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ビールの夏がきた!
今年もまた、冷えたビールが美味しい夏がやってきました。
僕たちがまだ子どもだった20世紀の終わりまで、日本人の飲むビールといえば大手メーカーさんが作る数種類のビールしかありませんでした。
旅先のお土産屋さんなどで「地ビール」をちらほら見かけ始めたのが90年代の後半。 1994年4月に酒税法が改正、年間2000キロリットルと決まっていたビール製造免許に必要な最低製造量が、年間60キロリットルにまで引き下げられたことでちいさなビール醸造所が全国にできはじめたのです。
さらにベルギービールをはじめとする海外のビールもどんどん輸入されるようになり、最近は日本でもクラフトビールがすごい盛り上がりをみせています。
ビールを沢山の種類から選べる楽しさ
クラフトビールは、飲んだ人たちが、素直においしいと思えるスタンダードな味わいのものから、「これがビールなの?」と驚くような、フルーツたっぷりドロドロ食感のエキセントリックなものまで、とにかく多種多様なタイプが存在しています。
クラフトビールが好き!という人たちは、特定のビールではなく、ビールというジャンルそのものを楽しんでいるのではないでしょうか。ペンギン酒店の冷蔵庫にも常時30種類くらいの世界各国、日本各地のいろんなビールが並んでいます。
そんなバラエティゆたかなビールたちの中で、今回スポットを当てたいのが、いわゆる昔ながらの日本のビールです。
ひょんなことから夏休みに片田舎の大家族と過ごすことになった、気弱な理系少年の大冒険を描くSF青春アドベンチャー『サマーウォーズ』(2009)では、アメリカから帰ってきた侘助が
「…ったくろくでもねえよ 日本は とにかく蒸し暑いし 相変わらず道は狭えし ゴミみたいに人は多いしさ」
そうぼやいたあとで、おもむろにビンからグラスに注いだビールを飲むと
「ああ~ビールだけはうめえわ」
とつぶやく。
(ちなみにビンには星が描かれていたので、おそらくこれは日本のビールで一番歴史が古いサッポロビールのビンだと思われます。星は北極星です)
蒸し暑い夏、カラカラに乾いた喉に流し込むビール。
「世の中にはいろんなビールがあるけれど、やっぱり日本の生ビールが一番おいしいよ」
居酒屋のカウンターの内側にいると、時たまそんな声が聞こえてきます。
じゃあ日本のビールとはいったいなんなのか。
日本人はなぜ日本のビールがいちばん好きなのか。
すこし考えてみたいと思います。
「日本のビール」を紐解く
そもそもビールは、まず発酵のさせ方によって大きく以下に分類されます。
ラガータイプ、エールタイプ、自然発酵タイプ、です。
この中でもラガータイプは比較的新しく、低温で発酵するビール酵母が発見されたのをきっかけに作られるようになりました。冷蔵設備のなかで、低温でゆっくり発酵することで、エールや自然発酵に比べて香りや味わいも軽くスッキリしたビールができます。
そこからヨーロッパ中で作られ始めたラガービールでしたが、1842年チェコのボヘミア地方にあるピルセンという町の醸造所では、それまで作られていた琥珀色だったラガービールとは異なる、もっと淡い色、黄金色の液体が出来上がりました。
ヨーロッパの水は大半がミネラル分の多い硬水なのですが、ピルセンの水はミネラル分の少ない軟水だったため、ビールの醸造に使う水の違いでこれまでよりも透き通り、きめ細かい泡をもち、口当たりがよく、クリアな苦みのあるラガービールになったのです。
町の名前からピルスナーと名付けられたこのビールのスタイルは瞬く間に世界中に広がりました。そしてドイツから日本に伝わり、日本のおいしい軟水と出会い、蒸し暑い日本の夏にすっきり飲めるという点が日本人に歓迎された結果、今の日本のビールのベースになったのです。
ちなみに世界の全ビール生産量におけるピルスナーの割合は、世界でも70%、日本に限定すると90%といわれています。
映画『サマーウォーズ』では冒頭から、青くて高い空、入道雲、青々とした田んぼなど、日本の夏の風景がひろがりをもって描かれます。映画の中の人たちも、それぞれに夏を感じて、この夏ならではの時間を過ごしています。画面から夏の暑さや湿度を感じるシーンもたくさん描かれています。
夏の夜にこの映画ならではの太陽、青空、大家族の賑わいを感じつつ、自分たちがかつて体験したあの夏の思い出とキンキンに冷えた日本のビールを、カラカラにかわいたのどに流し込むしあわせとともに、みなさんにも感じていただけたらと思います。
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ありがとうございました。
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