PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の大切な映画があれば…人と映画の物語

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ヒッチハイクで君に会いに行くよ

大下ヒロトのいつかの君とつながりたい。

ヒッチハイクで君に会いに行くよ

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7月9日深夜2時。前の飲み会が終わり、親友の山際君が今日はうちに泊まるらしいので、2人で家まで帰る。「明日なんかあるの?」「ないよ。」「じゃあ朝まで飲もっか。」と2人で話し、近所の立ち飲みバーに行った。よく考えると、2人でお酒を飲みに行くのは初めてかもしれない。
僕がバーに行ってるなんて昔の自分に「調子乗ってんじゃねえ!」と怒られそうだけど、まあ少しは大人になったんだよ。あと、めっちゃ安いところだし。
1時間くらいでお店を出て、結局はコンビニでお酒を買って家で飲む事にした。
高校時代から仲のいい名古屋にいる山之内君がLINEで連絡をしたらまだ起きていたので、電話した。なんか懐かしくなっちゃって、「名古屋に遊びに行きたいね。」なんて話したら、山之内君が「名古屋来たら飯奢るよ。」と言ったんだ。
酔っ払っている僕らは「じゃあ今すぐ行ってやるよ!」と言い、すぐさまバスを検索する。意外と東京から名古屋までのバスの値段が高いのだ。すると山際くんがこんな事を言い出した。
「ヒッチハイクで行こうよ。」
その一言で僕らのヒッチハイクの旅が始まったのだった。調べると、どうやら用賀インターチェンジがヒッチハイクスポットらしく、名古屋と書かれた画用紙と財布と携帯だけ持って、始発電車で向かった。
2時間くらい経ったのかな。
ヒッチハイクはそんなに簡単じゃなかった。
徐々に太陽が昇って来て、汗が止まらなくなってくる。2人とも口数が減ってきて、山際君なんてちょっと怒っていた。そのころには僕らは完全に酔いから覚めていて、飯を奢られるためだけにヒッチハイクをしている自分たちがバカらしくなってきていた。 そんな中、一台の車がこっちを見てくれている。
2人で車を追いかけて、頭を下げてお願いすると「高速のサービスエリアまでならいいよ。」と乗せてくれた。人生初のヒッチハイクに成功だ。車には30代くらいの男性と女性が乗っていた。清掃員の仕事の出勤中らしい。(出勤中にも関わらず、本当にありがとうございました。)
サービスエリアに着き、もう高速に乗ってしまったんだから後戻りできないこの感じに2人でドキドキしていた。でも、よく考えたら3時間で15キロしか進めてないんだ。一体名古屋に着くのは何時になるんだろう。
そんな事を考えながら歩いていると、目の前に名古屋ナンバーの車を見つけた。中の男性に2人で名古屋と書いてある画用紙を思いっきり広げる。するとその男性は指で僕らを呼び、
「名古屋までいいよ」と言ってくれた。
順調だった。
僕らの事だから、どうせこのままヒッチハイクが成功せずに、夜までこのサービスエリアで彷徨い続けると思っていたし、そういう日記を書くことまで想像していた。
しかし、ここからが予想以上の地獄だった。
ここから名古屋まで3時間半。死ぬほど眠い。朝まで酒を飲んでいたから死ぬほど眠い。もちろん、ヒッチハイクで乗せてもらっているのに、寝るなんて絶対にできない。
1時間くらい経って急に眠気が来て、前にいる山際君の首もカクカクしているのがよくわかる。ついに山際君が諦めたかのように眠り始めた。山際くんの腹が立つところは、目が覚めると、今までずっと起きていたかのように乗せてくれた山田さんと会話を始めるところだ。
僕も正直サービスエリアから名古屋までの記憶が曖昧だ。
ただ地面の段差ごとに車が上下に激しく動くので、頭を天井にぶつけては起きる。その繰り返し。あっという間に名古屋に到着した。
2人で、乗せてくれた山田さんにお礼を言い名古屋の街に飛び出す。
待ち合わせ場所に、山之内君が柄シャツでやって来た。
山際君も柄シャツだったので、柄シャツの大男2人に挟まれながら歩くのは恥ずかしかった。山之内君には、僕らに昼飯をご馳走する約束があったので矢場とんに行って味噌カツを食べる事にした。昼間っから一杯だけビールを飲んで、味噌カツを食べた。
お会計、7700円。流石に山之内君も固まっていた。山際君と2人で財布を出す振りをしたけど、ご馳走してもらった。美味しい味噌カツは高いのだ。そして、僕らの飯を奢られるという目標は終わったのだった。
それにしても、山之内君はすごいと思う。7700円という数字を見て、少しは固まっていたけど、すぐに財布を出し払ってくれた。これは今の僕らには出来ないことだ。高校卒業して、大手企業に就職した山之内君にしか出来ないことなんだ。

そのあと、高校卒業以来会っていなかった友達がたくさん会いに来てくれた。これから何をしようかと考えたけど、何もすることがなくて、結局酒を飲んだ。2年前、高校生だった僕らはどうやって遊んでいたんだろう。全く思い出すことができない。たぶん、誰かの部屋に集まり、なんてことのない会話をするのが楽しかったんだろう。飲み会が終わって、店の前で円になってみんなで話した時、懐かしい感じがした。こうやって僕らは高校時代、「童貞捨てたいね」なんてくだらないことをひたすら話していたんだ。今では童貞は一人もいない。

帰りはバスで東京に帰る事にした。
23時25分。みんな明日朝早いのに、バスが出発するまで山際くんと僕を見送ってくれた。多分寂しかったんだと思う。「もうこの辺で見送りはいい」って言っているのに、最後までぬるぬると付いて来た。

映画「天国の口、終わりの楽園」はフリオとテノッチが一目惚れしたルイサを誘う為に、出まかせで言った”天国の口”という存在するはずもないビーチに3人で向かう話だ。その旅の途中での会話が本当に面白い。まるで高校時代の自分らを見ているかの様だった。今考えると、ヒッチハイクをしようと2人で家を出たのも、フリオとテノッチの様に、無茶をしたかったんだと思う。何にも変わっていない僕らを、何にも変わっていないであろう友達たちに見せたかったんだと思う。僕たちはいつまでこうやって、すぐそこまで来ている青春の終わりを無視して走れるのだろうか。少し不安になった。

深夜3時、サービスエリア。トイレに行って、缶ジュースを買ってベンチに座る。
さっきまでとは違い、静かな夜だった。
3時間前、酔っ払ってみんなで腕に書いた、ONE PIECEの☓印の仲間のマークが懐かしくて、嬉しくて、悲しくて、笑った。

大下ヒロトのいつかの君とつながりたい。 第4回 ヒッチハイクで君に会いに行くよ
大下ヒロトのいつかの君とつながりたい。 第4回 ヒッチハイクで君に会いに行くよ
大下ヒロトのいつかの君とつながりたい。 第4回 ヒッチハイクで君に会いに行くよ
FEATURED FILM
メキシコで大ヒットしたロードムービー。17歳の高校生フリオとテノッチ、夏休みに暇を持て余していたところ、年上の女性と出会う。忘れられないひと夏を過ごしたふたりの少年期の終わりが描かれた青春映画。
監督:アルフォンソ・キュアロン、出演:ガエル・ガルシア・ベルナル, ディエゴ・ルナ, マリベル・ベルドゥ他
PROFILE
大下ヒロト
大下ヒロト
Hiroto Oshita
1998年生まれ、岐阜県出身。オフィス作所属の俳優。2016年に上京し、翌2017年、映画『あみこ』でデビュー。同作が第 68 回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式出品、ぴあフィルム・フェスティバル(PFF)にて観客賞、下北沢映画祭グランプリを受賞するなど話題に。ほか、ドラマ『イノセント・デイズ』(WOWOW)、『平成物語』(CX)をはじめ、映画・TV・ミュージックビデオなどに出演。デビュー前よりInstagramで公表している「大下ヒロトの青春日記」が話題となり、フォロワーは2.1万人を超える。
Instagram:https://www.instagram.com/hiroto_mitsuyo/?hl=ja