PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば

2020年4月の編集部の声

「映画っていいね」を届けるためには?
新人編集者がみつけた、世界の広がる言葉たち

PINTSCOPEでは「映画っていいね」をひとりでも多くの人に体験してほしいという想いのもと、サイトオープンから241本のインタビューやコラムを2年にかけてお届けしてきました。
一人一人にとって、それぞれ異なる魅力を持つ映画。その映画の多面的な魅力を体験してもらうためにはどうすればいいか、編集部では繰り返し話し合いを重ねてきました。それは、様々な方々のインタビューやコラムの中の言葉に発見し、継いでいくことでもありました。
2019年、2名の若者が仲間入りしたPINTSCOPE編集部。「編集部の声 vol.1」では、この1年試行錯誤を繰り返してきた二人が、記事を通して体験した「映画っていいね」をご紹介します。

「ちょっと世界が広がるきっかけ」を体感した、
大切な二つの記事

(大槻菜奈)

PINTSCOPE編集部に入ってから、初めて一つの連載を担当させていただくことになりました。それは、連載コラム「Homecomings 福富優樹のビデオショップ・コーナーズ」です。

編集部員は、日々意見を出し合いながら企画を練ったり編集したりしていますが、その中でずっと自分の意見に自信をもったり、発言したりすることができませんでした。それは、映画が「好き」だけれど、他の編集部員の「好き」には到底及ばないのではないか? 知識も乏しく未熟な自分の視点で、意見を言っていいものだろうか? と不安な気持ちがあったからです。

そんなことを思っている折りに、担当となって初めてとなる福富さんの原稿を受け取りました。そこには「どんな存在も当たり前にいていい」という包み込むような「やさしい気持ち」が溢れていました。

街を歩いていると、時々不意に人の冷たさに触れてしまうことがあります。自分だけが良ければいいというような社会の動向に、不安や非情さを感じてしまうこともあります。でも、福富さんの「愛と優しさ」について書かれた原稿からは、それとは真逆の、思いやりという言葉では少し薄っぺらくも感じてしまうような「温かさ」を感じずにはいられませんでした。「ふたつに分けた、その大きい方をなにげなくあげたくなるような」温かい気持ち。人種や性別、いろんな枠にとらわれない「幸せのカタチ」があって、ひとりひとり違うことが当たり前でいいのだと。

そのようなことを思いながら原稿を読んでいると、ふと1月に掲載した一本のインタビュー記事(宮沢氷魚×今泉力哉監督 インタビュー|描いたのは“家族”でも“同性婚”でもなく、それぞれの「幸せのカタチ」)を思い出しました。宮沢氷魚さんと今泉力哉監督も、「正解」にカタチはなく、そこに辿り着くまで人それぞれ違う方法があっていい、幸せの形も人それぞれだとおっしゃっていました。

私は、このコラムとインタビューを通して、どんな形も否定しない“大きな”、でも本当は“当たり前の”優しさに触れた時、ちょっとだけ世界が違って見えたような気がしたのです。他のだれかと比べたり、人からどう思われるかを気にしすぎてしまったり、そんなことを気にして立ち止まるのではなく、「自分にできることの精一杯で挑もう」と、前を向くことができました。

私が体感した「ちょっと世界が広がるきっかけ」を、PINTSCOPE編集部として読者の皆様にお届けしていきたい。そのためにも、視野を広げて力をつけて、素敵な「人と映画の物語」を伝えられる記事を作っていきたい、と心に刻んだ2020年の始まりでした。

心を動かしていきたい

(鈴木健太)

東京でPINTSCOPE編集部の一員として働くようになり、早1年が経とうとしています。学生時代から映画が好きで、暇があればまずは映画というような生活をしていた自分の念願が叶い、映画に携わる仕事に就くことができました。新社会人1年目、また住み慣れた土地から離れての新たな生活ということも相まって、大げさでなく頭や気持ちが毎日混乱を起こしていたように思います。

この1年、心底この仕事に携われて良かったと思えたことが何度もありました。しかし、それと同じくらい、自分の無知さ・能力の低さを痛感させられるようなことが沢山ありました。そして、いつの間にかそれらに気を取られ、また日々に忙殺され、これまでのように映画と向き合えないようになっていたのです。そのことをぼんやりと感じていた時、ある言葉が不意に、僕の中に染み込んで残り続けました。それは、松田龍平さんが“ひとつのことに固執しない”理由を語った言葉です。(松田龍平インタビュー|相手の中に映る「予想外の自分」をどう受け入れるか

「自分の気持ちが動いた時にちゃんと行動できるような人間でいたい、と思います。それは仕事でも、普段の人付き合いでも、同じですね。」

僕が映画を好きな理由のひとつは、心を動かされるような衝動をもたらしてくれるところです。人の心だけでなく行動までをも動かすことのある映画。その可能性を信じているからこそ、沢山の人に映画の魅力や豊かさを発信したいと、この世界に飛び込んだのだと思います。

「心を動かす」ためには、向き合っているものに対して、こちらが主体的に、正面から向き合わなければいけません。だから、映画と向き合い、心を動かすためには、そこにエネルギーを使う必要があります。しかし、僕は日々のあれこれに気を取られ、一番削減してはいけない映画に対して省エネになっていました。正面から映画と向き合って心を動かすことを、怠っていたのです。

映画の魅力を”伝える“立場にいる自分自身の心が動かないで、周りにその映画の魅力を伝えることができるとは、到底思えません。発信する側になったからこそ、もっと心を動かしていかなければと思うのです。感動することに受け身にならず、主体的に心を動かしていきたい。そして、心が動いた時に、それを仕事に活かせるようにもっと伝え方を磨いていきたい。発信者という立場になった今だからこそ大切にするべき心構えを、松田さんの言葉は、再確認させてくれました。

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