PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば

どうしても語らせてほしい一本「忘れられない言葉のある映画」

「どんな自分も愛してあげよう」
肩の力を抜くことができた『HOMESTAY(ホームステイ)』

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ひとつの映画体験が、人生を動かすことがあります。
「あの時、あの映画を観て、私の人生が動きだした」 そんな自分にとって特別な、そして誰かに語りたい映画体験記。
今回のテーマは、「忘れられない言葉のある映画」です。
今回の語り手
ライター
菜本かな
Kana Namoto
メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。
Twitter: @kanawink

コロナ禍で停滞した日々を過ごしていると、人生こんな感じでいいのかな…と考え込んでしまうことがあります。このまま、ずっと変わらぬ毎日を繰り返すのだろうか?と不安になったり、仕事やプライベートを充実させている友人のSNSを見て、置いて行かれているような気持ちになったり。今までなら「パーっと飲みにでも行こうよ!」と友人に声をかけて、ストレス発散することもできましたが、なかなかそうもいかないご時世。とくに私はフリーランスで活動しているため、会社勤めの人より孤独を感じやすいんですよね…。

「あの頃は、よかった」なんて言う大人には、絶対になりたくないと思っていたのに、いつの間にかそんな大人になってしまっていて、友人とLINEをしては「学生時代は楽しかったよね」と言い合う日々。かつて思い浮かべていた25歳の自分は、もっと輝いていたはずなのに!とモヤモヤ。そんな時に出逢ったのが、森絵都さんの名作小説『カラフル』を実写映画化した『HOMESTAY(ホームステイ)』(2022)です。

今作は、管理人と名乗る謎の人物に選ばれた魂・シロ(長尾謙杜)が、同時期に死んだ高校生・小林真の身体にホームステイをするように命じられ、100日間というリミットのなかで、小林真の死因を突き止めていくという物語。あらすじだけを見るとファンタジー要素を強く感じます。

「なるほど、なるほど…現実を忘れてリフレッシュするために、観てみよう!」と再生ボタンを押しました。しかし、その予想を裏切り、本作はとことん現実に向き合った作品だったのです。「実は、登場人物全員いい奴だった!」なんてこともないし、それぞれに深い闇を抱えていて、焦ったり、迷ったり、周囲と比べて自分を卑下したり…この映画には、葛藤を抱きながら精一杯生きようとしている人たちがいました。

「人生は所詮、ただのホームステイなんだから」

真の死因を突き止めることができたシロが、最後につぶやいた言葉です。この言葉を聞いて、私は肩の力が抜けていくのを感じました。

自分の人生だと思うから、どうしても力んでしまう。「もっと〜しなきゃ」に縛られることになる。「たった一度きりの人生後悔しないように生きないと!」と言う人たちに影響を受けて、知らず知らずのうちに自分に負荷をかけていたのかもしれません。でも、この身体にホームステイしているだけなんだ…と考えると、少しラクになりました。

死にたいと思っていた真が、「もう少しだけ、この人生を愛してみようと思う。しぶとく生きていけばいい」と前を向いた時、私も勇気づけられました。いまは冴えない日々だとしても、しぶとく生きていけば、いつか幸せだと思える日が来るかもしれない。いや、きっと来るはず! この映画は、“どんな自分もまるっと愛してあげよう”と思うきっかけを私に与えてくれたのです。人生という名のホームステイに疲れた時は、またこの映画を観返したいと思います。この作品には、世界をカラフルに変える力が潜んでいるから。

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INFORMATION
『HOMESTAY(ホームステイ)』
出演:長尾謙杜(なにわ男子) / 山田杏奈、八木莉可子 / 望月歩 / 眞島秀和、渋川清彦、阿川佐和子、篠井英介、渡辺大知 / 濱田岳 / 石田ひかり、佐々木蔵之介ほか

原作:森絵都「カラフル」(文春文庫刊)
監督:瀬田なつき
脚本:菅野友恵、大浦光太
クリエイティブプロデューサー:三木孝浩

Amazon Prime Videoで配信中
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「管理人」名乗る謎の人物に選ばれた魂「シロ」は同時期に死んだ高校生「小林真」の体にホームステイし、管理人に課された転生の条件に挑むことになる。条件とは、「小林真が死んだ原因を突き止める」というもの。100日間のリミットの中で、ちょっと違和感のある家族との時間、優しい幼馴染や学校での憧れの先輩との日々などつかの間の「真」として過ごす「シロ」。だがその死の真相には小さな光と大きな闇が交錯していた。
PROFILE
ライター
菜本かな
Kana Namoto
メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。
Twitter: @kanawink
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