PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば

どうしても語らせてほしい一本「大事な人と観たい、大事な人に届けたい映画」

夢や希望、生きる意味を見失った時、再び立ち上がる力をくれた映画『ライムライト』

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Chaplin Films Copyright © Roy Export S.A.S. All Rights Reserved.
ひとつの映画体験が、人生を動かすことがあります。
「あの時、あの映画を観て、私の人生が動きだした」
そんな自分にとって特別な、そして誰かに語りたい映画体験記。
今回のテーマは、「大事な人と観たい、大事な人に届けたい映画」です。
あなたが今映画を一緒に観たい、届けたい人は誰ですか?

誰しも、生きていれば一度や二度、もう二度と立ち上がれないと思えるほどの辛い経験や、苦い思い出があるでしょう。そんな時、あなたにやさしく寄り添って、あなたを再び人生へと立ち向かわせたきっかけは何だったでしょうか。

人生、山あり谷ありとはよく言ったもので、どういうわけか、悪いときには、悪いことばかりが連鎖するものです。かつて私には、やりがいのある仕事も恋も、叶えたかった夢もすべて失って、自分の居場所をどこにも見つけられなかった暗黒時代がありました。そういう時にはまるで坂道を転げ落ちるように、全てが悪いほうへと向かっていき、もがけばもがくほど、空回りばかりするのでした。

だんだん「自分はこの先、何をやってもだめなのではないか」という自虐的な考えにとらわれるようになり、生きていることが辛く苦しく思えるようになってしまいました。そして、とうとう起き上がる気力もなくなってしまった私は、会話することはおろか、まばたきすることさえ、億劫になってしまったのです。

この世にはもう、自分を必要としてくれる人も、居場所もなく
どうせこの先、生きていても意味はないのだから
こうして目をつぶったまま、二度と目覚めることなく、
明日の朝など、来なければいい…

そんな風に人生を思い詰めていたある日、何気なくつけていたテレビで出会ったのが、チャップリンの映画『ライムライト』でした。

足が動かないことを悲観してガス自殺を図ろうとした主人公、バレリーナのテリーは、たまたま通りがかった落ち目のお笑い芸人カルヴェロ(チャップリン)に、一命をとりとめられます。カルヴェロは、大切な商売道具を質に入れるほど、献身的に彼女の面倒を見、そんな彼のやさしさに触れたテリーは、ふとした瞬間に涙を溢れさせます。「何もかもが空しく、無意味だ」と訴える彼女に、カルヴェロは、こう答えるのです。

「瞬間の命を生きればよろしい。すばらしい瞬間がいくらでもある」

これから先、自分はいったいどうやって生きていけばいいのかと、未来が不安でたまらないとき、「いま、ここ」にある目の前の事象に集中することができたなら…。若かった当時は、今すぐこの苦しみから逃れたい、時が経つのをとても待っていられない、と思っていましたが、大人になった今は、時が傷を癒し、時が用意してくれる答えもあるのだということが、よくわかります。

私たちはとかく、通りすぎた過去や、ありもしない未来を悲観して、あれこれと考えすぎては、自分と戦ってしまい、「いま、ここ」の瞬間を生きることを忘れてしまいます。けれど、「いま、ここ」の瞬間の命を生きることができたなら、「いま」の連続がいずれ、未来に連なっていくわけです。

カルヴェロはテリーに「自分と戦わず、幸福のために戦え」と諭します。すると、「幸福はどこにあるのか」と訊ねるテリーに、カルヴェロは頭を指差しながら、こう答えるのです。

「私が子供の時、父におもちゃを買ってもらえないと不満を言うと、父はこう言った。ここに人間が創りだした最も偉大なおもちゃがあるんだって、ここに幸せの秘密があるんだって。」

幸せは、自分の中にこそあること。そして、「いま」を生きるべく集中すること。そこに人生をよりよく生きるヒントがある。チャップリンからの、そのメッセージは、当時の私の心に深く響き、私を再び立ち上がらせ、一歩踏み出す勇気を与えてくれました。

「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ。」
これは、冷戦化のもと、共産主義と見なされ米国を追放されたチャップリンが、20年ぶりにアメリカの土をふんだ、1972年の第44回アカデミー賞で名誉賞を受賞した壇上で涙ながらに語った言葉です。チャップリンは、オスカー史上最長の5分間にもわたる満場のスタンディングオベーションで出迎えられたのでした。

“Time is the great author. It always writes the perfect ending.”
「時間は偉大なる作家だ。常に完璧なエンディングを書き上げる 。」

この台詞は、チャップリンが最もこだわり、何度もリハーサルを繰り返した部分なのだそうです。満場の拍手はまさに、20年の時が用意した、完璧なエンディングではなかったでしょうか。

人生につまずいた時には、この映画を観て、思い出したい珠玉の名言の数々が、ここには沢山詰まっています。

「ライムライト」とは舞台を照らす照明、名声のこと。チャップリンがその晩年に、人生の光と影を、自身のルーツであるミュージックホールを舞台に、映画という幻影に見事に写しとったこの作品は、きっと、これから先も私の人生を照らす道標となるでしょう。

あの人の心に残るチャップリンを味わう
BACK NUMBER
FEATURED FILM
価格 Blu-ray¥3,500+税
発売元・販売元 株式会社KADOKAWA
Chaplin Films Copyright © Roy Export S.A.S. All Rights Reserved.
PROFILE
清水薫
Kaoru Shimizu
東京都生まれ。小学生の娘がいるワーキングマザー。「PINTSCOPE」立ちあげメンバーの一人。
新卒当時は金融機関に勤務していたが、「人に夢を売る仕事をする」「クリエイティブな人の隣にいたい」と願い、数度の転職の末、ようやく松竹にたどり着く。現在は、DVDを販売する部門でEC関連法人の営業全般を担当し、松竹DVD倶楽部の店長を兼務している。お客様を楽しませることが好きな人が大勢いる、穏やかで家庭的な社風がお気に入り。目下の悩みは、子供が可愛くて子離れできそうにないこと。
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