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生島淳の映画と世界をあるいてみれば vol.8

『トレインスポッティング』に、最高の朝食!ラグビー強豪国・スコットランドの首都エディンバラってどんな街?

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(スポーツジャーナリストとして活躍する生島淳さんが、「映画」を「街」と「スポーツ」からひもときます。洋画のシーンに登場する、街ごとの歴史やカルチャー、スポーツの意味を知ると、映画がもっとおもしろくなる! 生島さんを取材した連載「DVD棚、見せてください。」はこちら。)
スポーツジャーナリスト
生島淳
Jun Ikushima
1967年生まれ、宮城県気仙沼市出身。早稲田大学社会科学部卒業。スポーツジャーナリストとしてラグビー、駅伝、野球を中心に、国内から国外スポーツまで旬の話題を幅広く掘り下げる。歌舞伎や神田松之丞など、日本の伝統芸能にも造詣が深い。著書に『エディー・ウォーズ』『エディー・ジョーンズとの対話 コーチングとは信じること」』『気仙沼に消えた姉を追って』(文藝春秋)、『箱根駅伝 ナイン・ストーリーズ』(文春文庫)、『箱根駅伝』『箱根駅伝 新ブランド校の時代』(幻冬舎新書)、『箱根駅伝 勝利の方程式』(講談社+α文庫)、『どんな男になんねん 関西学院大アメリカンフットボール部 鳥内流「人の育て方」』(ベースボール・マガジン社)など多数。

ユアン・マグレガーが演じるマーク・レントンが逃げる!
きっと、かっぱらいか何かをしでかしたんだろう。逃げている最中にも、彼らの服の下やポケットから、いろいろなものがばらばらと落ちていく。
1996年に公開された映画、『トレインスポッティング』。
いま再見しても、ユニークな演出は新鮮なままだし、ユアン・マグレガーのスコットランド訛りが強烈すぎて笑ってしまう(ラグビー・ワールドカップ日本大会の期間中、久しぶりにスコットランド人の英語を耳にして、懐かしかった)。
『トレインスポッティング』が舞台になっているのはスコットランドの首都、エディンバラ。冒頭、マークが逃げていくのはエディンバラ城の近くにある目抜き通り、プリンシーズ・ストリートだ。逃げるマークにかぶさる米パンクロックの帝王、イギー・ポップの曲“Lust For Life”が素晴らしいマッチングだが、繁華街でのかっぱらいとは威勢がいい。

エディンバラは映画の街でもある。
毎年6月には「エディンバラ国際映画祭」が開かれるが、このフェスティバルは1947年に始まり、いまでは世界でもっとも長い歴史を持つ映画祭となった。
そしてこの街が舞台となった映画として忘れてならないのは、1969年公開の『ミス・ブロディの青春』。もう50年前の映画になってしまったが、主演のマギー・スミスは、この作品でアカデミー主演女優賞を受賞している。
マギー・スミスといえば、21世紀の若者にとっては『ハリー・ポッター』シリーズのマクゴナガル先生ですね。
『ミス・ブロディの青春』を観ると、マギー・スミスの並々ならぬ演技力とヨーロッパの歴史、そしてまた1930年代のエディンバラの女学校の雰囲気が伝わってくる。スコットランド人のファンが自ら「スコットランドが端的に表現されている映画」と絶賛しているほどだ。

また、1981年のアカデミー作品賞を獲得した『炎のランナー』でもエディンバラがちらっと覗けるが、それよりも冒頭で選手たちが浜辺を、ギリシャ人音楽家、ヴァンゲリスの曲“Chariots of Fire”に乗ってランニングする冒頭シーンが有名だ。
このシーンのロケ地はゴルフ場で有名なセントアンドリューズで、いまもなお、映画の若者たちと同じように浜辺を走ることが出来る。
『炎のランナー』は私の青春時代の大切な一本であり、取材で映画の舞台を踏みしめた時、とても感慨深いものを感じた。

感慨。
エディンバラを旅した時に、幾度も頭に浮かんだ言葉だ。
初めて訪ねたのに、なぜか懐かしい感じがする。石畳、レンガの建物、曇天と晴天の交錯。あれ、これってどこかで見たことがある気がするな? 何度、そう思ったことか。もちろん、それは映画やテレビを通じて獲得した記憶なのだろうが、体験することがすべて自分の記憶に馴染んでくるのだ。
エディンバラの街なかは、探検し甲斐がある。『ハリー・ポッター』の世界に迷い込んだかと思うような路地。路地を抜けると、古書店が出てきて、足を向けてしまう。なにか掘り出し物があるんじゃないかという予感がいっぱい。

スコットランドといえばウイスキーが有名だが、ビールでのどを潤したいと思ってうろうろしていた。見つかったのは、こんなお店。
“PUB CONAN DOYLE”
ベネディクト・カンバーバッチ主演のドラマ『シャーロック』も大好きだけれど、その昔、NHK総合で放送していたジェレミー・ブレット主演の『シャーロック・ホームズの冒険』の大ファンとしては、ホームズの生みの親であるコナン・ドイルの名が冠せられたパブには入らなければなるまい。

落ちついた店内は、パブというよりもレストラン。エディンバラには各国の料理が食べられる素敵なレストランが多いが、中でもこの「コナン・ドイル」は忘れられないお店だ。

石畳の街なかを歩いていると、素敵なお店もたくさんある。私は“Walker Slater”というお店で、一生モノのツイードのジャケットを購入したのがいい思い出。そして、街の階段を昇っていくと、エディンバラ城に出る。
このお城に入ると街を一望できるが、感じるのは歴史の重みだ。イングランドと戦い、先人たちは国を守るために命を落とした。
感慨の源は、エディンバラの歴史なのかもしれないと思った。

お城から、『トレインスポッティング』に出てきそうな階段を下りていくと、公園に出る。エディンバラは公園が多い街でもある。天気が不安定だから、日曜に太陽が顔を覗かせようものなら、みんな手をつないで公園にやってくる。
面白いなと思ったのは、公園にゴルフのミニコースがあり、みんなが好き勝手にプレーしていたこと。それなら、と思い立って私もクラブを借りて少しばかりプレーした。

中には、ビールを片手に仲間4人でゴルフをしている若者たちもいた。嫌な感じはしない。みんな、エンジョイしていた。
エディンバラでは、いい日曜日が過ごせる。

そしてエディンバラで忘れられないのは、朝食だった。毎朝、プレートにこれだけの品が並んでくる。

目玉焼き
焼きトマト

ソーセージ
ハム
マッシュルーム
ハギス

ハギスというのは、本によると「羊の内臓を羊の胃袋に詰めて茹でたスコットランドの伝統料理」で、読むだけではまったく美味しいとは思えない。ところが、味つけがしょっぱいこの料理が、スコットランド滞在中に病みつきになってしまったのだ。
日本に帰国する朝も、スコティッシュ・ブレックファストをいただいてから帰国の途へ。

その時は、もう二度とエディンバラを訪れることはないだろうと思ってハギスをお腹に詰め込んだのだが、なんと、2020年11月、ラグビー日本代表がスコットランドに遠征することが決まったのだ。
『トレインスポッティング』と『ミス・ブロディの青春』を観直して、もう一度行くぞ、エディンバラ。

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PROFILE
スポーツジャーナリスト
生島淳
Jun Ikushima
1967年生まれ、宮城県気仙沼市出身。早稲田大学社会科学部卒業。スポーツジャーナリストとしてラグビー、駅伝、野球を中心に、国内から国外スポーツまで旬の話題を幅広く掘り下げる。歌舞伎や神田松之丞など、日本の伝統芸能にも造詣が深い。著書に『エディー・ウォーズ』『エディー・ジョーンズとの対話 コーチングとは信じること」』『気仙沼に消えた姉を追って』(文藝春秋)、『箱根駅伝 ナイン・ストーリーズ』(文春文庫)、『箱根駅伝』『箱根駅伝 新ブランド校の時代』(幻冬舎新書)、『箱根駅伝 勝利の方程式』(講談社+α文庫)、『どんな男になんねん 関西学院大アメリカンフットボール部 鳥内流「人の育て方」』(ベースボール・マガジン社)など多数。
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