「しょうもないこと」なんですよね。何であんなことで悩んでたんだろう、行動できなかったんだろう…と時間が経つと笑い話になっている。今でも、当時の自分の悩みを思い出すと笑えます。

だから、挑戦して失敗したとしても、その先では必ず笑い話になるから、とりあえずやってみたら?と。でも、自分を振り返ってみると、あんまり失敗した覚えはないんですよね…。

じろう好きなことだけを自由にやってきたという自負があるというか。色々挑戦し続けてきて今があるんですが、何をもって自分は「幸せ」とするのかは考えて生きてきたというか。

自分の幸せの軸を、「自由に好きなことをしてるか」に置かれてきたんですね。

じろうそうですね。幸せを求めて、自分の幸せな方を選んでいけば、「幸せ」ではいられるじゃないですか。だから、もし一歩を踏み出すことを悩んでいる自分に声をかけるとしたら、「大丈夫、君は幸せだ」だと思います。

沖田僕は、その最初に撮ったテレビドラマで、主演を務めてくださったのが、由紀さおりさんだったんです。そのときの光景を思い出しました。

『後楽園の母』(2008)ですね。音楽専門チャンネル「MUSIC ON! TV」が開局10周年を記念して制作した、ドラマプロジェクトの第一弾となる作品です。

初めて手がける作品の主演が、大ベテランの由紀さんだったと。

沖田何で紅白歌合戦のトリを飾るような大ベテランの由紀さんが、プロとして初めて映像を撮るような僕の言ったことに従ってくださるんだろうと。なんか怖くなったのを覚えています。

やっぱり撮影現場では、僕が思っていたように進まないことが多くて、オールアップした後、そのロケ場所だったマンションの屋上でボーッと佇んで、「俺はもうダメなんだ」と思ったんです。あのときの自分に「大丈夫だよ」って、声をかけたいですね。あのマンションの屋上で背中をさすってあげたい(笑)。

橋本私も「恥はかきすて」ではないですけど、「怖いもの知らず」だったので、それは強みでもあったと思います。最初は、自分の意志と関係なく俳優の道を進んでいたので。本当に「バカ」だったな…と、今となっては(笑)。

橋本さんがこの世界に入るきっかけとなったオーディションは、お母様が応募されたそうですね。その2年後には、初出演となった映画『Give and Go -ギブ アンド ゴー-』(2008)で初主演を務められます。

橋本そのあとに携わった作品で、すごく厳しい現場があったんですけど、そこでも「怖いもの知らず」というか、「勘違い能力」を発揮して、周りの同年代の共演者の方々が疲弊する中、意欲を落とさず現場に居続けることができたんですよね。

そういう「勘違いする力」を色んな場所で発揮してしまったからこそ、今も俳優を続けているんだと思います。

本谷私も無謀だったな…。でも、やっぱりその「無謀さ」って今思うと財産だったなと。

今回、ファイナリストに残った幡豆彌呂史はず みろしさんは、これまで映像関連の仕事には⼀切関わったことがない未経験者でしたが、制作を終えた後のコメントで「何も知らないのはハンデですが、強みになることもあるんだ」と語っていました。

©2022 HJ Holdings, Inc.

本谷今は、SNSやサイトのコメント欄などで周りの評価にさらされてしまうから、いかにその評価に耐えられるか、タフさがあるかも問われますよね。私の頃は、まだ無かったから。

じろうそうですね。自分が若手の頃に、今のような環境だったらと考えると…。ダイレクトに評価が届いてしまうから。

本谷だから、どれだけ周りを気にしないで「バカ」になれるか。自分がしたいことを貫きぬいて、「映画バカ」になれるか。

確かに、バズるやウケるなど、客観性や再現性が評価されやすい世の中で、「自分の好き」を突き詰めた先に共感があることを体験できる、このプロジェクトは貴重だと思いました。

©2022 HJ Holdings, Inc.

そして、「HU35」の第2回開催が決定したということなので、また新たに「ものづくりの第一歩」を踏み出す人がたくさん出るのではないでしょうか!?

第2回「Hulu U35クリエイターズ・チャレンジ」応募開始!
●一次選考 応募期間
2022年6⽉10⽇(⾦)〜7⽉31⽇(⽇)23時59分まで
※詳しい募集要項や応募期間は公式サイトでご確認ください
公式サイト: http://HU35.jp

それでは、今、一歩を踏み出そうとしている人へ、その背中を押すようなメッセージを……じろうさんから、お願いできますか?

じろう何で!…何で、いつも僕から…。

本谷目をそらしてるから(笑)。

じろうそうですね…今はどこにいても、映像をつくれるし、発信できる世の中だと思うんです。何だったら、僕も実家の青森に帰ってもいいぐらいに思ってますから。東京にいる必要はないなと。

どんな環境でも、ものづくりはできると。

じろうそうですね…でも、背中を押すようなメッセージって、難しいですね…。

沖田背中を押さなくても、そういう想いがある人は勝手に歩いていくんじゃないですか?

沖田こういうチャンスが、勝手に歩いていくきっかけになればいいですよね。だから「ここでやってるよー!」って声かけしてあげる感じかなぁ。

橋本好きな言葉で、「何としても二階に上がりたい、どうしても二階に上がろう。この熱意がハシゴを思いつかせ、階段を作りあげる。上がっても上がらなくてもと考えている人の頭からは、決してハシゴは生まれない」というのがあって。

松下電器(パナソニック)の創業者、松下幸之助さんの言葉ですね。

橋本二階に上がりたいと本気で思っている人だけが、ハシゴを作ることができるし、好きな気持ちや、意欲が一番強い人が、道を切り拓いていくのだと思います。

私、一度「映画を撮ってみませんか?」とお声がけいただいたことがあって。それで、脚本を書いてみようと試してみたんですけど、自分の中に、映画としてつくりたいものが何もなかったんですよね。その経験を経て、逆に自分の「やりたい」という衝動に対しては素直に反応できるようになりました。

自分の中にどのくらい「つくりたい」という想いがあるのか、向き合ってみればわかると。

橋本想いがあるならやってみればいいし、そこまでの想いがないなら、別の方向に進めばいいと思います。

本谷そう思います。私も親に止められたけれど、振り切って上京して、やりたいことをやってきたので。誰かに背中を押してもらうことを考えないで、自分で自分の背中を押してくださいって、伝えたいです。「HU35」をきっかけに、「映画バカ」な人がたくさん出てくるといいなと思いますね。

先ほど、じろうさんが考え途中でしたので、もしメッセージなど言い残したことなどございましたら……。

じろう……僕の好きな言葉がありまして、「二階に上がりたいと思ったら、ホームセンターで脚立を買え」という言葉なんですけど…。

一同(笑)。

沖田修一監督、橋本愛、本谷有希子、シソンヌじろうの
「心の一本」の映画

それでは、最後に自分が表現をする、一歩を踏み出すきっかけとなったような「心の一本」の映画を教えてください。

沖田僕は高校生のときに観た『家族ゲーム』(1983)が面白すぎて、映画をつくりたいなと思うようになりました。ゲラゲラ笑った記憶がありますね。

『家族ゲーム』は、本間洋平さんの同名小説を森田芳光監督が映画化した作品です。松田優作さんが主演を務め、由紀さおりさんも出演されていますね。

沖田こういう映画をつくってもいいんだなと、これなら自分でもできそうだなと思ったんです…って、とんでもないこと言ってますよね(笑)。森田芳光監督みたいになりたかったですね。

橋本私は、表現に携わるきっかけとなった作品ではないんですけれど、自分の中に強烈な影響を残したのは『エンドレス・ポエトリー』(2016)ですね。

『ホーリー・マウンテン』(1973)などを撮った、88歳になるアレハンドロ・ホドロフスキー監督(公開時)が自伝的作品として手がけた映画です。自分の道を表現したいともがいていた主人公が、若きアーティストたちと接していく中で、解放されていく姿を描いています。

橋本2017年の東京国際映画祭で、特別招待作品として上映されたときに観ました。劇中「愛されなかったからこそ、愛を知ったんだ」というセリフがあるのですが、当時の私はその言葉に人生が丸ごと救われたように感じて。

自分の弱みだと思っていたことが、実は強みだったんだと、ものの捉え方が180度転換したように思えたんです。これは、これからの人生に応用できるなと、その後の自分を大きく変えるきっかけとなりました。

じろう僕は、そうですね…影響を受けたというか、コントの題材として使った映画があって。『ゆきゆきて、神軍』(1987)なんですけど。

橋本えー!!

原一男監督が、第二次世界大戦のニューギニア戦線で生き残り、過激な手段で戦争責任を追及し続けるアナーキスト・奥崎謙三を追ったドキュメンタリーですね。この作品を、コントにしたんですか!?

じろう奥崎さんが、コタツを囲みながら、みかんを使って殺人現場の様子を説明するシーンがあるんですけど、観たとき今までに体験したことのない面白さを感じて、笑ってしまったんですよね。

自分がコントとか脚本を書いているのもあって、映画の展開から、その先の笑いどころは大体読めてしまうんです。でも、この作品はそれが裏切られて、思いがけず笑ってしまった。そういうときは、表情だったり状況だったりを分析して、ネタに使うことがあります。そのぐらい強い印象を残す作品だったということですね。

本谷私は『タイタニック』(1997)です。高校生だった頃に、めちゃくちゃ流行ったので、これが“うける”世の中って、何なんだろうと考えました。

ジェームズ・キャメロンが監督・脚本を手がけ、レオナルド・ディカプリオやケイト・ウィンスレットが出演した『タイタニック』は、同監督の『アバター』がそれを超えるまで、全世界で史上最高の興行収入を記録した作品です。日本でも実写映画の1位として2022年時点も君臨しています。

本谷当時、映画館で観ていたんですが、客船が海に沈んでいくシーンで私、笑ったんですね。で、みんなも笑ってると思って周りを見たら、笑ってる私をみんながにらんでいて。

そのときに初めて、感じ方はひとりひとり違うんだと気づいたんです。それは、「私が周りと比べて変わっている」という意味ではなく、誰にとっても「自分と他者は感じ方が違うんだ」ということです。「こういうのがいい」と思いました。これとなるべく真逆のものを、つまり「誰も共感させない」というようなものを私はつくりたいと思った記憶がありますね。

INFORMATION
審査員長は今泉力哉監督! 「Hulu U35クリエイターズ・チャレンジ」募集中!!
◆募集期間:2022年6⽉10⽇(⾦)〜7⽉31⽇(⽇)23時59分まで

◆選考スケジュール
⼀次選考:2022年6⽉10⽇(⾦)〜7⽉31⽇(⽇)
⼆次選考:2022年8⽉10⽇(⽔)〜8⽉31⽇(⽔)
三次選考:2022年9⽉20⽇〜9⽉30⽇ うち1⽇
ファイナリストによる作品 制作準備・制作期間:2022年10⽉〜2023年4⽉
ファイナリスト作品配信:2023年4⽉中旬
最終審査会:2023年4⽉

◆主催・企画・製作/HJ ホールディングス株式会社
◆制作・運営/東京テアトル株式会社
公式HP: http://HU35.jp/
©2022 HJ Holdings, Inc.
Huluによる、新世代“映像クリエイター”発掘&育成プロジェクト「Hulu U35クリエイターズ・チャレンジ」。
参加資格は、35歳以下であること。選考を勝ち抜いたファイナリスト5名は映像制作のプロによるサポートと、1500万円の制作費⽀援のもと、⾃⾝の企画の監督・脚本を務め、映像化する機会を与えられる。ファイナリストによる5作品は、完成後、Hulu で独占配信。その中から各界の第⼀線で活躍する審査員たちにより、グランプリ作品を選出。グランプリ受賞者には賞⾦100 万円が贈られ、副賞として、Hulu 全⾯バックアップのもと、Hulu オリジナルの新作を監督・配信することができる。「誰かに作品を届けたい」と思う気持ちと、飽きさせないアイディアがあれば、誰もが夢を叶える扉を開くことができるプロジェクト。
PROFILE
映画監督
沖田修一
Shuichi Okita
1977年、埼玉県生まれ。
2001年、日本大学芸術学部映画学科卒業。数本の短編映画の自主制作を経て、2002年、短編『鍋と友達』が第7回水戸短編映像祭にてグランプリを受賞。2006年、初の長編となる『このすばらしきせかい』を発表。2009年、『南極料理人』が全国で劇場公開されヒット、国内外で高い評価を受ける。2012年公開の『キツツキと雨』が第24回東京国際映画祭にて審査員特別賞を受賞し、第8回ドバイ国際映画祭で日本映画初の3冠受賞を達成。2013年『横道世之介』で56回ブルーリボン賞最優秀作品賞などを受賞。近作の作品に映画『滝を見にいく』(14)、『モヒカン故郷に帰る』(16)、『モリのいる場所』(18)、『おらおらでひとりいぐも』(20)、『子供はわかってあげない』(21)などがある。現在『さかなのこ』(22)が公開待機中。
俳優
橋本愛
Ai Hashimoto
1996年、熊本県生まれ。
2009年『Give and Go』で映画初出演初主演。2010年映画『告白』に出演し注目を集め、その後多くの作品に出演した。
2013年映画『桐島、部活やめるってよ』(12)などで数々の映画賞を受賞。
同年NHK連続テレビ小説「あまちゃん」に出演し幅広い年代から認知された。
近年では、NHK大河ドラマ「西郷どん」(18)、「いだてん〜東京オリムピック噺〜」(19)と2年連続大河ドラマ出演を果たした。2021年度「青天を衝け」では初の大河ドラマのヒロイン役を務める。
2020年12月THE FIRST TAKEにて「木綿のハンカチーフ」を歌唱し話題になり、2021年3月発売の『筒美京平トリビュート』に参加する。
独自の感性を生かし、様々なジャンルの連載を持ち幅広く活躍中。7月からスタートのドラマ「家庭教師のトラコ」では地上波民放連続ドラマ初主演を務める。
劇作家・小説家
本谷有希子
Yukiko Motoya
1979 年7月14日生まれ。石川県出身。2000年「劇団、本谷有希子」を旗揚げし、主宰として作・演出を手掛ける。2006年上演の『遭難、』で第10回鶴屋南北戯曲賞を受賞。2008年上演の『幸せ最高ありがとうマジで!』で第53回岸田國士戯曲賞を受賞。小説家としても活動し、2011年に『ぬるい毒』(新潮社)で第33回野間文芸新人賞を受賞。2013年、『嵐のピクニック』(講談社)で第7回大江健三郎賞、2014年には『自分を好きになる方法』(講談社)にて第27回三島由紀夫賞を受賞。2016年、『異類婚姻譚』(講談社)で第154回芥川龍之介賞を受賞した。
芸人・脚本家
シソンヌ じろう
Jiro Sissonne
1978年、青森県生まれ。2006年に長谷川忍とシソンヌを結成。2014年、第7回キングオブコントで優勝。テレビでは「LIFE!~人生に捧げるコント~」への出演や、ドラマ「今日から俺は!!」(18)など役者業でも活躍。コンビでのテレビ出演、単独ライブなどを精力的に行う傍ら、執筆活動も行っており、2015年には川嶋佳子名義で小説「川嶋佳子の甘いお酒でうがい」を発表、2020年に本人が脚本を手掛け映画化された。2018年に男子たちの青春を描いた「卒業バカメンタリー」では、初のドラマ脚本を担当。以降、映画『美人が婚活してみたら』(19)、「でっけぇ風呂場で待ってます」(21)など、脚本も多数手掛ける。
毎週金曜23時より「シソンヌの“ばばあの罠”」(RKBラジオ)放送中。コント動画はYouTubeチャンネル「シソンヌライブ」をチェック。
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