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どうしても語らせてほしい一本 『新生活・挑戦』

マイナスの感情を含む挑戦のその先には、良い事が待っている。『舟を編む』

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©2013「舟を編む」製作委員会
ひとつの映画体験が、人生を動かすことがあります。
「あの時、あの映画を観て、私の人生が動きだした」
そんな自分にとって特別な、そして誰かに語りたい映画体験記。
今回のテーマは「新たな生活・挑戦」です。
新たな挑戦に向かうあなたの心に、ぴったりの一本が見つかるかもしれませんよ!

「今任されている仕事は自分のやりたい事ではない。」
「自分が希望していない部署に配属されてしまった。」
理想の職場で働いていたり、やりたい事を実現できていたりする人でも、それまでの過程の中で、このように思った経験がある人は多いのではないでしょうか。もちろん、私も何度もあります。

そんな経験から10年程経った時に、『舟を編む』(2013年)を観ました。新しい環境で新しい挑戦を始める主人公達が(中には挑戦「しなければならない」という人も)、そういう状況に直面した時に見せる、「戸惑い」「怒り」「不安」「少しの期待」などが入り混じっている表情は、自分が似たような経験をした時の感情を思い起こさせます。

主人公の馬締光也(松田龍平)は大学院で言語学を専攻したのち、出版社の営業として働いていましたが、声が小さく消極的で、コミュニケーションが苦手なため、なかなか書店への営業が上手くいきません。そんな中、国語辞典「大渡海」の刊行プロジェクトを進めるために、辞書編集部の後継者を探していた定年間近の荒木(小林薫)は、馬締の噂と経歴を知り、辞書編集部へ引き抜き抜くことに。もちろん、突然の辞令に馬締は戸惑います。

©2013「舟を編む」製作委員会

「辞令」は会社によって、社員の異動希望をできる限り叶えるところもあるそうですが、私が昔働いていたひとつの会社はいわゆる「寝耳に水」の、ただ単に社員を駒のように動かしているとしか思えない辞令を出す事が多く、私もどうしても納得できない辞令を言い渡されたことが。その時、私は会社を辞めるという選択を取りました。

だから、馬締の状況を私は最初「得意な分野に取り組める部署に異動できて、良かったじゃん」と思いましたが、馬締本人の立場や彼の性格を鑑みると、興味のある事とはいえ、また新たに一から人間関係を築きながら新しい仕事をするというのは、かなりチャレンジングな事でしょう。
不安そうな馬締ですが、下宿先の大家であるタケ(渡辺美佐子)に投げかけられる、さりげないけれど背中を押してくれるような言葉に徐々に勇気付けられ、また言葉への愛情と執着心も手伝って、辞書編集者としての才能が開花していきます。

©2013「舟を編む」製作委員会

また、馬締の同僚である辞書編集部の西岡(オダギリジョー)や女性ファッション誌の編集部から辞書編集部に異動して来た編集者の岸辺(黒木華)も、それぞれ新しい場所で新しい挑戦をしなければならない状況に立たされるのですが、馬締の仕事に取り組む姿勢や情熱に感化され、次第に自分の能力を発揮できるようになり、「大渡海」刊行に大きく貢献していくことになります。

私は、「辞令」により会社を辞めるという選択肢をとったこともありましたが、『舟を編む』で「大渡海」に挑戦する編集者のように、逆境に立たされたことが、新しいことに挑戦する足がかりになったことがあります。配属された部署に不満(先輩からのイジメや勤務形態、膨大な残業など)がありすぎたことが着火剤となり、希望部署への異動が有利になる資格勉強に燃え、のちに資格取得と異動が叶い、やりたかった仕事に取り組めたという出来事があったということも思い出したのです。

自分に与えられた場所が最初は「違う」と思っても、実は思いがけず自分に「ピッタリ」の場所になることもあれば、次の居場所に進むためのきっかけになることもあるんだと気付きました。というか、そのうちのどちらかしかないのかも…? つまり、「挑戦する」という行動は、たとえその起点がマイナスの感情を含むものだったとしても、馬締のように思いもよらないところまで自分を連れていってくれる可能性を秘めているものなのかもしれません。

©2013「舟を編む」製作委員会
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FEATURED FILM
舟を編む
監督:石井裕也『川の底からこんにちは』『あぜ道のダンディ』『ハラがコレなんで』
原作:三浦しをん「舟を編む」(光文社刊)
脚本:渡辺謙作
音楽:渡邊崇
出演者:松田龍平/宮﨑あおい/オダギリジョー/黒木華/渡辺美佐子/池脇千鶴/鶴見辰吾/伊佐山ひろ子/八千草薫/小林薫/加藤剛
©2013「舟を編む」製作委員会
出版社・玄武書房に勤める馬締光也(まじめ みつや)は、営業部で変わり者として持て余されていたが、言葉に対する天才的なセンスを見出され、辞書編集部に異動になる。新しい辞書「大渡海(だいとかい)」――見出し語は24万語。完成まで15年。編集方針は「今を生きる辞書」。個性派ぞろいの辞書編集部の中で、馬締は辞書編纂(へんさん)の世界に没頭する。

そんなある日、出会った運命の女性。しかし言葉のプロでありながら、馬締は彼女に気持ちを伝えるにふさわしい言葉がみつからない。問題が山積みの辞書編集部。果たして「大渡海」は完成するのか?馬締の思いは伝わるのだろうか?
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