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完ぺきな“中村アン”じゃなくていい。もがき挑戦した先にあった転機

中村アン インタビュー

完ぺきな“中村アン”じゃなくていい。もがき挑戦した先にあった転機

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「一日あれば世界は変わるんだよ」
世界中の人々が未曾有の事態に襲われ、見えないウイルスによって翻弄された2020年。きっと多くの人がこの言葉を痛感する場面が多かったのではないでしょうか。
「一日あれば世界は変わる」ことを、改めて実感させられる映画『名も無き世界のエンドロール』(2021年1月29日公開)では、強い絆で結ばれた幼馴染のキダ(岩田剛典)とマコト(新田真剣佑)が、10年の歳月をかけて仕掛けた“ある壮大な計画”をスリリングに映し出します。
ある日、突然キダとマコトの目の前に現れ、鮮烈な印象を残して去っていく政治家令嬢でトップモデルのリサを、これまでのイメージを刷新する迫力で中村アンさんが演じます。「『この壁が乗り越えられたら、今とはまた違う景色が見られるかもしれない』って思いながら自分なりに戦っていました」と語る中村さん。誰もが思う“中村アン”像から抜け出したくて、人知れずもがいていたという胸の内、そして不安を抱えながらも進むことができたその訳を伺いました。
中村アン インタビュー

自分にとっての“不安”は
“チャンス”でもある

今作で中村アンさんが演じたリサは、裕福な家庭で育ち、欲しいものはすべて手にいれてきた令嬢という役どころでした。そのため、自身の喜怒哀楽の感情をそのまま相手にぶつけることへ躊躇がありません。その点では、これまで映画やドラマなどにおいて演じられてきた役の中でも、特異だったのではないでしょうか?

中村「感情を相手にぶつける」という意味で、私にとってすごくチャレンジングな役どころでした。私は、日常生活においても喜怒哀楽の“怒”をこんなに出すことはないので、それを表現できるのかすごく不安だったんです。でも、だからこそ、これをチャンスに変えたいなぁとも思っていて。

不安だからこそ、それは自分にとってチャンスにもなると。どのように、不安をチャンスへ変えていったのですか?

©行成薫/集英社 ©映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会

中村今回、まずはリサという役柄の性格や特徴を、セリフや身にまとうものなどから、深く理解することを心がけました。高飛車で自己中心的なところや、感情の起伏が激しいところ、そしてすごくお金持ちである、といったところを軸にしながら役を組み立てていった感じですね。

あと、真っ赤な車に乗ってこんな洋服を着ているということは、「すごく自分に自信がある人なんだろうなぁ」とか考えながら喋り方でも勝気さを出してみたり。私は割とメイクや衣裳を身に着けたときにスイッチが入るので。

外から内へと人物をつくりあげていったんですね。

中村でも、撮影現場では(今作の)佐藤祐市監督から「真剣佑の目ヂカラに負けないで!」って叱咤激励されることもあって。それは、私が撮影に入る前に、監督へ「不安です」とお話ししたことがあったので、私の思いを汲み取って背中を押してくださったんだと思います。

©行成薫/集英社 ©映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会

中村確かに、新田さんと対峙したとき、素の自分だとあの目力に「負けてしまう」と感じました。でも、相手がいるからこそ「負けたくない」と、そのパワーをもらって自分も力を出せる。マコトをしっかり受けてお芝居をすることが大切だと、改めて感じました。

一人ではないからこそ、乗り越えられたと。

中村それこそ女優のお仕事を始めたばかりの頃は、相手のお芝居を受けることができなくて、すぐ「次のセリフはこうだから、こう言わなきゃ」って考えてばかりいたんですけど、あの力強い新田さんの目で見られた瞬間に私もスイッチが入ったというか。やっぱり、自分だけだとできないことですよね。

自身でも、自分の変化を感じていたんですね。

中村はい。感情を出す表現に手ごたえがあったと思います。よく俳優の方が「役が自分と同化する感覚がある」と言われるじゃないですか。ゾーンに入るというか。それが「わかる!」とまではいかないかもしれませんが、すごく近い感覚がありました。

中村アン インタビュー

自分のイメージを
自ら塗り替える難しさ

普段、あまり喜怒哀楽の“怒”を表現しない中村さんにとって、今作のリサはチャレンジングな役ということでしたが、何もかも兼ね備えたように見える「完璧な」役という面では、これまでも求められてきた役柄だったのではないでしょうか。中村さんのスタイルブック『ANNE BALANCE』には「完璧じゃない、これが普段の私」という言葉が綴られていますね。「完璧」なイメージと自分の間に距離があると感じていたと。

中村有難いことに「どんなときも先が読めて、完璧な人」というイメージの役柄をいただくことが多いんですが、本当の私は全然違うんです。『グランメゾン東京』の撮影の際も、ミッチー(及川光博)さんに「全然役と違うじゃん!」みたいに言われたことがあって(笑)。

私は洋服も髪型もフル装備で鎧を着ければ、結構バーンといけてしまうというか……。でも素の自分は適当なので、「できる女」のイメージを持っていただけるのは不思議です(笑)。チアリーディングのキャプテンをしていたから、割と引っ張っていくタイプではあるんですけど。

中村アン インタビュー

今作のリサも「完璧を父親に求められる」役柄でした。中村さんも一度、就職活動をされたそうで、敷かれたレールの上を進むべきか、芸能のお仕事をしたいというご自身の気持ちに従うべきか、その間で揺らぐこともあったそうですね。

中村そうですね。昔の私は「やるからにはちゃんとやりたい!」とか「完璧に見せなきゃダメなんじゃないか」って、頑なになっていた部分がありました。芸能界には本当に個性の塊みたいな方がたくさんいらっしゃるので、「私も唯一無二の存在になりたい」ってもがいていたんです。

でも意外と完璧にできなかったときほど「こっちの方がいいじゃん!」とか「こっちの方が似合ってるよ!」って言っていただいて、「あ、別に完璧じゃなくてもいいんだ!」って自分らしさを少しずつ出せるようになっていったような記憶があります。

では、トレードマークの「髪をかき上げる仕草」は、自分を探ってきたときに出てきたものということでしょうか。

中村小さい頃、お母さんがすぐに私の髪を短くしちゃうので、自分の意志で髪型が選べるようになったら伸ばしたいなってずっと思っていて。あと、実際の私は色っぽいイメージがないので、髪をかき上げたらちょっとはそういう感じに映るのかなぁって(笑)。それから、こんなふうに(と実演しながら)髪をかき上げるのがクセになってました。

中村アン インタビュー

まさかその仕草がここまで自分のイメージをつくり上げるとは思っていなかったんですね。

中村そのお陰でお仕事をいただけるようにはなったんですけど、女優業を始めるようになって5年くらい経っても、どうしてもそのイメージを新しくできない自分がいて。「じゃあここで髪をかき上げて!」みたいに言われると、嬉しい反面、悔しくもあって。どこか“中村アン”を演じているような感覚だったんです。

でも、今回リサ役に挑戦したことで、その呪縛からようやく抜け出せたような気がして。「これが私の転機になればいいなぁ」と思っています。

自分のイメージを変えたいと思っていたんですか?

中村「どうにか“中村アン”像を変えたい!」って、この数年もがいていました。もし髪の毛をバッサリ切れたりしたら、イメージもガラッと変えられるかもしれないんですが、なかなかそうもいかないので。でも、リサという役柄に出会えて、不安も大きかったですけど、「この壁が乗り越えられたら今とはまた違う景色が見られるかもしれない」って思いながら自分なりに戦うことができました。

その結果、違う景色が見えたということですね。

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中村少しですが、乗り越えられた気がしています。今後は時代劇や“あえてメイクをしない役柄”にも挑戦してみたいんです。「こういうイメージなかったなぁ」って周りを驚かせたくて。私自身、作品ごとに知らなかった自分と出会えるのが今すごく楽しいです。

本作には「一日あれば世界なんて変わるんだよ」という印象的なセリフが登場しますが、コロナ禍にある世界で、よりそのことを皆が実感していると思います。変化の激しい世界に身を置き仕事をされる上で、中村さんが心がけていることはありますか?

中村私は割と流れに身を委ねるタイプだと思います。でも、前のめりな訳ではないんだけど、いざチャンスが回って来たときにしっかり掴み取るために心がけていることがあります。日ごろから泣いたり笑ったり怒ったりしたときの自分の感情を見逃さない。そして必要なときにいつでもその感情を引き出せるように、自分自身をより理解するよう意識するようになりました。

あとは、電車やバスにも乗るなど「普通に生活する」ことが私にとって一番大事なので、このお仕事を始める前の感覚を忘れずに過ごすことを心がけています。あとは自分が居心地良く集中できるような空間づくりや、香りなんかも大切にしてますね。

どんな香りでリセットしているんですか?

中村私、食べちゃうと集中できないんですけど、空腹の状態だと結構戦えるので、ミント系のハーブとかスッキリするタイプの香りで“一回無”にして、疲れてきたら塩を舐めるようにしています(笑)。嘘みたいに効くんですよ! 

お塩ですか!

中村サラサラした塩じゃなくて、結晶型のちょっといいお塩を小分けにして持ち歩いているんです。この前も『危険なビーナス』の撮影現場で、妻夫木聡さんに「今なんか舐めたよね?」って訊かれて「私、最近塩舐めてて。めっちゃいいですよ!」ってオススメしたら「えー⁉」って驚かれてしまって(笑)。あとは梅干しの研究も結構しています。梅と塩があれば何とか一日過ごせるんで、塩と梅干が私のリセット法ですね(笑)。

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中村アンの「心の一本」の映画

では最後に、中村アンさんにとっての「心の一本」の映画を教えてください。

中村そうですね。今年(取材時:2020年)観た中では『パラサイト 半地下の家族』(2019)が、すごく面白かった!

第72回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝き、第92回アカデミー賞でも外国語映画として史上初となる作品賞を受賞したほか、監督賞、脚本、国際長編映画賞の4部門を制覇して世界的に注目を集めた、ポン・ジュノ監督のブラックコメディですね。

中村私にはちょっとあまのじゃくなところがあって、普段みんなが“いい”って言ってる映画や賞を獲ったりした映画はあまり観なかったりするんですけど、ちょうどステイホーム期間だったこともあって、動画配信で観てみたんです。そうしたら映像もすごく素敵だし、結末も「半地下ってこういうことだったの!?」みたいな感じで、かなり私の好みでしたね。友だちにも「絶対観た方がいいよ!」ってオススメしてます。

あとは、ボストンマラソンの爆弾テロを描いた『パトリオット・デイ』(2016)。

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ピーター・バーグ監督が、2013年に起きたボストンマラソンの爆弾テロ事件の裏側に迫ったサスペンス映画ですね。犯人逮捕に至るまでの102時間を、さまざまな人物の視点から描いています。

中村ちょっと『ラブ・アクチュアリー』(2003)みたいな感じで、いろんな人たちの数日間が描かれていて、ドキドキハラハラが止まらなかった。マーク・ウォールバーグが『テッド』(2012)のときとは全然違うイメージの地元警察官の役柄で出ていて、「すごいなぁ」と思いましたね。エンドロールにモデルになったご本人の写真なども出てきて、「忠実に再現されていたんだなぁ」って。実話ですし、警察官の方々の勇気と正義感に感動しました。ラブストーリーだと、 列車の中で出会った男女が恋に落ちて再会する“ビフォア三部作”も好きですね。

リチャード・リンクレイター監督がイーサン・ホークとジュリー・デルピーを主演に撮り続けている、恋愛映画の金字塔とも呼ばれる『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』(1995)『ビフォア・サンセット』(2004)『ビフォア・ミッドナイト』(2013)から成る三部作です。
中村さんは、幅広く映画をご覧になっているんですね! ちなみに今作で、20世紀の映画界を築いた一人であるチャップリンの「人生に必要なものは、勇気と、想像力と、少しの金だ」という名言が出てきますが、中村アンさんの人生に必要なものは、勇気と、想像力と、あと一つ挙げるとしたら…?

中村う~ん……やっぱり愛じゃないですか? この映画でも友情や愛が描かれてますけど、勇気と想像力と、あと何が自分の人生を助けてくれるかっていうと、やっぱり愛情がすごく重要だと感じています。

今作では、劇中、ある人物が「折り畳まれた写真」を見返して力をもらうシーンがありますが、中村さんにもそういう「力をもらえる」ものはありますか?

中村昔両親がつくってくれてた小さい頃のアルバムとか「家族写真」はたまに見返して力をもらってますね。それと、ドラマの撮影が終わるとスタッフさんとキャストみんなで集合写真を撮る慣習があるんですけど、私はその集合写真を大事に取ってあるんです。そこに写っている自分の表情を見ると撮影中のいろんなことが一気に思い出せるんですよね。「あぁ、このときの私、かなり頑張ってたんだなぁ……」って(笑)。

くじけそうになったときでも家族や恋人や大事な人の顔を思い浮かべたら、もう一歩先まで頑張れるかも。いつか私にも子どもができたりしたら「お母さんが頑張っている姿を子どもに見せたい!」って思うのかもしれないですね。

中村アン インタビュー
INFORMATION
『名もなき世界のエンドロール』
出演:
岩田剛典 新田真剣佑 山田杏奈 中村アン
石丸謙二郎 大友康平 柄本明

監督:佐藤祐市 
脚本:西条みつとし
主題歌:須田景凪「ゆるる」(WARNER MUSIC JAPAN / unBORDE)
原作:行成薫「名も無き世界のエンドロール」(集英社文庫) 
配給:エイベックス・ピクチャーズ

2021年1月29日(金)全国ロードショー、「Re:名も無き世界のエンドロール~Half a year later~」は映像配信サービス・dTVで1月29日より【全3話】独占配信
公式サイト: namonaki.jp
©行成薫/集英社 ©映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会
クリスマス・イブの夜。日本中を巻き込んだ、ある壮大な計画が実行されようとしていた―。
複雑な家庭環境で育ち、さみしさを抱えて生きてきたキダとマコトは幼なじみ。そこに同じ境遇の転校生・ヨッチも加わり、3人は支え合いながら家族よりも大切な仲間となった。しかし20歳のときに、訳あってヨッチは2人の元から突然いなくなってしまう。そんな彼らの元に、政治家令嬢で、芸能界で活躍するトップモデルのリサが現れる。リサに異常な興味を持ったマコトは、食事に誘うが、全く相手にされない。キダは「住む世界が違うから諦めろ」と忠告するが、マコトは仕事を辞めて忽然と姿を消してしまう。2年後。マコトを捜すために裏社会にまで潜り込んだキダは、ようやく再会を果たす。マコトは、リサにふさわしい男になるために、死に物狂いで金を稼いでいた。マコトの執念とその理由を知ったキダは、親友のため命をかけて協力することを誓う。以来、キダは〈交渉屋〉として、マコトは〈会社経営者〉として、裏と表の社会でのし上がっていく。そして、迎えたクリスマス・イブの夜。マコトはキダの力を借りてプロポーズを決行しようとする。しかし実はそれは、10年もの歳月を費やして2人が企てた、日本中を巻き込む“ある壮大な計画”だった─。
PROFILE
俳優
中村アン
Anne Nakamura
1987年9月17日生まれ、東京都出身。高校、大学とチアリーディング部に所属し全国大会にも出場。健康的な美BODYとファッションやヘアスタイルが女性から注目を集め、絶大な支持を得ている。女優としてドラマ『小さな巨人』(17・TBS)、『集団左遷!! 』(19・TBS)、『グランメゾン東京』(19・TBS)、『SUITS/スーツ』シリーズ(18/20・CX)、『危険なビーナス』(20・TBS)など多くの話題作に出演。映画出演作は、『ミックス。』(17)。
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