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映画の余韻を爪にまとう 第1回

後戻りのできない空の色
『彼女がその名を知らない鳥たち』

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(さりげなく大胆に重ねられた色の配色と、抽象的なモチーフの組み合わせで、10本の爪にひとつの小さな世界を描き出す。そんな、身につけるだけではない“飾れる爪”が人気の爪作家「つめをぬるひと」さんが、映画の物語を、観終わった後の余韻とともにネイルで表現するという新連載がスタート。映画から指先に広がる、もうひとつの物語をお届けします。隔月連載です。)

映画を観て、その余韻で爪を塗る、という連載をさせていただくことになり、最初に選んだ映画は、コロナの自粛期間中に動画配信サイトでたまたま見つけた、蒼井優、阿部サダヲ主演で白石和彌監督作品の『彼女がその名を知らない鳥たち』です。

この映画は共感を誘うというよりも、あえて私たちを共感から引き剥がしていくような印象があるので、それによって飽きることなく最後まで、ある意味爽快に私は観てしまったのですが、そんななかで唯一、共感してしまったシーンがあります。
百貨店の販売員である水島(松坂桃李)が、クレームをつけた十和子(蒼井優)の自宅へ訪問するシーンです。

もう何年も前になりますが、私は百貨店で勤務したことがあり、まさにあのシーンのように、お客様の自宅へお詫びに行ったことが何度かあります。

自分のミスでそうなった場合はもちろん、自分ではない、例えばアルバイトとして働いている人のミスでも、社員である自分がお客様のもとへ直接謝罪に行くのですが、たいていは電話からの自宅訪問という、まさにこの映画のような流れになることがほとんどで、電話でのお客様は、ほぼどの方も激昂されていました。
そんな、むちゃくちゃ怒っている人にこれから会いに行くわけですから、当然こちらも緊張感をもって向かいます。しかし、実際に訪問するとなぜか、ほとんどのお客様が言葉少なに、落ち着いたトーンで出てこられるのです。
少し時間をおいたからなのか、電話の時と同じような状態で玄関先へ出てこられた方は、多分一人もいませんでした。

この映画で水島が十和子の自宅へ訪問した時の、水島の緊張した表情や仕草、そして十和子の、電話の時とは違った様子をみて、そんな昔のことを思い出しました。

この映画は正真正銘のラブストーリーであり、決して百貨店で奮闘する人間の群像劇ではないのですが、観賞後の余韻はなぜかその思い出ばかりが過ぎってしまいました。

初回からだいぶ映画とは逸れたことを書いてしまったので、せめて爪はちゃんと映画の良さを、と思い、一番好きなラストシーンの、もう後戻りのできない絶望とこれまでに受けた愛情が入り混じったような空の色を使って塗ってみました。愛情といっても、溢れんばかりの温かさで満ちているようなものではなく、絶望の外側を痛々しく覆いながら、ほんの少しだけ希望が見え隠れするような愛情だと思い、中指と親指に一つずつ、金色の点を入れています。

●使用ネイル

  • 薄いブルー 「OSAJI アップリフトネイルカラー 12 Sorekara(それから)」
  • 白い細筆 「NAILHOLIC WT080」
  • ラメの入った茶色 「OSAJI アップリフトネイルカラー 15 Doukutsu(洞窟)」
  • ベージュ 「NAILHOLIC BE310」
  • ベージュの上に塗ったマットトップコート 「NAILHOLIC SP011」
  • 紺色の点 「NAILHOLIC BL913」
  • ゴールドの点 「TMメタルカラーネイル ゴールド」
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PROFILE
爪作家
つめをぬるひと
Tsumewonuruhito
爪作家。爪を「体の部位で唯一、手軽に描写・書き換えの出来る表現媒体」と定義し、音楽フェスやイベントで来場者に爪を塗る。
「身につけるためであり身につけるためでない気張らない爪」というコンセプトで
爪にも部屋にも飾れるつけ爪を制作・販売するほか、ライブ&ストリーミングスタジオ「DOMMUNE」の配信内容を爪に描く「今日のDOMMUNE爪」や、コラム連載など、爪を塗っている人らしからぬことを、あくまでも爪でやるということに重きをおいて活動。
FEATURED FILM
彼女がその名を知らない鳥たち [DVD]
監督:白石和彌
出演:蒼井優、阿部サダヲ、松坂桃李、竹内豊
30万部のベストセラーとなっている沼田まほかるの同名小説を、『凶悪』などで高い評価を得た白石和彌監督が映画化!集ったのは蒼井優、阿部サダヲ、松坂桃李、竹野内豊の豪華演技派キャスト陣!蒼井優は、日本アカデミー賞、日刊スポーツ映画賞、報知映画賞、キネマ旬報ベスト・テンなど、賞レースの主演女優賞をほぼ総ナメにした。
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