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汚いものこそ美しい。 成海璃子の「美しいとおもうこと」

成海璃子 インタビュー

汚いものこそ美しい。
成海璃子の「美しいとおもうこと」

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白いユリの花を美しいと思う人もいれば、真っ赤なラフレシアに美しさを感じる人もいる。美しさの基準は、人それぞれです。

成海璃子さんは、ホラー映画の『悪魔のいけにえ』を観て“美しい”と感じると言います。そんな成海さんが三浦貴大さんとW主演を務める映画『ゴーストマスター』(2019年12月6日公開)は、ホラーやスプラッターなどといったジャンル映画への愛と尊敬が込められた熱血ホラーコメディ映画です。出演者たちのほとんどが、特殊メイクで異形の姿に変貌していきます。もちろん、成海さん演じる真菜もその一人。特殊メイクを作り上げる上で、「可愛さ」を意識した結果の姿だそうです。

「どんな美しさに、私は惹かれているんだろう?」
成海さんと一緒に「美しいとおもうこと」について考えてみました。

成海璃子インタビュー。汚いものこそ美しい。成海璃子の「美しいとおもうこと」

『ジョーカー』も『悪魔のいけにえ』も、美しい

成海さんは子役時代から活躍され、当時から多くの映画ドラマなどに出演されていますが、ホラー作品の『まだらの少女』(2005年)にも出演されていますね。成海さんはヘビ女化する少女の役で、今作と同じく特殊メイクにも挑戦されています。

成海懐かしいですね! 観ました? …観てくださったんですか!? 私演じる京子が、ヘビ女に変わっていくシーン、(ジェスチャーを交えて)こうやって壁に顔を引っ込めるんですが、その度にどんどん変貌していく様が面白いですよね。演じていた当時は小学生だったので、とにかく必死で演じていたのですが、今観直したらこういう作品だったのかと気づくことがあります。特に、あのシーンが一番印象的で(笑)。

成海さんは普段からホラー映画をご覧になりますか?

成海疲れて家に帰ってきた夜に観たくなるのが『悪魔のいけにえ』(1974年)なんです。もう何度も繰り返し観ている作品ですね。

成海璃子インタビュー。汚いものこそ美しい。成海璃子の「美しいとおもうこと」

ええ! 疲れた時に、ホラー映画の金字塔『悪魔のいけにえ』を観たくなるんですか(笑)!? 旅行中の若者たちが立ち寄った一軒家に、実は殺人一家が住んでいて、次々に殺されていくという『悪魔のいけにえ』ですよね?

成海そうです(笑)。『悪魔のいけにえ』はホラー映画ですが、怖いというか……めちゃくちゃな面白さがあるなと。レザーフェイス(人の顔の皮を剥いでつくった仮面をかぶっている人物)を含めた一家が若者たちを殺していくわけですが、彼らは何ひとつ悪いことしてないですからね…ただ家を訪ねただけなのに…。

確かに、若者たちは帰郷のためテキサスへ向かう道中、ヒッチハイカーを車に乗せてあげただけなのに…。その人が、実は殺人一家の一人で…(泣)。

成海その一人が車に乗ってきたシーンから、「なんだこれは……」という狂った空気が感じられて好きです。あと、末っ子のレザーフェイスがちょっとドジっ子なところもたまらなくて。でも、私は一生テキサスには行きたくないですね(笑) 。

レザーフェイスは、大男で圧倒的に強いのに、武器のチェーンソーでうっかり自分の足を切っちゃったりもします(笑)。

成海そうですそうです。いつも観てる時に「なにヘマしてんだよ!」って思っちゃいます(笑)。観るたびに印象が変わる作品ですね。

今回出演された『ゴーストマスター』は、作品のテーマとして『スペースバンパイア』(1985年)を象徴する映画としてあげていますが、『悪魔のいけにえ』と同じトビー・フーパ―監督の作品です。今作の舞台は、キラキラ映画を撮る予定が、血みどろのホラー映画を撮ることになってしまう撮影現場ですが(笑)、脚本を最初に読んだ時の感想はいかがでしたか?

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成海「なんだかよくわかんないけど面白いな」と思いました(笑)。 脚本の中に、ジャンル映画への愛と尊敬が詰められたネタがたくさんあるので、初見で笑いながら読んでいましたね。どんな映像になるのかはまったくイメージできなかったんですけど(笑)、やってみようという気にはすぐになりました。

製作陣が今作をキャスティングするにあたり、まず考えたのは「この企画を面白がってくれそうな方にお願いしよう」ということだったそうです。成海さんはまさに理想通りだったわけですね。

成海初めて今作のヤング ポール監督とお会いして、お話しした時に映画の話もしました。「B級作品で好きなものはありますか?」と聞かれたので、『バスケット・ケース』(1982年)が大好きだと答えました。

『バスケット・ケース』ですか!? 子どもの頃に無理やり切り離された結合双生児の弟が、兄をバスケット・ケースに入れて旅をしながら復讐をしていくというカルト・ホラー作品ですよね? お好きなんですか?

成海大好きなんですよ(笑) 。

成海さんは、他にどんな映画が好きなのか気になります(笑)。

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成海最近だと、昨日『ジョーカー』(2019年)を観に行きました。すごく良くて、色々なことを思いましたね。

ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得し、世界的現象となっている作品です。

成海俳優として、主演のホアキン・フェニックスの演技に「彼みたいな役者は他にいないよなあ」と感じる部分もあったし、「アメリカってすごい!」とこんな作品が生み出されたことへ純粋に驚いた部分もありました。私は落ち込んだときはとことん落ち込み、敢えてくよくよすることを選択するタイプではあるんですが、『ジョーカー』のような作品を観ると、シンプルに「がんばろう」と思えます。

一番印象に残ったシーンをあげるなら?

成海ホアキン・フェニックス演じるアーサーが、初めて人を殺すところです。…でもあのシーンも良かった、アーサーがジョーカーとして覚醒するところ。あそこは、もう…(拍手をしながら)パチパチパチという感じで。あと、ラストで街が燃えているシーンは、彼の笑顔も含めてすごく美しかったです。

「モンスターをただのモンスターとして扱うんじゃなくて、モンスターなりの理由というか、そうなってしまった哀しさみたいなことも描かれるべき」とヤング・ポール監督も語っていますが、『ジョーカー』にも通じる部分がある気がします。

成海そうですね。先ほどお話ししたレザーフェイスもそうですが、モンスターの悲哀というか、モンスターに共感してしまう感覚はありますよね。そういえば、『ジョーカー』で美しいと感じたように、『悪魔のいけにえ』も美しい映画だなあと思います。

成海璃子インタビュー。汚いものこそ美しい。成海璃子の「美しいとおもうこと」

「普通」から逸脱した中にある美しさ

先ほど『悪魔のいけにえ』は何度も観るとおっしゃっていましたが、他にも繰り返し観る作品はありますか?

成海『アイズ・ワイド・シャット』(1999年)や『ファイト・クラブ』(1999年)は繰り返し観ていますね。特に、『ファイト・クラブ』はラストのビルが崩れるシーンが圧巻で! そのシーンを観ると、毎回「美しい……」と惚れ惚れしてしまいます。

今なお高い人気を誇る名作の2作ですね。『アイズ・ワイド・シャット』は、激しい性描写が話題となったスタンリー・キューブリック監督の遺作で、『ファイト・クラブ』はデヴィッド・フィンチャー監督による衝撃作です。やはり「美しい…」と成海さんの心を揺さぶる作品がお好きなんですかね?

成海両作ともなんだか妙に惹かれる作品なんですよね…。ラース・フォン・トリアー監督もウェス・アンダーソン監督も好きなんですけど…なんですかね? 私の中の何かが盛り上がるというか。

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ラース・フォン・トリアー監督は、加藤諒さんも「心がえぐられる大好きな映画」として『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000年)をあげられていました。ウェス・アンダーソン監督は『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014年)に見られるような、独自の美術演出や色彩感覚などが特徴的ですね。

成海確かにウェス・アンダーソン監督の作品はそういった特徴がありますが、私は作品が持つ完璧さを美しいと感じて惹かれるわけではないんです。なんだろう……何に私は惹かれているんですかね?

「美しい」という感覚について、「AがBに思い切りジャンプする瞬間が美しい」「バラバラだったいろんな要素がひとつにガット結びつく瞬間が美しい気がした」とヤング・ポール監督は語っていました。

成海私は、どうなんだろう…汚いものこそ美しいといいますか…。

成海璃子インタビュー。汚いものこそ美しい。成海璃子の「美しいとおもうこと」

成海そういえば、今回特殊メイクを手がけてくださった百武朋さんが、私の特殊メイクも「ビューティーにしちゃお! パール入れちゃお!」と可愛く仕上げてくださったんです。あれで? と思われるかもしれないんですけど(笑)。

確かに、皆さん異形の姿に変化して行きますが、ラストシーンではそういう姿も含めて神々しい美しさがありました。

成海あのラストシーンは、演じている私と三浦貴大さんのふたりで口に電球を咥えて向かい合っていたんです。だから、演じている方は「私たちは何をやっているんだ?」という感じでした(笑)。でも、クレイジーな現場でしたが、それが楽しかったです。

成海さんは、非現実的というか、特徴的というか、普通から逸脱したところに惹かれるのかもしれないですね。

成海そうかもしれない。私は、この役者という仕事が大好きなんですが、それはそこに繋がるのかもしれませんね。

成海璃子インタビュー。汚いものこそ美しい。成海璃子の「美しいとおもうこと」
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PROFILE
俳優
成海璃子
Riko Narumi
1992年8月18日生まれ、神奈川県出身。2000年、「TRICK」(NTV)でドラマデビュー。映画初主演作品『神童』(07/萩生田宏治監督)で第62回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞を受賞。以降、『あしたの私のつくり方』(07/市川準監)、武士道シックスティーン』(10/古厩智之監督)、『少女たちの羅針盤』(11/長崎俊一監督)など次々と名匠たちの映画で主演を飾る。主な映画出演作に『罪とか罰とか』(09/ケラリーノ・サンドロヴィッチ監督)、『山形スクリーム』(09/竹中直人監督)、『地獄でなぜ悪い』(13/園子温監督)、『ニシノユキヒコの恋と冒険』(14/井口奈己監督)、『極道大戦争』(15/三池崇史監督)、『ストレイヤーズ・クロニクル』(15/瀬々敬久監督)、『無伴奏』(16/矢崎仁司監督)、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(17/廣木隆一監督)、『家族のはなし』(18/山本剛義監督)、『愛唄約束のナクヒト』(19/川村泰祐監督)などがある。
INFORMATION
『ゴーストマスター』
出演:三浦貴大 成海璃子
板垣瑞生  永尾まりや  原嶋元久  寺中寿之  篠原信一 
川瀬陽太  柴本幸  森下能幸  手塚とおる  麿赤兒
監督:ヤング ポール
脚本:楠野一郎 ヤング ポール
主題歌:マテリアルクラブ「Fear」
配給:S・D・P
製作:カルチュア・エンタテインメント TSUTAYA Digital Entertainment
公式HP: ghostmaster.jp
公式twitter : @ghostmaster1206
©2019「ゴーストマスター」製作委員会
とある廃校では、人気コミックの映画化の撮影が佳境を迎えていた。主演は大量生産される“壁ドンキラキラ映画”に引っ張りだこの桜庭勇也(板垣瑞生)と牧村百瀬(永尾まりや)。いよいよクライマックスの壁ドンシーンだが、勇也のせいで、撮影がストップしてしまう。
激高した監督の土田(川瀬陽太)が現場を放り出し、次々とスタッフがやめていく中、事態の収拾に駆けずり回るのは助監督の黒沢(三浦貴大)。黒沢の心の支えは、自ら執筆したホラー映画の脚本『ゴーストマスター』で監督デビューさせてくれるという柴田プロデューサー(手塚とおる)との約束。ところが「ボクキョー」に出演している憧れの女優・渡良瀬真菜から「こんなところにいる時点で才能はないですよ」と言い放たれ、さらに柴田も『ゴーストマスター』を本気で映画化する気などないと知ってしまう。黒沢は、絶望と悔しさで泣きながら走り出して転倒。鼻血のしずくが『ゴーストマスター』の脚本に垂れると、架空の存在だった怨霊“ゴーストマスター”に生命が宿ってしまう…。
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