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ペンギン酒店のお酒がすすむ「おつまみシネマ」vol.05

ブレンデッドウイスキーを、映画『グリーンブック』で味わう家飲み時間

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ペンギン酒店のお酒がすすむ「おつまみシネマ」
鹿児島の騎射場で、焼酎・日本酒・ワイン・果実酒・ウイスキー・ジン・クラフトビール…など300〜400種類のお酒を楽しむことができる居酒屋「ペンギン酒店」を営む岡田六平さんが、映画を通してお酒との出会いを教えてくれる連載「ペンギン酒店のお酒がすすむ おつまみシネマ」! お酒に合うおつまみを選ぶように、今夜の一本(一杯)となる、お酒と映画の組み合わせを見つけてみませんか?
ペンギン酒店 店主
岡田六平
Roppei Okada
1978年生まれ、香川県出身。居酒屋店主。2019年3月、鹿児島市・騎射場に夫婦で居酒屋『ペンギン酒店』を開店。薩摩焼酎の蔵元や、個性的な酒屋、同業の飲食店と数々のコラボイベントを開催している。
大学卒業後、成城石井、ホットペッパー飲食営業の後、飲食店ではリゴレット、ポンデュガールで働く。
2014年、ソムリエの資格を取得した直後から世界一周の新婚旅行に出発。1年間、妻と2人で41ヶ国を回る。バックパッカーで旅をしながら、ホームステイを繰り返し、地元の料理を食べ、現地の食材で料理を作る。カリフォルニア、アルゼンチン、ウルグアイ、スペイン、フランス、イタリア、ハンガリーではワインの産地を巡り、チリの田舎にあるワイナリーでは一週間住み込みで働いた。
2015年の帰国後、生まれた息子たちは現在4歳と0歳。
日々、家族との時間をたいせつにしながら楽しく飲食店で働ける方法を夫婦ふたりで模索している。

◎ひとくちずつゆっくりと味わうウイスキー
『グリーンブック』

飲まなくたって会えるけど、そういうことじゃないんだよ。

2021年11月3日にサントリーが出した新聞広告の一節です。
誰かといっしょに飲むお酒の美味しさを感じさせてくれるステキな広告でした。

『グリーンブック』という映画の後半にウイスキーが出てくるシーンがあります。第91回アカデミー賞で作品賞を含む3部門を受賞した映画『グリーンブック』はジャマイカ系アメリカ人ミュージシャンのドン・シャーリーと、彼に雇われたイタリア系アメリカ人運転手トニー・リップがまだまだ人種差別が色濃く残るアメリカ南部をコンサートツアーで回るロードムービー。

アメリカ南部コンサートツアーの最終夜、ドンとトニーがバーカウンターではじめて一緒に飲んだウイスキー、カティサークは本当に美味しそうに見えました。

どうしても飲みたくなったので、まずは僕もカティサークを。
グラスに氷を入れて、ウイスキーを注ぎます。
これがウイスキーのオンザロック。まずはひとくち。

ウイスキーは蒸留酒のひとつで、木の樽に入れて熟成させることで色がついて味や香りもまろやかになっていきます。世界各地で作られていますが、スコットランド地方で作られているものをスコッチウイスキーといいます。
スコッチウイスキーにはモルト(大麦)ウイスキーとグレーン(穀物)ウイスキーがあります。一般にモルトウイスキーは風味が強く個性的、グレーンウイスキーの風味は軽く穏やかです。
それぞれ単体でも飲まれていますが、これらを数十種類ブレンドして作られるのがブレンデッドウイスキー。
様々なモルトウイスキーたちからくる個性的な香りや味わいが複雑に絡み合い、それを穏やかなグレーンウイスキーたちがまとめあげて、美しく調和したウイスキーになります。

スコッチウイスキー市場の実に9割を占めているブレンデッドウイスキー。
ちなみに現在の売上第1位はジョニーウォーカー、2位バランタイン、3位シーバスリーガル。どれも長く愛されているウイスキーの名品です。

ここでカティサークをもうひとくち。
少しずつ氷がとけてくるのでウイスキーの味や香りも変化しています。
あまり氷がとけないうちに飲み干してしまうのがよさそうです。

この映画にドンのお気に入りとして出てくるカティサークはスコットランド産ブレンデッドウイスキーのひとつ。ちなみにアメリカではバーボンウイスキーが作られています。
カティサークが発売された当時、スコットランドでは色も味わいも香りも濃厚なウイスキーが定番でした。
そんな時代にあえて色が淡く味わいも香りもライトで飲みやすいウイスキーを作り、さらに自国ではなく禁酒法時代のアメリカに持ち込んだことでカティサークは一気にアメリカで大人気のスコッチウイスキーになりました。

ウイスキーは透明のビンに入ってるのが多いです。色を見せたいからですね。
比べてみるとよくわかります。カティサーク(左)の色の淡さ。
いつの間にか飲み終わってしまいました。
ラベルの話が出たので、おかわりを注ぎたいと思います。
今度は氷を入れずに1:1の常温水割りで。
トゥワイスアップという飲み方だそうです。

ウイスキーの常識を変えて、新しい世界を切り開いたカティサーク。その名前のもとになったのはラベルに描かれている大航海時代に世界最速の帆船として有名になったカティサーク号でした。

ドンは旅の途中、毎晩ひとりでカティサークを飲み続けます。
黒人である自分を見つめる白人たちのまなざし。
白人の運転手を従えて旅をする自分を見つめる黒人たちのまなざし。
クラシック音楽を学びながら道を閉ざされて、新しい音楽の道へ進んだ自分。
結婚はうまくいかず、兄弟とも疎遠になり、同性愛者であることを隠す自分。
ひとりで落ち込んで、寂しさを紛らわせようと毎晩カティサークを1本ずつ飲み干していきます。さすがに飲みすぎですね。

白人社会への挑戦精神を表現したのがカティサークだ。というだけだと単に重たくなってしまいそうですが、この映画には思わず笑ってしまうような魅力的なエピソードもたくさん散りばめられています。
そして映画を通して流れているのは「友情がはぐくまれていく過程」。アメリカ南部に色濃く残る黒人差別のなかで、表向きは一流のミュージシャンとして扱われながら、レストランもトイレも「白人用だから」使わせてもらえない。そんな馬鹿げた常識を変えるための挑戦を続けていくドンと、映画の最初では黒人に対して差別的な態度をとっていたトニーが、ツアーのなかで少しずつ心を通わせていく様子がさまざまなエピソードのなかで描かれていきます。

お。トゥワイスアップだと、ストレートやオンザロックではわからなかった味や香りも感じられます。
これは映画を見ながらじっくりウイスキーを味わうならおすすめの飲み方ですね。
特に最後に長く残る余韻がたまりません。これぞウイスキーという感じです。

ひとつひとつが個性的なモルトウイスキーたちをグレーンウイスキーがまとめあげて、ひとつのブレンデッドウイスキーを作るように、『グリーンブック』はひとつひとつの魅力的なエピソードが二人の友情を中心にまとめあげられてラストに向かってゆっくりと進んでいきます。

そして冒頭に紹介したカティサークを二人で飲むシーンのあとにやってくるのが、間違いなくこの映画が持つ最も魅力的な味わいと香りの部分です。
極上のブレンデッドウイスキーにも負けないような柔らかくあたたかな映画の余韻をラストまで楽しみながら、ウイスキーをひとくちずつゆっくりと味わってもらえたらうれしいです。

これぞ映画という感じですから。

◯映画とカティサークを楽しむ家飲み時間はいかが?◯

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PROFILE
ペンギン酒店 店主
岡田六平
Roppei Okada
1978年生まれ、香川県出身。居酒屋店主。2019年3月、鹿児島市・騎射場に夫婦で居酒屋『ペンギン酒店』を開店。薩摩焼酎の蔵元や、個性的な酒屋、同業の飲食店と数々のコラボイベントを開催している。
大学卒業後、成城石井、ホットペッパー飲食営業の後、飲食店ではリゴレット、ポンデュガールで働く。
2014年、ソムリエの資格を取得した直後から世界一周の新婚旅行に出発。1年間、妻と2人で41ヶ国を回る。バックパッカーで旅をしながら、ホームステイを繰り返し、地元の料理を食べ、現地の食材で料理を作る。カリフォルニア、アルゼンチン、ウルグアイ、スペイン、フランス、イタリア、ハンガリーではワインの産地を巡り、チリの田舎にあるワイナリーでは一週間住み込みで働いた。
2015年の帰国後、生まれた息子たちは現在4歳と0歳。
日々、家族との時間をたいせつにしながら楽しく飲食店で働ける方法を夫婦ふたりで模索している。
FEATURED FILM
監督:ピーター・ファレリー
出演:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニ
1962年、アメリカ。ニューヨークの一流ナイトクラブで用心棒を務めるトニー・リップは、ガサツで無教養だが家族思いのイタリア系男。店の改修で仕事がなくなり、バイトを探していた彼のもとに運転手の仕事が舞い込む。雇い主はカーネギーホールに住む天才黒人ピアニスト、ドクター・シャーリー。黒人差別が色濃く残る南部での演奏ツアーを計画していて、腕っぷしの強い運転手兼ボディガードを求めていた。こうして2人は、黒人が利用できる施設を記した旅行ガイドブック“グリーンブック”を手に、どんな厄介事が待ち受けているか分からない南部へ向けて旅立つのだったが…。
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