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どうしようもない、でも諦めない中年が教えてくれた、情けない自分との別れ方。『俺はまだ本気出してないだけ』

どうしても語らせてほしい一本 『別れ・卒業』

どうしようもない、でも諦めない中年が教えてくれた、情けない自分との別れ方。『俺はまだ本気出してないだけ』

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どうしても語らせてほしい一本 『別れ・卒業』
©青野春秋・小学館/2013「俺はまだ本気出してないだけ」製作委員会

ひとつの映画体験が、人生を動かすことがあります。

「あの時、あの映画を観て、私の人生が動きだした」
そんな自分にとって特別な、そして誰かに語りたい映画体験記。

今回のテーマは「別れ・卒業」です。
リスタートを切りたい、一度整理したい、というあなたの心にぴったりの一本が見つかるかもしれませんよ!

10数年前、僕はなんとなく大学を卒業して、なんとなく会社員になりました。そんな調子だから仕事なんて楽しめるはずもなく、「つまんねーな」とブツブツ文句を言う毎日。

ただ、そんな日々がつまらなくとも生活に慣れてしまえば、会社からは毎月の給料が保証されるし、有休だってある。だから平日は心を無にして仕事をこなし(こなせていたかはわかりませんが)、休日はその鬱憤を晴らすかのように全力で楽しんでいました。そして、その反動から日曜の夜は憂鬱でしかたがなくなるという…。そんな生活にズブズブとハマりながら、気付けば僕は30代に突入していました。

「お前の人生、それでいいの?」。

「どうしようもない、でも諦めない中年が教えてくれた、情けない自分との別れ方『俺はまだ本気出してないだけ』
©青野春秋・小学館/2013「俺はまだ本気出してないだけ」製作委員会

気付かないふりをしていたけど、その問いは僕の心をジワジワと浸食していき、それはいつしか自分が受けとめられないほど大きな苦しみとなっていたようです。

しばらくして、僕は心と体を壊しました。

ちょうどその頃出会ったのが、福田雄一監督の映画『俺はまだ本気出してないだけ』(2013年)です。堤真一さん演じる42歳のバツイチ、子持ちの主人公・大黒シズオは「自分の人生に後悔したくない」「本当の自分を見つける」と言い放ち会社を辞めたものの、その後はテレビゲームに興じるなど堕落した生活を送っていました。そんなある日、シズオは突然「漫画家になる!」と宣言。家族から反対されたり、世間から冷ややかな目で見られたり。しかし、そんな逆風をもろともせず、シズオは夢に向かって突っ走ります。

福田監督が繰り出す笑いの刺客に、僕は何度も翻弄されながら、時折シズオが放つまるで人生を達観したような言葉——「40(歳)そこらで大人ぶってちゃいかんよ」「将来なんて考えたら今をちゃんと生きれないぞ」「ピンチはチャンスだって言葉があるじゃない」—— が心に突き刺さり、もがきながらも未来を切り開こうとするシズオの姿がまぶしくて、羨ましくて…でも一方で、そんな勇気もない自分の不甲斐なさを感じている自分もいて…。笑っているのに悔し涙が出る映画体験はこれが初めてでした。

「どうしようもない、でも諦めない中年が教えてくれた、情けない自分との別れ方『俺はまだ本気出してないだけ』
©青野春秋・小学館/2013「俺はまだ本気出してないだけ」製作委員会

それから数年後、僕はまるでシズオの人生をなぞるかのように、後先を考えず会社を辞め、誰にも聞かれていないのに「半年間は好きなことしかやらない」とまわりに宣言。ひたすら好きな場所に行き、好きな人に会い、好きな時間を過ごしました。時には将来の不安から、ひたすら動画サイトを見て現実逃避する日もあったけど、そんな生活を続ける中で、ひょんなことからライターの面白さと出会い、今はこうして文章を書く職業に就いています。

先日、ふとこの映画を観返すと当時グラグラと揺さぶられた感情はどこへやら、終始シズオの言動を素直にゲラゲラと笑っている自分に気付きました。その時、もしかしたらシズオは、「自分にはできるはずがない」と“なんとなく”を続けてきた人生との別れ方を僕に教えてくれたのかもしれないと、ふと感じました。

ありがとうシズオ。

俺はもう本気出してます。

「どうしようもない、でも諦めない中年が教えてくれた、情けない自分との別れ方『俺はまだ本気出してないだけ』
©青野春秋・小学館/2013「俺はまだ本気出してないだけ」製作委員会
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© 青野春秋・小学館/2013「俺はまだ本気出してないだけ」製作委員会
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PROFILE
ライター
船寄洋之
hiroyuki funayose
鳥取県生まれ。アパレルメーカー、出版社勤務を経て、現在は主にライターや編集の仕事に携わる。その傍ら展示企画や出張コーヒーも行う。
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