PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば

どうしても語らせてほしい一本「コタツに入りながら、一年の締めに観たい映画」

幸せになるには、まず「幸せに気づく」こと。こんな2020年を希望にかえて締めくくる『食堂かたつむり』

©2010「食堂かたつむり」フィルムパートナーズ
ひとつの映画体験が、人生を動かすことがあります。
「あの時、あの映画を観て、私の人生が動きだした」 そんな自分にとって特別な、そして誰かに語りたい映画体験記。
今回のテーマは、「コタツに入りながら、一年の締めに観たい映画」です。
本当にいろいろあった2020年。年末ぐらいは、ゆっくりコタツに入りながら、今年を振り返りたいものです。…なんだか、年末という気はしないけれど。新しい一年への希望へつながる一本と、今年を締めくくってみませんか?
今回の語り手
フリーライター・インタビュアー
藤田真奈
Mana Fujita
フリーランスのライター・インタビュアー。大学卒業後、勢いでフリーランスとして独立。ウェブメディアを中心に、インタビューやイベントレポート、小説連載など様々な媒体で執筆、脚本を行っている。小説をエンタメだけでなく情報を伝える手段にするべく、日々奮闘中。

幸せになるには
まず「幸せに気づく」こと。

2020年。あまりにもたくさんのことが押し寄せた1年でした。振り返る余裕もない、というのが正直なところかもしれません。

このまま二度と元の生活には戻れないのではないか、これからもっと状況が悪化していくのではないか、まだまだ思いもよらない事態が襲ってくるのではないか。自他共に認める“タフな人間”の私にだって、そんな不安があります。2020年という一年は、もしかしたら「絶望の年」と表現することもできるのでしょう。しかし、ここに一筋の希望の光を射してくれる素敵な映画があるのです。

映画『食堂かたつむり』(2010)の主人公である倫子は、幼い頃から料理をするのが大好きで、いつか自分の店を持つことを夢に、料理人をめざして仕事をしていました。そして、その仕事場で出会ったインド人と恋に落ちて同棲を始めるのですが、インド人の彼氏は、倫子が今まで貯めてきたお金と、家にあるものを持って姿を消してしまったのです。私なら「返して」と、地獄の果てまで追いかけるところですが(笑)、繊細な倫子は、ショックのあまり心因性失声症となり、声を失ってしまいました。

お金だけでなく、声までも失ってしまった倫子は、生きるために仕方なく、不仲な母親が住む田舎へと帰ることにします。これから夢に向かって頑張ろうというときに、まさかの事態。倫子にとっては、まさに「絶望」だったでしょう。田舎に戻ってもなにもやる気が起きず、ただ時間が流れるのを待っているような、無意味な毎日を送っていました。しかし、都会から離れて日々を過ごす中で、この田舎には色とりどりで新鮮な食材がたくさんあることに気づきます。そして、倫子は自分の状況に絶望するのをやめ、この町で自分のお店を開くことを決めました。前を向くことを決意したのです。そして、一日一組だけのメニューのない「食堂かたつむり」をオープンしました。この料理がいくつもの奇跡を重ね、いつしか、倫子の料理を食べると幸せになる、と囁かれるようになっていきます。

©2010「食堂かたつむり」フィルムパートナーズ

今回、この映画を久しぶりに観終わってすぐは、「よーし、私も倫子みたいに希望を持って頑張るぞ!」と素直には思えませんでした。だって、あくまでフィクションだから。現実の世界はそんなにうまくはいかないんだぞ、って。よっぽど疲れていたのか、そんな風に歪んだ気持ちになってしまいました。しかし、しばらく時間が経つうちに、少しずつ、倫子が自分の周りに目を向けてみたように、「ちょっとした幸せ」に気づくようになったのです。本当にちょっとしたことですよ。空が青くて綺麗だなとか、今日のご飯はうまく炊けたなとか。

これが結構すごくて。ちょっとした幸せなんて案外いろんなところに転がっているんですよね。拾い切れないくらい。これに気づくか気づかないかは、まさに自分次第。私は、ここしばらく見落としていました。周りに目を向けることもなく、自分ばっかり大変なんだ、辛いんだって。そんな人のもとに、幸せもなにもやってきませんよね。幸せだって、幸せを大切にしてくれる人のところへ行きたいはずです。

いろいろあった2020年がもうすぐ終わります。思うようにいかなかったこともたくさんありました。そんな中で『食堂かたつむり』は、幸せは気づかないだけで案外、自分の周りに転がっているんだよ、この先にはきっと希望があるんだよと教えてくれました。コタツに入って、DVDをつけて。あ、お布団があたたかいな、みかんが甘くておいしいな。そんなことも、私にとって“大切にしたい幸せ”なんですよね。

BACK NUMBER
PROFILE
フリーライター・インタビュアー
藤田真奈
Mana Fujita
フリーランスのライター・インタビュアー。大学卒業後、勢いでフリーランスとして独立。ウェブメディアを中心に、インタビューやイベントレポート、小説連載など様々な媒体で執筆、脚本を行っている。小説をエンタメだけでなく情報を伝える手段にするべく、日々奮闘中。
FEATURED FILM
Blu-ray・DVD発売中
販売元:キングレコード
©2010「食堂かたつむり」フィルムパートナーズ
シェアする