目次
心を温めたいときに観る映画
恋愛に悩んだとき「その人といる自分が好きかどうかで決めるといい」という言葉をもらったことがあります。それは身を削るような恋なのか、それとも自分の新しい一面にも気づかせてくれるような愛なのか。私は後者を選ぶ人生を送りたいですし、私の大切な人もそうであってほしいと願って止みません。
私は心が疲れているな、心を温めたいなと感じるとき、自暴自棄になってしまうことが 多いように感じます。
たとえば、体に良くないとわかっているのに、ジャンクフードばかり食べてしまったり、自分のことを大切に想ってくれない人たちの場所に自ら足を運んでしまったり…。
自分のことを大切にできない、むしろ自分から自分を傷つけに行ってしまっているような感覚があるのです。そんなとき、決まって観るのが『パパが遺した物語』(2015)という映画。失いかけていた自分への愛、他人からの愛情に気づかせてくれる、私にとってとても大切な一本です。
物語は、家族3人がドライブ中、交通事故にあうところから始まります。父親のジェイクと娘のケイティはなんとか命を取り留めましたが、妻はかえらぬ人に。ケガから退院したジェイクは、ケイティの前では明るく振る舞うのですが、実は事故の後遺症を患い、発作に苦しむようになっていました。
その後、ケイティの子ども時代と25年後の姿を交互に描きながら物語は進み、ジェイクの身に何があったのかが、徐々に明らかになっていきます。
25年後のケイティは「誰でもいいから」と、共に夜を過ごす相手を探しに街へ出る日々を送るようになっていました。一時的な性的関係を結ぶことで心の隙間を埋めようとしているのです。
親を亡くした経験によって染みついてしまった、愛する人が目の前から消えてしまう恐怖。誰かを愛することも、誰かに愛されることにも怯えているケイティの姿に胸を締め付けられます。
しかし、とある一曲が自暴自棄になったケイティを救うことになります。彼女が夜の相手を探しに出かけたバーでその曲が流れた瞬間、過去の大切な思い出たちが溢れ出すのです。それは、父親ジェイクとその曲に合わせて歌って踊って、たくさん笑った幼少期の記憶。私が必ず号泣してしまう場面です…。その後、ケイティはそのバーを後にし、自分のことを心から愛してくれた元恋人の元に帰っていくのです。
私はこの映画を観てから、自分を大切にできる道を選択することが少し上手になった気がしています。昔は仕事に対しても人間関係に対しても、自分の自信のなさを埋めてくれるような刺激を求めていました。でも、それは一見きらびやかに見えて、実は心の隙間をますます大きくしてしまうことに気づいたのです。
自分を大切にするチャンスは日常にたくさん転がっています。少しでも体を気遣った食事をすることもそうですし、自分のためだけの時間をとって映画を観ることも小さなご自愛かもしれません。
何か意思決定をするときに、愛ある方を選ぶ。その積み重ねがより素敵な人生に導いてくれると信じています。
- 介護の中、夢を捨てずにいられたのは、あいつの「ただいま」が希望に向かわせてくれたから。映画『大脱走』
- 眠れない夜に私を救ってくれたのは、70年前の名作ミュージカル映画だった 『雨に唄えば』
- ままならない家族への感情……それでも確かに愛してる。『シング・ストリート 未来へのうた』で描く私の夢
- 嘘の中の紛れもない「リアル」。 いつまでも彼の踊る姿を観たいと思った 『リトル・ダンサー』
- 「どんな自分も愛してあげよう」 肩の力を抜くことができた『HOMESTAY(ホームステイ)』
- 映画って、こんなに自由でいいんだ。そんなことを気づかせてくれた『はなればなれに』
- 日々の選択を、愛ある方へ。自分を大切にするための映画『パパが遺した物語』
- 大丈夫。あなたが私を忘れても、私があなたを思い出すから 『43年後のアイ・ラブ・ユー』
- どうしたら色気を醸し出せるのか!?核心を隠すことで見えてくる、エロティックな世界『江戸川乱歩の陰獣』
- 幸せになるには、まず「幸せに気づく」こと。こんな2020年を希望にかえて締めくくる『食堂かたつむり』
- 仕事も休めばいい、恋もなんとだってなる。人生の舵は、自分が握っているのだ『嗤う分身』
- 号泣したワンシーンが、思いを届けるきっかけになる『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』
- 「私の人生、まんざらでもないのかも」見過ごしていた“当たり前”に魔法がかかる『顔たち、ところどころ』
- 東京という大きな「生き物」が、 人生の岐路に立つ人を静かにつつんでくれる『珈琲時光』
- 狂気を殺さない!愛してみる。生きていく『逆噴射家族』
- 動き出さない夜を積み重ねて、たどり着く場所がきっとある『ナイト・オン・ザ・プラネット』
- 時代の寵児バンクシーの喜怒哀楽や煩悶を追体験!?観賞後スカッとするかしないかは自分次第… 『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』
- 「帰省」を疑似体験。離れて暮らす父親の素っ気なくも確かな愛情『息子』
- 90分でパリの100年を駆け抜ける!物足りない“現在”を笑って肯定しよう!!『ミッドナイト・イン・パリ』
- 映画の物語よりも、そこに流れる「時間」に没入する 『ビフォア・サンセット』
- 慣れない「新しい生活」のなかでも、人生に思いきり「イエス!」と言おう!『イエスマン “YES”は人生のパスワード』
- 夢や希望、生きる意味を見失った時、再び立ち上がる力をくれた映画『ライムライト』
- 人の目ばかり気にする日々にさようなら。ありのままの自分が歩む、第二の人生。 『キッズ・リターン』
- 人に嫌われるのが怖くて、自分を隠してしまうことがあるけれど。素直になりたい『トランスアメリカ』
- 成功は、競争に勝つことではない。 「今を楽しむ」ことを、教えてくれた映画『きっと、うまくいく』
- それぞれの場所で頑張る人たちへ 「声をあげよう」と伝えたい。その声が、社会を変える力につながるから『わたしは、ダニエル・ブレイク』
- 僕が笑うのは、君を守るため。 笑顔はお守りになることを知った映画『君を忘れない』
- 心に留めておきたい、母との時間 『それでも恋するバルセロナ』
- 「今振り返っても、社会人生活で一番辛い日々でした」あのときの僕に“楽園”の見つけ方を教えてくれた映画『ザ・ビーチ』
- “今すぐ”でなくていい。 “いつか”「ここじゃないどこか」へ行くときのために。 『ゴーストワールド』
- 極上のお酒を求めて街歩き。まだ知らなかった魅惑の世界へ導いてくれた『夜は短し歩けよ乙女』
- マイナスの感情を含む挑戦のその先には、良い事が待っている。『舟を編む』
- 不安になるたび、傷つくたび 逃げ込んだ映画の中のパリ。 『猫が行方不明』
- いつもすぐにはうまくいかない。 自信がないときに寄り添ってくれる“甘酸っぱい母の味”『リトル・フォレスト冬・春』
- 大人になって新しい自分を知る。 だから挑戦はやめられない 『魔女の宅急便』
- ティーンエイジャーだった「あの頃」を呼び覚ます、ユーミン『冬の終わり』と映画『つぐみ』
- 振られ方に正解はあるのか!? 憧れの男から学ぶ、「かっこ悪くない」振られ方
- どうしようもない、でも諦めない中年が教えてくれた、情けない自分との別れ方。『俺はまだ本気出してないだけ』
- 母娘の葛藤を通して、あの頃を生き直させてくれた映画『レディ・バード』