PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば

ご当地ミニシアターさんぽ 四条編

老舗「ミニシアター&喫茶店」で、
わたしの“憧れの京都”を満喫
【京都シネマ/イノダコーヒ】

ご当地ミニシアターさんぽ
気になっていたミニシアターを目指し、旅してみるのはいかがでしょう? 世界中のバラエティ豊かな映画を、独自に厳選して上映しているミニシアター。そんな日本各地にある個性豊かな劇場で映画を味わった後で、合わせてご当地グルメも味わえる、おすすめさんぽコースを紹介します。
今回は、京都の四条編です!
ナビゲーター
ライター
安多香子
Takako Yasu
滋賀県生まれ。相撲と映画とビールをこよなく愛する30歳。編集プロダクション勤務を経て、現在はライティングや編集の仕事に携わる。

3年ぶりに行動制限のなかった今年のお正月。私も地元の滋賀に帰り、家族団らんや友人との時間を満喫しました。

しかしアラサー独身女性にとっての久しぶりの地元は楽しいことばかりではなく、周囲からのさまざまなプレッシャーや、ライフステージの違う友人と自分を比較して落ち込んだり、モヤモヤする気持ちも味わいます。

そんな鬱憤をためこんだ私は、気分転換に憧れのミニシアターである「京都シネマ」へ行くことを思いつきました。

ご当地ミニシアターさんぽ 京都編

商業施設のワンフロアで営業を続ける、
京都の老舗ミニシアター

1988年にオープンした京都シネマの前身である「京都朝日シネマ」は、世界中の良質な作品を上映するミニシアターとして、京阪神の映画ファンによく知られた存在でした。2003年の閉館後、京都朝日シネマの元支配人が設立した会社を運営母体とし、京都シネマの名で現在の場所での営業を始めます。

そんな京都シネマは、幼いころからミニシアター系の映画が大好きだった私にとっても、特別に輝く存在でした。観たい新作映画の上映劇場欄にいつも名前を連ねるその場所は、その頃高校生だった私にとって滋賀の北部から電車で行くには少し遠く、大学から社会人生活のほとんどを東京で送ってしまったこともあり、結局足を踏み入れることはありませんでした。

訪れたのは、成人の日を含んだ三連休。
滋賀からJRで京都駅に向かい、振袖を着た新成人であふれる地下鉄に乗り換えて、烏丸線の「四条駅」で下車します。京都シネマが入っている商業施設・COCON KARASUMA(古今烏丸)は、四条駅の2番出口・四条烏丸西直結。

その日は京都らしい、いまにも雨が降りだしてきそうな曇天でしたが、濡れることを心配せずに向かうことができました。

ご当地ミニシアターさんぽ 京都編

COCON KARASUMAのエスカレーターに乗って3階で降り、ロビーの方向に向かうと、特徴的な映画館のロゴが見えてきます。

中は広いロビーと、赤・緑・青で色分けされたスクリーンが3つ、そしてロビーの外にも広めの通路と待合席があります。上映時間よりも少し早めに着いたので、上映作品に関係する展示を見たり、自販機でコーヒーを買って待合席でボーっとしながら時間を潰しました。

ご当地ミニシアターさんぽ 京都編
ご当地ミニシアターさんぽ 京都編

この日は1980年公開(日本での初公開は1982年)のフランス映画『ラ・ブーム』を観ることに。『ラ・ブーム』は当時13歳だったソフィー・マルソーのデビュー作で、日本でも大ヒットを記録した作品です。

日本公開40周年となる昨年には、年末から各地の映画館でデジタル・リマスター版の上映が行われ、京都シネマのロビーも往年のファンと思しき多くの紳士淑女で賑わっていました。なかにはデートで訪れているであろうカップルの姿や、若い大学生の姿も。

開場時間となり、上映されるシネマ3に入場します。

ご当地ミニシアターさんぽ 京都編

「ラ・ブーム」とは、パーティーを意味します。本作は、パーティーに誘われることを夢見る13歳の少女とその両親の、恋にまつわる様々な騒動を描いた作品です。

自己卑下でいっぱいだった私が作中特に惹かれたのが、主人公ヴィックの母・フランソワーズ(ブリジット・フォッセー)のキャラクターです。家事や育児を行いながらフリーランスのイラストレーターとしても働く彼女は、連載を勝ち取ったり、仲間たちとアトリエを持ってイキイキと働いたり、パートナーとの関係に悩んだり。とにかく人の目を気にせずに、自分の人生を謳歌しまくっています。

演じるブリジット・フォッセーの美貌とフレンチ・シックな着こなしもあいまって、2時間ほぼ彼女に釘付けに。ポップでコメディ的な要素も多く、ほとんどの席が埋まった場内からは笑いも漏れる楽しい映画体験となりました。そして観終わるころには、しぼんでいた気持ちもすっかり元に戻り、「私もフランソワーズのように、自由に生きよう!!」と京都を通り越してフランスに行ったくらいのリフレッシュ感を得ました。

すっかり勢いづいた私はもう一つ、“憧れの京都”をコンプリートするため、京都シネマから歩いて10分ほどの距離にある「イノダコーヒ」の本店へ向かいました。

歴史ある老舗喫茶店で、
お腹も心も満たされて

1940年創業のイノダコーヒは、老舗がひしめく京都でも最も有名な店の一つとして知られている喫茶店です。谷崎潤一郎や高倉健などの著名人にも愛された名店で、現在は京都市内を中心に9店舗を展開しています。

それぞれに外観や内装が異なり、訪れた本店は風情ある町屋の雰囲気を残した佇まいが特徴。店内は洋風のサロンを思わせる昭和レトロな空間が広がっていて、蝶ネクタイをつけて正装したスタッフの方が、最高のおもてなしを演出してくれます。

ご当地ミニシアターさんぽ 京都編
本館の左には、開業時の姿を復元したメモリアル館が

お腹が空いていたので、まずは喫茶店の王道のナポリタンである、「イタリアン」を注文しました。蓋つきのシルバープレートで運ばれてきたアツアツのイタリアンは、ケチャップの甘みと酸味が懐かしい逸品。

ご当地ミニシアターさんぽ 京都編

食後には名物のホットコーヒー、「アラビアの真珠」を注文します。創業時から提供されているこのブレンドコーヒーはミルクと砂糖を入れて飲むことが推奨されており、せっかくなので、普段はブラック派の私もお勧めのスタイルでいただくことに。

これが、感動の一杯でした。絶妙な量のミルクと砂糖が、深煎りブレンドの豊かな香りとコクを引き立たせます。

ご当地ミニシアターさんぽ 京都編

そうして胃も心もすっかり満足して、私は帰途につきました。
大人になっても京都からの帰り道はやっぱり少し長いけれど、行きたいところに行って観たいものを観て、自分を元気にすることができる。

憧れの京都シネマへの道のりは、そんな小さくて確かな自由を教えてくれました。

今回のさんぽコース

京都シネマ
京都府京都市下京区烏丸通り四条下ル水銀屋町620 COCON烏丸3F
(京都市営地下鉄烏丸線「四条駅」2番出口 四条烏丸西直結
阪急京都線「烏丸駅」23番出口 三井住友信託銀行口直結)
↓(徒歩10分)
イノダコーヒ 本店
京都市中京区堺町通り三条下る道祐町140番地
(京都市営地下鉄烏丸線・東西線「御池烏丸駅」5番出口から徒歩10分)

PINTSCOPEでは、これからも日本各地や世界にあるミニシアターを紹介していきます!
ぜひ、Twitter公式アカウントをフォローして、あなたにぴったりのさんぽコースを見つけに来てください。

BACK NUMBER
INFORMATION
京都シネマ
住所:京都府京都市下京区烏丸通り四条下ル水銀屋町620 COCON烏丸3F
TEL:075-353-4723
Twitter: @kyotocinema
Instagram: @kyotocinema1204
PROFILE
ライター
安多香子
Takako Yasu
滋賀県生まれ。相撲と映画とビールをこよなく愛する30歳。編集プロダクション勤務を経て、現在はライティングや編集の仕事に携わる。
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