みなさま、今年の夏は本当に暑いですが、お元気でしょうか?
僕は、4月くらいからNY、ヨーロッパでの公演があり、ようやくコロナの状況から次のステップへと進もうとしていますが、これまで以上にエネルギーが必要だなと感じています。
そして新しいチャレンジとしては、昨年から描き始めた絵の個展を仙台ではじめたりと、色々と模索しながら活動しております!
今回の娘NiKiとの往復書簡は、今年5月にNYのショウでも自作の詩を読んでくれた娘と僕の大好きな映画『運動靴と赤い金魚』について書いてみました。
娘とこの映画を一緒に観たのですが、後半は涙しながら観ていて、とても感動していたようでした。
今年9月からアメリカのハイスクールが始まる年齢にもなり、新しいチャレンジと旅立ちにワクワクドキドキしているNiKiの今を、このような文章で記録していけるのはとてもありがたいことだなと思います。
ぜひご一読ください!
熊谷和徳
DEAR NiKi
今お仕事で来ているホテルでこの手紙を書いているよ。
今日はいてた来たくつがすごくボロボロなんだけど(笑)一緒に観た『Children of Heaven』(『運動靴と赤い金魚』)を思い出していたよ。お父さんはピカピカのくつよりもたくさんはいてその人のストーリーを感じるようなくつが好きだなあ。いまお父さんがはいてるくつもたくさんの場所にいった思い出を感じるから好きなんだ。
この映画はお父さんがまだ20歳くらいの時にNYUの大学のクラスでMiddle Eastern(中東)のことを勉強していたんだけど、先生が授業中にみせてくれて、それからずっと大好きなんだよ。
ちょうどそのころニューヨークでテロがあって、お父さんはブルックリンのアパートの屋上でひとりでワールドトレードセンターがくずれていくのをみていたんだ。そのテロがあってから中東の人たちのイメージがとても危険な人たちだと思いこんでみんなこわがってしまったんだよ。(ちょうどコロナの時はアジア人がこわがられてしまったね)
それで大学の先生がイランやイラクのような中東の国々にもすてきなことがたくさんあるということを僕たちに伝えるためにこの映画をみせてくれたんだよ。
お父さんがこの映画の中で特に印象にのこっているのは、子供たちが走っている「足音」なんだよね!! 砂や石の道を子供たちが走っている音がなんだか心地がよくて、すごく好きだったよ。
お父さんが子供の時に走っていた道のことを思い出したり、にきちゃんが小さい時に公園を走り回っていたことも思い出すね(帰りはよくだっこしてたけど笑)
今の日本もアメリカも道はだいたいきれいだし、一つのくつをシェアすることなんかはまずないことだけど、あの映画の子供たちは一足のくつを大切にすることからきっと心の中でいろいろなことを感じて、宝物みたいな思い出もきっとつくりだして、物質的に豊かな国ではえられない大切な学びをえることができたんじゃないかなとお父さんは思うんだ。もちろん本当に大変な思いもしているけどね。こどもたちの表情が言葉がすくない分たくさんの感情を物語っていて、それが昔の日本的な、雰囲気にも通じるものがある気がしたよ。
きっと世界中の子供たちはどこに住んでいても感じることや気持ちは、深いところでは、みんな同じようにつながっているのかもしれないね。
そういえばにきちゃんが5月のお父さんのNYでのショウで読んでくれた詩の中に共通する表現がある気がするよ!
Home from school shoes tapping on the pavement.
学校からの帰り道 舗道に鳴り響く足音
The sound of rain Hiiting at the window.
雨の音が わたしの窓をたたく
In the kitchen the sound of chopping onions.
台所では オニオンを切る音がきこえてくる
The street at Night As you hear the Cars pass by
夜の道に 車がとおりすぎる音が きこえてくる
A very big book the pages glide and turn.
大きな本のページが すべるようにめくれていく
In the crib Asleep in steady breaths
おうちで眠りについて リズミカルにきこえる 呼吸の音
DEAR child please close your eyes hear the world and step into the skies
親愛なる子供たちへ どうか目をつぶって 世界を聴いて 空へと飛びたって
(詩:熊谷和 訳:熊谷和徳)
今、お父さんも書いていて音が聴こえてくるようだったよ!
まさにこの映画の中で聴こえてきた音のようににきちゃんの生活の中で大切な音たちだね。
こうやって文章を書いているこの瞬間も世界では争いが絶えずに起きているけど、子供たちの幸せな足音や笑い声がいつも聞こえる世の中であってほしいね。
最後にこの映画の英語のタイトルは『Children of Heaven(天国の子供たち)』だけど人の気持ちを一番に考えたり、大切にできる子供たちは、本当の豊かさを知っているのかもしれないね。
物質的な豊かさよりも心の豊かさこそが本当の宝物なんだとお父さんは信じています。
NiKiちゃんもいよいよこれからHigh schoolで新しい世界に飛びこんでいくけれど、いつでもキラキラと輝いている世界を、NiKiちゃんが創っていく(create)ことをお父さんはいつもいつも願っているよ!!
Much Love Always
お父さんより
kaz.
ps.お返事に書いてあったお父さんが小さい時に大事に感じていたことなんだけど…学校帰りに本当はだめだけどジュースとかアイスとか食べながら帰ったりしたとき幸せを感じてたよ(笑)!
おとうさんへ
素敵なお手紙をありがとう! 映画とにたような思いがこもっていたよ。“Children of Heaven”は子供から見るふしぎな世界をうつした美しい映画だったね!
おとうさんはそういえば、おなじくつをすごくながく履いてるね。新しいくつってなんだかうれしくなるけど、お気に入りのくつをずっと履くのも素敵だよね。ちっちゃい時に好きだったテレビシリーズの“Charlie and Lola”で”I Just Lovec My Red Shiny Shoes”って言うエピソードはあたらしいくつとふるいくつの話だよ。
テロがアメリカで九月十一日、二千一年に起きた時おとうさんは大学生だと思うと、ちょっとふしぎだね。
まえからよくなにをすればちがう文化の人は繋がれるのかを考えてて、やっぱりどんなとこでもあるふつうなことが一番シンパシーを作ると思うんだ!
新しい友達を作ったり、長い一日の後の帰り道とかはぜんぜんちがうところでも感じることはおなじだと思う。だから、どんなにちがいがあっても、そういうふだんのところを見るとちょっと気持ちが変わるかも。
私が書いたポエムは“Children of Heaven”に出てくるような小さい幸せを入れたかったから、おとうさんがくらべてくれてすごいうれしかったよ!
“Children of Heaven”でとくに大好きなのは風景だよ! アリーがおとうさんと自転車で都会に行く眺めが大好き。みちのまんなかをとおる時に上は日差しが木のあいだから出てキラキラしてるの。私も自転車に乗るとおなじキラキラを見てたよ! そういえば、さいきんお外でシャボン玉で遊んでたらアリーとザハラがくつを洗うシーンを思い出したよ。シャボン玉もキラキラしてたよ。こういうシーンがあるからこんななつかしく感じる映画なのかな?
この映画を見てると”The 400 Blows”(『大人は判ってくれない』)を思い出すよ。大人がしらない子供の世界は大人から見たら大したことないかもしれないけど感じることはおなじぐらい大事なんだよね。
よーく考えると、二人にとってはあんなにたいへんな事だったのに、誰にもしらずぜんぶはさってたね。
もしかしたら二人が大人になったら忘れることかもしれないけど、だからこそ大切な経験なんじゃないかな?
おとうさんも今考えるとたいした事ないけど、子供のときはすごい大事に感じたことってあった?
アリとザハラがくつをなくしたことは本当にまじめなもんだいだけど、子供だからよけいたいへんだったね。
おとうさんが言って気づいたけど、“Children of Heaven”は音をとても大切にしてるね。私はとくにアリーがマラソンを走ってるときにほかの音がぜんぶ切れて息だけ聞こえるのがいんしょうてきだよ!
アリーがどんだけザハラのために頑張ってるのかがすごいつたわるね。おとうさんは踊るときは息も大切?
走るシーンがある映画はよく考えるといっぱいあるね!(Run Forest,run!!!)走るのってすごく生きてる感じがして、見てると気持ちがすごくつたわるね。(YouTubeで走るシーンがあつめられてるビデオがあるから送るね。そのビデオから”The 400 Blows”見つけたよ!)
こんかいは、“Children of Heaven”最高な映画だからつい私たちいっぱい書いちゃったね! だけどやっぱりこの映画が特別なのは愛がこもってるからだね。いもうとのために一生懸命走ったり、じぶんのくつを女の子がはいているのに言わなかったりするずっと映画にある優しさが特別だね。私もそういう優しさを持てるといいな。ことしは高校を始めるけど、どんな冒険が始まるか楽しみ! おとうさんもどんな冒険に行くか教えてね!
にきより