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河野知美「揺れる泪、闘う乳房 〜Pはつらいよ映画日記〜」vol.8

2023年6月
プチョン目前。『水いらずの星』宣伝を考える。

Sponsored by 映画『水いらずの星』
揺れる泪、闘う乳房 〜Pはつらいよ映画日記〜
俳優は、プロデューサーは、どんな日常生活を送り、どんな思いで作品の劇場公開までを過ごすのか。そして、もしもその間に、大病を宣告されたとしたら——。
あるときは、唯一無二のルックスと感性を武器に活躍する俳優。またあるときは、悩みつつも前に進む自主映画のプロデューサー。二つの顔を持ち、日々ひた走る河野知美さん。
2023年初冬、河野さんが主演・プロデュースを務める新作映画『水いらずの星』が公開されます。越川道夫監督、松田正隆原作、梅田誠弘W主演の本作。その撮影から公開に至るまでの、約1年間の映画作りと闘病について、河野さんが日記を綴ります。
第8回は2023年6月の日記です。
俳優・映画プロデューサー
河野知美
Tomomi Kono
映画『父の愛人』(13/迫田公介監督)で、アメリカのビバリーフィルムフェスティバル2012ベストアクトレス賞受賞。その他のおもな出演作に、映画では日仏共同制作の『サベージ・ナイト』(15/クリストフ・サニャ監督)や、『霊的ボリシェヴィキ』(18/高橋洋監督)、『真・事故物件パート2/全滅』(22/佐々木勝巳監督)、ドラマではNHK大河ドラマ『西郷どん』(18)、Netflixオリジナルシリーズ『呪怨:呪いの家』(20/三宅唱監督)、HBO Max制作のテレビシリーズ『TOKYO VICE』(22/マイケル・マン監督ほか)など多数。また、主演映画『truth~姦しき弔いの果て~』(22/堤幸彦監督)ではプロデューサーデビューも果たし、『ザ・ミソジニー』でもプロデュース・出演を兼任。2023年初冬、梅田誠弘とのW主演作であり、プロデューサーとしての3作目でもある映画『水いらずの星』(越川道夫監督)が公開予定。|ヘアメイク:西村桜子
撮影協力:BOLE COFFEE & ICE CREAM(〒156-0042 東京都世田谷区羽根木1-19-19 IGH CT03)

6月2日

頑張ったらご褒美を神様はくれるだろうか。
完全に見返りを求めている、浅はかな私です。

ろくに寝ていないせいか、仕事をしていたら鼻血が出た。

何処まで生きられるか勝負をしている。
誰とでもない。自分と。
まさに、サバゲーのようだ。

3ヶ月分くらいのエネルギーを、日々に注ぎ込んでいる。
でも、これって年末まで続くんじゃない?

エキスパンダーに水がたっぷり入って、裸になると本当にサイボーグみたい。
今度、高橋洋監督の『夜は千の眼を持つ』でプチョン国際ファンタスティック映画祭の企画マーケットに参加する。
飛行機に乗る時は、金具が入ってます。というカードを見せれば、セキュリティーを通れるんだって。

頑張ったらご褒美を神様はくれるだろうか。
今欲しいのは緩やかに流れる時間と優しい微笑みです。

会いたいです。

6月3日

昨晩、深夜2時ごろかな。
プチョンの企画マーケットに提出する企画書と台本の準備が一通りできて、とても嬉しくて。脳がギンギンになってしまって。

すごい勢いで、YouTube番組の編集を2本してしまった(笑)。

そして今さっき、ここ数週間くらい、『水いらずの星』宣伝物の編集・ライターのミリさんと頑張って、原稿起こしては、改稿し、チェックし、夜でも朝でもさんざんさんざん、二人で詰めてきたチラシ原稿が出来上がった。

今朝、ミリさんからきた原稿を見た時、あぁ頑張ってくれたなぁ。なんて思いのこもった文章なんだろう。と実はウルウルしてしまって。

私がたくさん、こだわりを見せたのにもかかわらず、最後はミリさんの作品になっていた。
言葉たちがミリさんから作られている文章になっていた。

たくさんのことを調べて、考えて、何度も何度も諦めずにここまで。

ほんの少し休んでくださいね。ほんの少しだけ……。

河野知美「揺れる泪、闘う乳房 〜Pはつらいよ映画日記〜」vol.8

6月4日

有名になろうと、どんな大きな仕事をしようと、きっと私は映画を作るということを、ビジネスにはできないプロデューサーだと思う。

心を失った、愛を失った映画はもろい。

だから、映画を温め続けることに命がけになってしまう。

いろんな都合や、いろんな事情があるとしても、映画が一番心地よい形を目指したい。

そうなると、やっぱり心を、愛を繋げていくような展開しかできない。でもずっと、そうでありたいと改めて思う。

かっこいいこと。とかできないし。
不器用なりに、マニアックなりに我が道をゆけばいい。

日本で活躍されているプロデューサーさんのような仕事は一生できないんじゃないかな。
みなさんがどんな風に映画を作られているのか、正直知らないけれど。
プチョンではオフィスシロウズの松田広子さんやブリッジヘッドの小川真司さんといったすごいプロデューサーさんたちとお話しする機会をいただけるわけで、どんな風にお仕事をされているのか伺えたら嬉しいな。

肩を並べているなんて恐縮すぎて、場違いにならないか不安で一杯……。

6月5日

明け方まで、『水いらずの星』のエンドクレジット制作の詰めをする。
作業が進まない間は、7月に発売になる『ザ・ミソジニー』のディスク稼働チェックを実施。
その間にも、越川道夫監督から。高橋洋監督から。磯谷渚監督からと電話が次々に鳴り、メールが飛び交う。

最近はもう、電話で仕事をするようにしている。
メールはエビデンスを残すためだけのツール。

正直、文章書いている時間はないし、話した方が早いことも多い。

海が恋しい。海が見たい。
私は海が好きなわけでもないし、海沿いの町に生まれたわけでもない。

なのに、海の水面がキラキラ反射する様や、鼻に微かにツンとくる潮の匂い。
足裏に感じる砂浜の感触。

感じたい。触れたい。
海を感じたい。

河野知美「揺れる泪、闘う乳房 〜Pはつらいよ映画日記〜」vol.8

6月7日

昨日、左胸のある箇所がやけに痛くて、急遽病院に行った。痛いというより、ギューっとなる感じ。以前にも感じた感覚。もしかしたらかもしれず、再検査を実施。急激なストレスや多忙が負担をかけているかもしれない。できる限りそういう状況下に身を置かないようにと言われた。
進行を早めるリスクがあると。

右胸の時も、プロデュースを始めてすごく忙しかったのが原因かはわからないけど、一年前にはなかったものが2センチになってたわけで、人生は何が起きるかわからない。だから目の前のことを頑張りたい。一生懸命。約束だけは果たしたい。約束を果たすまでは頑張りたい。

生きていると、自分の意図とは離れたところで、良いことや悲しいこと、いろんなことが起こる。
目の前のことで頭がいっぱいになって先を見失う時もあるけど、本当は優しくありたかったり、愛情で包まれたいだけなんじゃないかな。

だから、少しだけ深呼吸して、大事なことを見失わないでいてほしいと願う。

伝わらないかもしれない。
言葉は足りないかもしれない。

でも、本当に思ってる。

ありがとう。
本当にありがとう。
私はあなたに会えて幸せ者です。
あなたがあなたらしく生きていてくれたら幸せです。

河野知美「揺れる泪、闘う乳房 〜Pはつらいよ映画日記〜」vol.8

6月10日

今日から、プチョンの企画マーケットのプレゼン&交渉に向けて、本を3冊、再復習する(以下写真参照)。

もう、どの本もボロボロで何度読み返したことか。
それでも、改めて読むと忘れていることが沢山あってガックリする。

ここ一年ほど、コロナで海外にいく機会も減っていたし、秘書もやめてしまったりしてて、英語を実践的に使用するのは本当に久しぶりで不安がいっぱい。

でも、目標を定めたらきちんと達成できるタイプではあると僅かながら自覚はあるので、もう日々積み重ねるしかない。

文章を翻訳するのと、英会話では種類が違う。
英会話でプレゼンしたことはあるけど、交渉したことは皆無(だって秘書ですもの)で、もうこれは姿勢正してやるしかないと、気合を入れた朝なワケです。

朝ウォーキングをしていたら、その時間だけ晴れ間が出てきて、何かいいことあるかなぁ。と期待をしながら環七沿いをもくもくと歩いていたのでした。

「自然界のペースを取り入れなさい。その秘密は、困難に負けない辛抱強さである。
Adopt the pace of nature: her secret is patient.」

ラルフ・ワルド・エマーソン
河野知美「揺れる泪、闘う乳房 〜Pはつらいよ映画日記〜」vol.8
写真:河野知美

6月11日

最近、タモキシフェンを闘病のために飲んでいるんだけど、先生には脱毛の心配はない。と言われたものの、一方で脱毛している方もいるそうで。

私も手術前に服用していた時、術後に服用しだした時。やけに髪の毛が抜ける。

私だけのケースかもしれないので、一概には言えないけど、今日も少し溜息が出て、人前に出ることが怖くなる。

自分としては恥ずかしいんだけど、病気と向き合うってことはそういうことなのかもしれないので、ここに綴っておきます。

5年間一緒に住んでいた、親友のまいちと半年ぶりに会う。

まいちと私は本当に真逆のタイプで、それがむしろ心地よい。いずれ老後が来て、まいちの子どもたちも巣立って、私も一人になったら、また前みたいに一緒に暮らそうね。なんて話したり。

まいちはずっと、私の生きている世界の外側にいてくれるから、ほっとする。いつも、外側から私を応援してくれるから、心が落ち着く。

6月15日

『水いらずの星』の配給元でもあるフルモテルモの財前さんと、パブリシストの方のお話を伺う中で、財前さんから以下のようにお伝えいただいた。

「二作品、河野さんの作品を受け持たせていただいたのも何かの縁だと思っており、死ぬ気でちゃんと動いてくれる方じゃないとダメだと思っていました。有名な人の作品を売るのは簡単ですが、そうじゃないからこそ、今年は仕掛けていくべきだと考えてます。邦画の場合は出演者、監督、プロデューサーの稼動と露出が命です。特に、河野さんの今年の頑張りは1番の売りとしてちゃんと世の中に伝えて、認めてもらいましょう」

泣きムシPはここでも泣いてしまった。

毎日悩むこと、高い壁が立ち塞がることばかりだけど、こんな風に思ってくださっていたのかと。パブリシストの方も、『水いらずの星』は絶対に挑みたい作品なので……、とおっしゃってくださっていた。

私はただ、毎日、日々に飲み込まれるように前に泳いで泳いで、たまに視界が見えなくなって、誤ったことをしたりして。何が正しいことなのかわからなくなったりするけど、でもきっとやってきたことは間違いじゃないって仲間たちにいつも教えられて、きっとこの先にやってよかったって思える日が来るって信じたいって思っていて。

負けんな河野。って呟くのです。
あなたならできるって呟くのです。
私たちならできるって呟くのです。

6月18日

「We believe that …」
この表現は、英語のプレゼンにおいて、確固たる自信を伝えるパワーフレーズなんだと学んだ。

明日の、プチョンの企画マーケットのリハーサルに向けて、午前中まで高橋監督と、たった一文の言い回しと理解について1時間くらいかけて精査した。監督の脳で思い描いていることを日本語にして、それを文才のない私でも理解できるまで紐解いて、そのあと、SVOCで成り立つ英語に翻訳するために、より詳細に「日本語なら伝わるニュアンス」というものを具体化していく作業。何度も何度も二人でやり直して。

監督に最後に「すばらしいです。ありがとうございます」と言われた時、諦めなくて良かった。とホロリとなった。
そのあとは、ずっと一人でシュミレーション……。

自主映画を自主映画にとどまらせてはいけない。
自主映画という常識を打ち破り、商業映画と肩を並べてより評価してもらえるように、今から、私たちが頑張らねばならない。
そして、いつか自主映画とか商業映画とかそんな言葉さえも忘れ去られるような、そういう世界にしてしまえばいい。

プロデューサーが、監督が、主演俳優が、じゃなくて、チームみんなが先頭に立って「私がこの映画を作りました!」と堂々と叫べるような映画づくりをしたい。
そしてみんなが注目されるような作品作りを展開していきたい。
私はトップにいるのではない、中心にいるのだ。

6月19日

自分よ。よく頑張った。
引き篭もり続けて、1週間。
プレゼンの台本を書いては構成し、企画書を改訂し、何度でも何度でも何度でも、とドリカムばりに、トライし続けた。

昨日の午前中まで出来上がっていなかった台本を、半日で何度も何度も練習した。
オーディション行くより練習した。
孤独な戦いだった。(理由は、高橋監督はプレゼン自体は“シーランペ”だから(笑))

JVTAの石井先生、浅川先生、VIPOの方たち、元東京国際映画祭ディレクターの矢田部さんがズラーっと私だけを見ている中、一人で立ち上がり、パワポを駆使しながら英語で話すという人生初のシチュエーション。

もうやるしかねぇ!

と思いながらやり遂げた。
資料に対する細かい修正はあったものの、企画に対する自信は伝わったと思うし、数字というエビデンスを持ってきたというのは今日初めてでした。と言っていただいた。パフォーマンス素晴らしかったです。と。

頑張って良かった。本当に良かった。
私絶対にブレない。
もっともっとブラッシュアップして、プチョンに乗り込んでやる!

河野知美「揺れる泪、闘う乳房 〜Pはつらいよ映画日記〜」vol.8

6月21日

いつも衣装で入ってくださっている、スタイリストの藤崎コウイチさんと久しぶりに、手術後の経過の報告兼ねて、プチョン出席や今後の活動についての打ち合わせを。

藤崎さんの衣装はいつも私に勇気をくれる。
カメラの前に立てる勇気をくれる。
ここにあなたは立っていていいんだよ。と衣装が映画の世界に引き込んでくれる。
魔法みたいだ。

『水いらずの星』の衣装にもすべて、そのキャラクターへの揺るぎない意味があって、というより、意味のないものはないくらいのこだわりが反映されている。

だから、その衣装に見合うような俳優になりたいといつも思う。
衣装を着させられているようないで立ちではいけない。
衣装が身体の一部のように違和感なく存在できるような、存在感。

そのためには日々の小さな努力が必要。
きっとその努力は、人としての、女としての魅力を押し上げてくれるだろう。

綺麗になりたいな。というより素敵になりたいな。

なんて今日も深夜2時。

仕事に熱中できる自分も、自分の好きな要素だったりする。

6月23日

ここ最近、配給の財前さんと1日10回以上は電話でやりとり。財前さんはとても紳士的で、私が安心してお話しできる心の泉。

長年培ってこられた知識を元にアドバイスをくださる一方で、柔軟に物事を考えられる方。
仕事がやりやすい方というのは財前さんのような人を言うのだろうな。

「もう用事なくても、自分を律するために河野さんに毎日電話してしまってもいいですか?」とおっしゃる。

もちろん!です。2本同時並行で進めているので、私もこんがらがってしまいますし、メールも来すぎていて追いつけなくなってるので、なんでも話しちゃいましょう!とお伝えした。

ここ最近、プチョンから毎日30通くらい英語だらけのメールが来てて、気が狂いそうです。
とは言え、予想以上に各国の関係者の方々からミーティングリクエストが来ている。
現地に行ったのにスケジュールガラ空きだったらどうしようと思っていたので、安心した。

河野知美「揺れる泪、闘う乳房 〜Pはつらいよ映画日記〜」vol.8

6月24日

Pの仕事って一体、どこからどこまでなんだろ?

今日は、『ザ・ミソジニー』のパッケージ発売開始が近いのでCM動画を作り、それに使う素材を作り、SNSに上げて、予約投稿して。

『水いらずの星』の正式クレジット素材を私が作りましょうか?と編集の菊井さんにお話ししたら、Photoshopじゃなくてイラレで素材作った方がいいよ。と言われた。
避けて通ってきたが、これを機にとばかりに勉強し始めたけど、慣れなくて一苦労。仕様が全くわからない……。

助成金申請のための書類を黙々と作り、プチョンのプレゼンの練習し……。

プロデューサーって、なんの仕事をする人なんでしょうかね? なんでも屋? 誰か教えてほしいです。

願わくば、作業量に見合う優しさだけでも欲しいです。自分がやりたいことやってる。の枠はもはやとっくに飛び越えている。
でも、やりますよ。
ええ、やりますとも。
私がPですから。

6月25日

いつも私を応援してくれる中高からの友人から、乳がんが見つかったと連絡が来た。 「とんの連載を読んでたから、迷わず受診しに行けたからよかった」と言ってくれた。

ただ、平穏に生きたい。
愛する人の為にだけ生きていたい。
最近心からそう願うのです。

責任をきちんと果たしたら、
そういう生き方を選びたい。
でも、何かを積み上げる度に、その生き方から遠い場所に向かっている気もする。

私がいま、焦がれるような日々を送っていた彼女に、私は「一緒に頑張ろう」と伝えた。
何ができるかわからないけど、一緒に闘いたい。と思った。

きっと、私の周りの人たちもそう思ってくれていたんだろう。と改めて知った。
病気であることを隠さず、ちゃんと伝えてくれてありがとう。と思った。

河野知美「揺れる泪、闘う乳房 〜Pはつらいよ映画日記〜」vol.8

6月27日

激務が続いている。
いいのだこれで。

朝から『水いらずの星』のスチールを撮ってくれた写真家の上澤さんと一緒に、前売り券特典のポストカードの写真選定と、本編画像切り抜き作業。
上澤さん宿題増やしてすみません。と思いつつ、本来ならもっとよい映像で切り出したいな。とむくむく思い出す。
7月14日までにきちんとしたクレジットが入った状態の本編データを編集の菊井さんにリクエストし、東京国際映画祭エントリーに挑む。

そして忘れちゃいけないのが!
釜山にも出さなければ。これは19日までが締め切り。
大詰めを迎えている。

『水いらずの星』のチラシ&ポスターの入稿も終了して、あとは色校正確認と、納品を待てば待てば待てば!

プチョンのメールもまだまだ延々と続き、プレゼン後の各国のプログラマーやインベスター、コミッションとの直接ミーティングのためのより詳細な企画書を作成。
これだって英語にしなくちゃいけないよ。間に合う? 間に合わせる!

6月28日

ここ数ヶ月いろんなことがあって、ストレスが異常にかかり、身体のあちこちの数値がまずいことになっていると病院で言われた。
いつ倒れてもおかしくない状態だと。まぁ、仕方ないよね。無理は承知之助。

そして今後の対策を熟考した。

約束した公開までのプロセスは何がなんでもやり遂げる。
みんなが、みんなの希望を私に託したわけだから、私はやり遂げる。
ただ、映画祭や舞台挨拶、地方劇場周りなど人前に立つのは現状の体力・精神力を考えるとその頃は非常に厳しいかもしれない。

私は裏方に徹して、映画製作と、俳優として芝居をする以外は、活動を控えるべきなのかもしれない。
そもそもは別に映画祭で歩きたいとか、メディアに取り上げられたいとか、注目されたいとか、そういうことでプロデューサーをやってきたわけじゃなくて、世の中に今までにない最高の映画を遺せたら。遺したい人の手助けができたら。
最高の芝居ができたら。と思ってやってきたわけだから、映画が完成して、公開できれば使命はまっとうできる。

とにかく、6月は自分でも頑張ったと思う。
本当に遊びにも行かないで、映画も観に行かないで、ただただ映画が一番素敵な状態で世の中に出るために頑張ってきた。
プチョンの練習も大詰め。帰国したら少しだけ自分を解放してあげたい。
海が見たい。

楽しみだなぁ。公開が。
みんなが笑ってくれていたらいいなぁ。
みんなが公開を望んだんだもの。きっと笑ってくれているはず。

河野知美「揺れる泪、闘う乳房 〜Pはつらいよ映画日記〜」vol.8

6月29日

プチョン用の資料作成ラッシュ。
7月1日に行われるJapan Spotlight Pitchingが終わると、2日と3日で各企画のテーブルが用意され、その企画に興味のある人たちが、詳しい話を聞きに来る。

そのための資料を、もうなんにも口頭で話さなくてもいいように(笑)作り込んだ。

誰かが言っていた。モノを売るための極意は、
・なぜクライアントがそれを買わなければならないか?
・なぜ私から買わなければならないか?
・なぜ今買わなければならないか?

その理由を明確に述べることができればモノはちゃんと売れる。と。そしてその上で、自分は何が欲しいのか。を明確に提示する。

よく考えてみれば、私はバイトでも売り上げ全国ナンバーワンの売り子だったわけで、きっとそのスキルが応用できるはず。
企画に投資してもらうのも、その極意と変わらないんじゃないかと思い出す。

そんな折、プチョンの企画マーケットには参加できないが、私のピッチングリハーサルビデオを見たフランスの投資会社から、是非とも企画の詳細を教えてもらいたい。と直接メールが来た。

私はこの1ヶ月、家に引きこもっていたのに、私の世界はどんどん各国に繋がり出していてなんか変なの。と思ったり。

大丈夫だよ。私は本番にきっと強い。
『水いらずの星』の撮影では、越川監督にいろいろ言われてセリフぶっ飛ぶことが多々あったけど……。一緒に主演した梅田くんにはたくさん迷惑かけたなぁ……。
でも、それって自分が何をどうしていいのかふわふわしてる時に起こる現象であって、
明確に感情とかシュチュエーションとかがセットされたらちゃんと取り戻せるものなんだと思う。 もう体当たり。昔からそうじゃないか。
怖いもの知らずで飛び込んで、なんとかやってきた。
映画製作だってそう。挑戦して、学んで、失敗も反省もしながら、でも何とかやってきた。

きっとできる。私ならできる。

というわけで、赤飯おにぎりを食べました。
げん担ぎ。

河野知美「揺れる泪、闘う乳房 〜Pはつらいよ映画日記〜」vol.8
INFORMATION
『水いらずの星』
かつて国内で栄えた造船業が急速に廃れた後の日本。瀬戸内海に面した香川・坂出に逃げ着いた女(河野知美)は、体を売って孤独に生きていた。女には6年前、長崎・佐世保で共に暮らしていた夫(梅田誠弘)のもとから、別の男と駆け落ちした過去があった。ある雨の晩、突然訪ねてきた夫。女のさびれたアパートの部屋で、二人が空白の時間を埋めるかのように語らい、体を重ねるにつれ、次第に時空が歪み出し……。
公式Twitter: @Mizuirazu_movie 
公式Instagram: @mizuirazu_movie
©2022 松田正隆/屋号河野知美映画製作団体
プロデューサー:古山知美
企画・製作:屋号河野知美映画製作団体
制作協力:有限会社スローラーナー/ウッディ株式会社
配給:株式会社フルモテルモ/IhrHERz 株式会社
2023年初冬公開予定
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