PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば

映画の余韻を爪にまとう 第4回

“好き”への反射神経
『ピンポン』

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(さりげなく大胆に重ねられた色の配色と、抽象的なモチーフの組み合わせで、10本の爪にイメージを描き出す。そんな爪作家の「つめをぬるひと」さんに、映画を観終わった後の余韻の中で、物語を思い浮かべながら爪を塗っていただくコラム。映画から指先に広がる、もうひとつの物語をお届けします。隔月連載です。)
爪作家
つめをぬるひと
Tsumewonuruhito
爪作家。爪を「体の部位で唯一、手軽に描写・書き換えの出来る表現媒体」と定義し、音楽フェスやイベントで来場者に爪を塗る。
「身につけるためであり身につけるためでない気張らない爪」というコンセプトで
爪にも部屋にも飾れるつけ爪を制作・販売するほか、ライブ&ストリーミングスタジオ「DOMMUNE」の配信内容を爪に描く「今日のDOMMUNE爪」や、コラム連載など、爪を塗っている人らしからぬことを、あくまでも爪でやるということに重きをおいて活動。
作品ページや、書き下ろしコラムが収録された単行本『爪を塗るー無敵になれる気がする時間ー』(ナツメ社)が発売中。

今回は2002年に公開された、窪塚洋介主演、曽利文彦監督の『ピンポン』です。

私は中学の頃から邦画を観るだけでなく、そのサントラを聴くことも好きで、『ピンポン』も友人と映画館で観て以来、自宅でもVHSのテープが擦り切れるほど何度も観て、
サントラは曲を聴いただけで誰がどのタイミングに何を言うかが分かるほど聴き込みました。
(一番好きな曲はsugar plantの「rise」です。この曲には何度も背中を押されました。) この連載が始まった当初から、いつかは『ピンポン』について書きたいなと思っていましたが、“いつか”というにはだいぶ早い第4回。早く書きたくて、とっておくということが出来ませんでした。

『ピンポン』には好きなセリフがたくさんあります。
原作の漫画や映画のセリフを見ていても、負けた人間に華を持たせるような描写が多く、私は心を掴まれてしまいます。

卓球試合の勝敗によって、実力差が明確になる場面が多く出てきますが、この映画で巧妙だなと思ったのは、登場人物のペコ(窪塚洋介)とスマイル(井浦新)の関係性が物語の大きな軸でありながら、この2人が直接試合をするのはラストだけということ。
幼い頃はペコがスマイルに卓球を教えていたにもかかわらず、いつの間にかスマイルの実力がペコを上回ります。
ただしそれは、2人が直接試合をして明らかになるわけではなく、「ペコが試合で勝てなかった相手にスマイルが勝つ」という、間接的で、ある意味残酷な展開によって明らかになるのです。

『ピンポン』好きの人からしたらこれを挙げるのはベタかもしれませんが、「才能とは求める人間にのみ与えられるものではないからな。」というセリフがあります。
先述した「ペコが試合で勝てなかった相手」のうちの一人が、ペコとスマイルの幼なじみでもあるアクマ(大倉孝二)。
アクマは並大抵ではない努力をしてきたにもかかわらず、昔は下手だったはずのスマイルに負けてしまい、ペコは間接的に挫折します。

この映画には、どんなに努力をしても、才能のある人間には勝てないという現実と、どんなに才能があっても、努力がなければ簡単に追い抜かれてしまうという現実の、両方がぎゅうぎゅうに詰めこまれています。
しかもあの短時間で、スポーツものとは思えないほどスマートに、そして淡々と。

だからこそ、後半のペコの追い上げを経て、ラストでスマイルと試合をするシーンは何回観ても泣いてしまいます。なのであまり誰かと一緒に観たくないです。一人で観たい。 ペコの試合シーンは、公開から20年弱経った今でも鮮度があって、「卓球が好きで好きでたまらない」という気持ちで物事に打ち込むことの強さはいつだって背中を押してくれます。

実は以前、つけ爪の委託店舗でもある吉祥寺の“とじこみ”というお店で、スポーツをテーマにしたイベントがあった際に、「飛び方」というつけ爪を制作したのですが、これは『ピンポン』を観て”反射神経”をテーマに制作したもので、今回の爪は、その「飛び方」をアレンジしてみました。
映画を観た方なら、この「飛び方」というタイトルにもピンと来るかもしれません。
(「飛び方」は現在発売されている書籍にも掲載されています。)
原作や、それをもとに制作された2014年のアニメ版でも言われている「君が球を追うんじゃない。球が君を追うのだ」というセリフが表すような反射神経。
スポーツをイメージした蛍光色を多用し、THREEのポップなラメを使うことで、弾けるような躍動感を爪にしてみました。

●使用ネイル

  •  MP AT濃密 グラマラスネイルエナメル 21
  •  MP AT濃密 グラマラスネイルエナメル 22
  • ピンク HOLI NAIL SUN
  • 黄色 pa ネイルカラー A34
  • ミントグリーン MP AT濃密 グラマラスネイルエナメル 17
  • グレー OSAJI アップリフトネイルカラー 04 Shinden
  • グレーの丸の先にあるラメ NAILHOLIC SV029
  • ポップなラメ THREEネイルポリッシュ X40 PUREST POETRY
FEATURED FILM
監督:曽利文彦
原作:松本大洋
脚本:宮藤官九郎
出演:窪塚洋介、ARATA、サム・リー、中村獅童、大倉孝二、松尾スズキ、荒川良々
小学校のガキ大将ペコは、得意の卓球をいじめられっ子スマイルに教える。が、高校入学初の全国大会で、スマイルは勝ち進むが、ペコは幼なじみのアクマに負けて大ショック。優勝は名門校の主将、ドラゴンに。彼らそれぞれの1年間の後、次の大会がやってくる。
PROFILE
爪作家
つめをぬるひと
Tsumewonuruhito
爪作家。爪を「体の部位で唯一、手軽に描写・書き換えの出来る表現媒体」と定義し、音楽フェスやイベントで来場者に爪を塗る。
「身につけるためであり身につけるためでない気張らない爪」というコンセプトで
爪にも部屋にも飾れるつけ爪を制作・販売するほか、ライブ&ストリーミングスタジオ「DOMMUNE」の配信内容を爪に描く「今日のDOMMUNE爪」や、コラム連載など、爪を塗っている人らしからぬことを、あくまでも爪でやるということに重きをおいて活動。
作品ページや、書き下ろしコラムが収録された単行本『爪を塗るー無敵になれる気がする時間ー』(ナツメ社)が発売中。
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