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愛とはどういうものかしら? 「私だけの愛」を見つけるまで

水原希子×さとうほなみ インタビュー

愛とはどういうものかしら?
「私だけの愛」を見つけるまで

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かのスティーブ・ジョブズは偉大な仕事を成し遂げるための秘訣を、「自分がしていることを“愛する”こと」だと言ったそうです。
行き場のない女性二人の、人生を賭けた逃避行を描いたロードムービーであるNetflix映画『彼女』(Netflixにて全世界独占配信中)。今作で水原希子さんは、高校時代から思いを寄せてきた七恵を救うため彼女の夫を殺すレイを、そして、さとうほなみさんは、裕福な暮らしとの引き換えかのように、夫からのDVに苦しんでいた七恵を演じています。
ときにお腹の底から思いきり笑い、ときに悶え苦しみ叫び……。レイと七恵の、まるでジェットコースターのような感情に向き合い、身も心もさらけ出して見事に体現した水原さんとさとうさん。今作の撮影を通じて、「愛」について思いを巡らせたといいます。お二人が考えた愛とはどういうものか、伺いました。
水原希子×さとうほなみ インタビュー

「愛」のかたちは人それぞれ。
誰にも理解されなくたっていい

二人の女性の逃避行を描いたNetflix映画『彼女』。明るく爽やかなシーンもある一方で、夫からのDV、愛のための殺人、望まないセックスなどがシリアスに描かれてもいます。水原さんとさとうさんは主人公たちを、痛いほどに身も心もさらけ出し、熱演していらっしゃいました。

さとうもう戦友だよね。

水原うん、一緒に戦ったよね。特に撮影が後半に進むにつれて、(さとう)ほなみちゃんが、七恵がいないともう無理で。カメラが回っていない間の、「アクション!」って声がかかるまでも、抱きしめ合っていたりとか。

さとう私も本当にそう。そばに(水原)希子ちゃんが、レイがいないと、自分自身を保てないというか。二人でくっついたまま、気付いたらソファーで寝ていたこともあったし。ずっと一緒にいたね。

水原そうしないといられないくらい、追い詰められた精神状態だった。でもそんな自分もほなみちゃんが受け入れてくれて、一緒にいてくれたことが救いでした。劇中の二人の関係と、私たちが完全にリンクしていましたね。

さとう告白されているみたい(笑)。

水原そうだよ(笑)。改めてすごく感謝しています。

今作について以前、水原さんは「お芝居が“苦しいもの”ということがわかりましたし、こんなに苦しい思いをしたのは初めてでした」と話していらっしゃいましたよね。

水原何が苦しかったかというと、“自分との戦い”なんです。私は普段から、自分の表現に対して「よっしゃできた!」と思うより、「これでよかったのかな?」とずっと自問自答してしまう性格で。特に今回演じたレイは、人を殺すキャラクターだったから、自分がしたことのない経験を表現しなければならないという葛藤がありました。「果たしてこういう感情になるのだろうか」「どういう演じ方が正しいのだろうか」と……。

100%自信を持っての手応えが、あまり感じられなかったというか。自分に向き合うのがすごく苦しかった。

水原希子×さとうほなみ インタビュー

さとうそうだよね。私は、撮影中はずっと「七恵として生きる」ことを目指していましたが、 その“自分VS芝居”の葛藤において、苦しさや悔しさもいっぱい味わいました。

水原ここまで感情をさらけ出すのは初めてだったので、カットがかかった後で不安な気持ちになったりもして。

一方、さとうさんは「ずっと辛かったですけど、こういうどん底な役の作り方も嫌いじゃないかな」と話していらっしゃいました。

さとうやっぱり、芝居を好きだからこそ、挑ませていただいているので。辛いことも多かったけど、後から必ず自分の実になりますし、大きく見れば楽しめていた気がします。廣木(隆一)監督はすごく役者ファーストな方で、七恵の気持ちを考える時間を与えてくださって。

たとえば、あるシーンで七恵は何を思うのか。笑うのか、泣くのか。そういうことを現場にいる間にも一つひとつ考えながら演じられたのは、今思えば貴重な経験です。

水原希子×さとうほなみ インタビュー

水原廣木監督はいつも「大丈夫だよ。ちゃんと伝わってるよ」っていう感じで、現場にいてくださるんです。だから監督の顔を見るたびにホッとして、浮き足立っていた状態から、地に足をつけることができました。あとは本当にほなみちゃんに支えられて、なんとか。

さとう後から残っている感情をかき集めてみたときに、一番感じたのは「この作品に参加してよかったな」ということでした。まぁ、後日談ですけどね(笑)。

今作を観ていて特に印象に残ったのは、水原さんが演じた、レイというキャラクターの言動です。レイは思いを寄せる七恵に頼まれたら迷わず、七恵をDVで苦しめている夫を殺す。また「あたしの人生なんか、あんたがニコッとしただけでボロボロになるんだよ」と、ストレートに七恵への気持ちを口にする。レイは心を閉ざした七恵に、愛のシャワーを注ぎ続けます。

水原希子×さとうほなみ インタビュー

さとう「愛のシャワー」っていいフレーズですね!

水原ね、これから使おう(笑)。

ありがとうございます(笑)。レイは一直線に愛を表現できる人でした。水原さんはそんなレイを演じて、またさとうさんはその芝居を七恵として受けて、いかがでしたか?

水原きっとレイは知らないうちに、家族や恋人の美夏(真木よう子)など、周りの人から大事にされ、愛をたくさんもらいながら育ってきた。でももしかしたら、愛を自分から発することはほとんどできていなかったんじゃないかと思うんです。

それが、七恵から助けを求められたことで、周りから受けてきた分の愛を七恵に注ぐと決めた。今まで自分を守ってきてくれた人たちをすべて捨ててでも、いや捨ててこそ、七恵への思いを証明し、高校時代から抱えていた苦しみからも解放されるというか。

さとう 逆に七恵は両親に愛されてこなかったし、夫からは暴力を振るわれています。友だちにも格好悪い面を見せたくなくて、建前で話して本音は言わない。そんな、信頼できる相手が誰一人いない状況で、心底「限界だ」と思ったときに、パッと思い浮かんだのがレイで。

でも七恵は、レイが夫を殺してくれた後も不信感が拭えず、ずっと突き放したり試したりする。それは多分、愛されることを知らないからなんです。

なるほど。別にレイは愛について、最初から特別な才能を持っていたわけではない。元々愛することが不得意だったレイと、愛された経験がない七恵が再会したことで、お互いに変わっていったんですね。

水原 レイは裕福なお嬢さまで、高校時代、貧しい家庭で育った七恵に多額のお金を貸します。そうして支配するかたちでしか、七恵を繋ぎ止める方法がわからなかったから。つまり当時のレイは、自分のことしか考えられていなかったんですよね。でも大人になって七恵の夫を殺し、二人で警察から逃げ続ける中で、ぶつかり合いながらお互いを知っていく。

レイは最後、七恵を所有するのではなく、大きな愛をもって手放すというか、そういう本質的な、母性のような愛に行き着いたと思います。

さとう七恵はレイと一緒に過ごす中で、「一緒にいると幸せだな」という気持ちが自然と芽生えてきた。その時点でレイの気持ちを試すとかは、どうでもよくなっていって。

水原この作品が問うのは、「愛とはどういうものか」ということ。レイと七恵は二人だけの愛のかたちを見つけることができたんですよね。誰にも理解されないかもしれないけど、理解されなくていい。もうひたすらに、愛の話ですよね。

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今の感覚としては、やりきったという感じでしょうか?

水原 私はそうですね。うん、やりきった。

さとう私は今もまだ少し、ラストシーンの余韻が抜けなくて……。寂しいです。だからクランクアップの挨拶で、「『彼女』をずっとやっていたいです」とか言っちゃって(笑)。

水原言ってたね! 「嘘でしょ?」って思ったよ。「これ以上の逃避行はもう無理かな〜……」って(笑)。

さとう思ったかぁ、ごめんね(笑)。居合わせたスタッフさんも、みんな「え!」って言ってたよね。

水原うん、みんな「え!」だったよ(笑)。

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水原希子とさとうほなみの
「心の一本」の映画

では最後に、ご自身に影響を与えた「心に残る一本の映画」を教えてください。

水原(考えながら)一本を選ぶの、めっちゃむずかしいですー……。

さとうじゃあ先に言うね? 何回も観ても面白いし、「落ち着くなぁ」と思うのは『パターソン』(2016)です。

アダム・ドライバー主演による、ジム・ジャームッシュ監督の作品ですね。ニュージャージー州パターソン市で暮らす、詩が趣味のバス運転手・パターソンの7日間を描いた人間ドラマ。日本からは永瀬正敏さんも出演されています。

さとう描かれているのは、毎日決まったルーティンで暮らしている、パターソンの日常生活です。でもその中で非日常的なことがしれっと起きる、不思議な映画で。妻・ローラが趣味で売ったカップケーキが大ヒットしたり、行きつけのバーではある客がおもちゃの銃で、人騒がせな狂言自殺を起こしたり。現実でありながら、どこか異世界にいるみたいな雰囲気も味わえるのが面白いんです。

水原希子×さとうほなみ インタビュー

普段からそういう、穏やかな面白みのある作品がお好きなんですか?

さとう元々は結構、派手な展開がドッカンドッカンある映画も好きだったんですけど。なんですかね、ちょっと大人になったのかな(笑)。最近は、心に滲み入るような作品が好きになってきています。

『パターソン』もそのうちの一本ということですね。では水原さん、いかがでしょう。

水原いっぱいあるんですけど……。伊丹十三さんの『タンポポ』(1985)が好きで。

伊丹十三監督の第2作にして、異色作ですね。タンクローリーの運転手(山崎努)が、さびれたラーメン屋の美しい未亡人(宮本信子)に惹かれて一肌脱ぎ、その店の味を町一番にするまでが、食べもの関連のエピソードを混じえて描かれます。

水原「なんであんな映画が撮れるんだろう」と思ってしまいます。映像的に美しく、色彩が印象的で、とにかくアーティスティック。なのにストーリー展開も面白くて、笑えるし泣ける。演出に洒落が効いていてイケてますよね。

水原あとはなんだろう……。あ、『ゴッドファーザー』(1972)!

アメリカのイタリア系移民が形成する、巨大なマフィアの内情を描いた壮大な叙事詩シリーズの第1作。巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督による、世界的ヒットを記録した不朽の名作ですね。

水原やっぱり定期的に観たくなるんですよね。観ると「クゥ〜!」ってなるよね?

さとうなるねぇ。

水原「運命って……!」みたいな。

さとうそれ、すごいわかる(笑)。「運命には抗えないのね……!」っていう。

水原ギャング映画は結構好きです。韓国映画だと、イ・ビョンホンが出ている『甘い人生』(2004)とか。

イ・ビョンホンが演じるのは、高級ホテルの総マネージャーを任されるほど頭の切れる、裏社会でも名が通った冷徹な男。息を呑むアクションも見応えある、サスペンス・ラブストーリーですね。

水原一匹狼の男が、恋に落ちたことによってどんどん孤独になって、裏切られてハメられて。でも捨て身だからすごく強いんです。

さとうへぇ〜。

水原ラストシーンがまた素晴らしくて。ガラス窓に映る自分の姿を見ながら、シャドウボクシングするんだけど、その姿がもう、少年みたいなの。ずっと一匹狼としてタフに生きてきたはずなのに、「彼の中に、少年がいるんだ」って思ったら、もう超泣けるわけ。

さとう観たくなってきた!

水原あと、ホウ・シャオシェン監督の『ミレニアム・マンボ』(2001)。

21世紀を迎えた台北で、刹那的に生きる若者たちの姿を描いた青春映画ですね。

水原主演のスー・チーが大好きで。青春映画としてある意味生々しい、リアルな感じもいいんですよね。結局全然、一本に絞れなくてすみません。話したい映画がありすぎて……。

さとうわかる、そうだよね。

水原希子×さとうほなみ インタビュー
INFORMATION
Netflix映画『彼女』
原作:中村珍『羣青』(小学館IKKIコミックス)
監督:廣木隆一
出演:水原希子、さとうほなみ、真木よう子、鈴木 杏、田中哲司、南 沙良、植村友結、新納慎也、田中俊介、烏丸せつこ
脚本:吉川菜美
テーマ曲:細野晴臣
エグゼクティブ・プロデューサー:坂本和隆(Netflix コンテンツ・アクイジション部門ディレクター)
プロデューサー:梅川治男
企画・制作プロダクション:ステューディオスリー
配信日:Netflixにて全世界独占配信中
高校時代から片思いをしていた七恵が、夫から壮絶なDVを受けていることを知り、その夫を殺害したレイ。罪から逃げる2人は、極限の愛と憎しみの間で揺れ動く。
PROFILE
俳優・モデル
水原希子
Kiko Mizuhara
1990年生まれ。2003年、雑誌『Seventeen』専属モデルとしてデビュー。その後、モデルとして数々のファッション誌で活躍。2010年『ノルウェイの森』で女優デビュー。主な出演作品はドラマ『失恋ショコラティエ』(CX/14)、『心がポキッとね』(CX/15)、『グッドワイフ』(TBS/19)、映画『ヘルタースケルター』(12)、『進撃の巨人』(15)、『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(17)、『あのこは貴族』(21)など。Netflix作品では『クィア・アイ in Japan!』にもガイド役で出演。
俳優
さとうほなみ
Honami Sato
1989年生まれ。ほな・いこか」名義で2012年に結成されたバンド「ゲスの極み乙女。」のドラマーを務める。2017年から「さとうほなみ」として俳優活動を始め、ドラマ『黒革の手帖』(EX/17)、『まんぷく』(NHK/19)、『ルパンの娘』(CX/19)、『誰かが、見ている』(amazonプライム・ビデオ/20)、映画『窮鼠はチーズの夢を見る』(20)などに出演。ドラマ、映画、舞台など活躍の場を広げている。
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