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柳亭小痴楽 映画世渡り問答 第二回

Q.生きる意味を教えてくれる映画は?
A.『十五才 学校IV』

今最も勢いのある若手落語家・柳亭小痴楽さん。聞けば、子どもの頃から大の映画好きだったそうです。そんな小痴楽さんが、読者から届いたお悩みに答え、シメに1本の映画を贈る人生相談コラム。心のビールを片手に、ごゆるりとお楽しみください。
落語家
柳亭小痴楽
Kochiraku Ryutei
1988年生まれ、東京都出身。落語家。2005年10月、二代目桂平治(現:桂文治)へ入門し「桂ち太郎」の名で初高座。2008年6月、父・柳亭痴楽の門下に移り「柳亭ち太郎」と改める。2009年9月に痴楽没後、柳亭楽輔門下へ。同年11月、二ツ目に昇進し「三代目柳亭小痴楽」となる。2013年、落語芸術協会所属の二ツ目で構成されるユニット「成金」を昔昔亭A太郎、瀧川鯉八、桂伸三、三遊亭小笑、春風亭昇々、笑福亭羽光、桂宮治、神田松之丞、春風亭柳若、春風亭昇也と共に結成し、落語ブームを牽引。2019年9月、真打への昇進を果たす。
Twitter: @kochiraku
生きる意味って?
初めまして! 落語が好きで、YouTubeで小痴楽さんを知ってファンになりました。今年で28歳になりますが、やりたいことも見つからず、好きな人も出来ず、放浪しながら生きています。生きる意味ってなんですか?
(相談者:キリトさん)

放浪なんて最高な人生じゃねぇか!
でも満足できないなら、
新しく挑戦するのもアリかもね。

皆様、この連載にいっぱいのお便りをありがとうございます! 今回お悩みを取り上げるのはキリトさん! ありがとう! ユーチューブで私を知ってくれたとのことですが、落語の動画かな? それとも他のなんかふざけた動画かな? どちらにしても、是非いつか生で私の落語を楽しんでくれればと思います!
それにしてもキリトさん、28歳でやりたいことも見つからないけど放浪しながら生きているって…最高な人生を送ってんじゃねぇか! んん〜、好きな人は出来るといいねぇ。俺も34歳になるけど好きなことだけやってて、大好きな家族もいて、そんでもって放浪みたいなフラフラした仕事をしながら生きてるからね! けど、“生きる意味って何?”なんてなかなか難しいことを聞くねぇ…あ、これにはとても気持ちの良い答えがあるよ! 以前のコラムで取り上げた、映画『男はつらいよ 寅次郎物語』に出てくる寅さんの言葉「あぁ、生まれてきて良かったな、って思うことか何べんかあるんじゃない。そのために生きてんじゃねぇか?」。
私はこの寅さんの言葉が本当に大好き! 生きる意味なんて、人のためとか家族のためとか、そんな綺麗事じゃなくて、単純なの。なんでもないちょっと楽しかったこと、それが感じられたら良いんだと思う。つまり、そう思えることを探すんじゃなくて、何事にもそう感じられるような人間になれば、それだけで楽しい毎日が過ごせるし、日々違った生きる意味に出合えるんじゃないかなぁと思う…という、これも綺麗事なのかしら(笑)。でも、確かにそう思って生きてます!
せっかく最高に自由な人生を送れているキリトさん。もっともっとよそ見をして良いんじゃないかな。目に入る物、人、景色を楽しめるようになると良いね! そして、もしまだ今の人生に満足できてないのなら、思い切って何か新しいことを始めてみたらどうだろうか? もっと自分の好奇心を掻き立ててイジメ抜いて、ヒリヒリした毎日を送るのも良いと思うよ!
かく言う私は落語家として、ここ数年いろんな落語以外のお仕事をさせていただいている。こういう書き物の仕事もそうだし、お芝居やトーク番組など、まだまだいっぱい初体験がある。その都度、ビビったりヒヨったり、上手くいったり失敗したり、まぁ毎日ヒリヒリしてまさぁねぇ〜! 本業の落語だってそう。決して天狗にはなれない。鼻を伸ばしたくても、同期に人間も芸も凄すぎる人が多すぎて、私の鼻なんて削られている毎日。驕りはないとは自信を持って言えるが、本当に何もできなさすぎて、苦しんでいる。でも、その苦しみやツラさを感じる度に生きてるなぁ!って感じられて、楽しくてしょうがないのよね。
そんな私のずっと先を行くのが、我々噺家の大先輩である74歳にして芸歴55年、伝説のテレビコーナー「突撃!隣の晩ごはん」でお馴染みの桂米助師匠。この師匠、大御所にして、今の時代を考えて2年前からユーチューブを始めた。それだけでなくツイッターやインスタグラムなどのSNSも始め、まるで若者のように、どうしたら再生回数や“いいね”数を上げられるか考えている。意識が高い師匠に比べ、私なんてSNSをやってるだけで全然何も考えていない。
ユーチューブチャンネル「突撃!ヨネスケちゃんねる」には、米助師匠の優しさが見て取れる。なぜかというと、若手をメディアに押し上げようとしているから。まだ世間に知られてない若手が、知名度のある師匠のユーチューブ番組に出ることによって一人でも多くの人に興味を持ってもらえるようにと、あらゆる企画を駆使して若手を紹介している。自分のチャンネルがどうしたらもっと良くなるか。もっと!もっと!と、もがいている、というと失礼だが、今の時代に合う形を模索している師匠を見ていると、このバイタリティはどこから出てくるのか…!と驚きつつも、心から尊敬せずにはいられない。
そんな米助師匠に10年くらい前、仲間と一緒に「師匠、“売れる”ってどんな感じですか?」って聞いたことがある。米助師匠は今でこそメディア出演をセーブしてるけど、若い時からずっとテレビで活躍してきた。そんな師匠が我々の質問に対して放った言葉は、「俺に聞いてんのか? お前らにとっては、俺程度が“売れてる”になるのか? 悪いけど、俺は師匠・桂米丸というスーパースターを見てきて、その側でずっと仕えてきた。だから、“売れる”ってどういうことかちゃんと分かってるよ。忙しさ、知名度、俺の比じゃないくらいの日本国のスーパースターだった。あれを見てたら、自分のことを“売れてる”なんて微塵も思えないよ。お前たちももっと上を見ろ」。
歌丸師匠も亡くなるギリギリまで「まだまだやりたい噺が沢山あるんです」、そう言って稽古をしていた。落語という、この世界。入ったからには、生涯が稽古、そして上を目指す、キリがない世界…。
最近、ひょんなことから仕事でフリースタイルのラップというやつに初めて挑戦した。テレビ朝日系列の『フリースタイルティーチャー』という番組に出させてもらったの。ラップなんてもちろん初めて! 好きでフリースタイルもラップもよく聴いてはいたけど、遊びですらやったことない! DOTAMAさんというラッパーの方が講師として付いてくれて、2週間の猛特訓! 普段、座って喋るだけ。できるかな? 稽古次第かな。そう思って日々特訓したけど、ビートを聴いて、それに合わせて言葉を考えて、声に出す…この3つのうち一つもできなくて、口を開けたまま棒立ちになってしまった。それからも稽古…稽古…稽古…。
出る以上は覚悟を決めて、自分以外の落語家や共演の芸人さん、講師のDOTAMAさん、またラッパー稼業の皆さん、番組のスタッフさん、そして視聴者の皆さん、みんなに失礼にならないようにとだけ。どうにか音に合わせて喋ることはできるようになったのかな…と思えた矢先の本番は…!! これ以上はネタバレになるから言えないけれども…とにかく恥はかくよ!(笑)
かくけど、これで自分の中に新しい何かが生まれるんだと思えば、なんか楽しくてしょうがないよ!

『十五才 学校IV』

『男はつらいよ』以外にも、山田洋次監督の映画には人間が生きる意味を問う作品がいっぱいあるから、沢山観てもらいたい。その中で、特にキリトさんに薦めたいのがこの映画です。15歳の不登校の少年・大介が、生きる意味を探して家を飛び出し、単身ヒッチハイクで屋久島の縄文杉を目指す。その道中で出会った人たちに助けられ、優しさに触れ、学校で教わる勉強よりも大切な、さまざまなことを教わる。最初はただ縄文杉をひと目見たいという単純な好奇心だったのが、自分がいかに小さいか、無力かを大介は考えるようになる。そしてついに、人間という小さなモノが、自然にそびえる縄文杉という絶対的な存在と対峙する。本当に素晴らしい物語だ。ちなみにこの映画は『学校』シリーズの4作目。このシリーズはどの作品も一作完結型で、“生きる”というテーマを通じ、“学び”の素晴らしさを教えてくれるので全部オススメ!

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落語家
柳亭小痴楽
Kochiraku Ryutei
1988年生まれ、東京都出身。落語家。2005年10月、二代目桂平治(現:桂文治)へ入門し「桂ち太郎」の名で初高座。2008年6月、父・柳亭痴楽の門下に移り「柳亭ち太郎」と改める。2009年9月に痴楽没後、柳亭楽輔門下へ。同年11月、二ツ目に昇進し「三代目柳亭小痴楽」となる。2013年、落語芸術協会所属の二ツ目で構成されるユニット「成金」を昔昔亭A太郎、瀧川鯉八、桂伸三、三遊亭小笑、春風亭昇々、笑福亭羽光、桂宮治、神田松之丞、春風亭柳若、春風亭昇也と共に結成し、落語ブームを牽引。2019年9月、真打への昇進を果たす。
Twitter: @kochiraku
FEATURED FILM
監督:山田洋次
原作:松本創
脚本:山田洋次、朝間義隆、平松恵美子
音楽:冨田勲
出演:金井勇太、小林稔侍、赤井英和、丹波哲郎、麻実れい
学校で学ぶ人々の人間模様を描いた、山田洋次監督の『学校』シリーズ第4作。シリーズで初めて舞台を教室の外に移し、不登校の少年が一人旅を通じて成長する姿を追ったロードムービー。横浜郊外に住む中学3年生の大介。学校に行かなくなって半年が経ったある日、ずっと行きたかった九州・屋久島の縄文杉を見に行こうと思い立ち、両親に黙って出発。さまざまな人たちと出会いながら、ヒッチハイクで屋久島を目指す。
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