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映画の言葉『ギルバート・グレイプ』ベッキーのセリフより

「“大きい”なんて言葉は 空には小さすぎるわ 空を表すにはもっと大きな言葉を」

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映画の中の何気ない台詞が、
あなたにとっての特別な“言葉”となり、
世界を広げ、人生をちょっと豊かにしてくれるかもしれない。
そんな、映画の中の言葉を紹介します。

“大きい”なんて言葉は
空には小さすぎるわ
空を表すには
もっと大きな言葉を

By ベッキー

『ギルバート・グレイプ』より

自分にとって本当に大切なものは、自分で理解しているつもり。でも、周囲の声や余裕のない毎日の中で、だんだん輪郭がぼやけてしまうことがあります。自分の行動や考えに自信が持てなくなってしまった時、あなたはどうやってそれを確かめますか?

映画『ギルバート・グレイプ』の主人公・ギルバート(ジョニー・デップ)は、アイオワ州の田舎町に建つ一軒家で、夫を亡くしたショックで過食症になった母・ボニー(ダーレン・ケイツ)と弟のアーニー(レオナルド・ディカプリオ)、姉・エイミー(ローラ・ハリントン)、妹・エレン(メアリー・ケイト・シェルハート)とともに、暮らす青年です。一家の大黒柱のような存在として家族の世話に追われ、衰退する田舎町の片隅で悶々とした日々を過ごしています。

自分に向き合う余裕もないギルバートは、ある日、トレーラーでアメリカ全土を旅しているベッキー(ジュリエット・ルイス)に出会います。周囲の目や家族にとらわれず自由に生きるベッキーは、「外見の美しさなんてどうでもいい。何をするかが大事」とギルバートに伝えます。そして、「ゆっくり変わっていく様子が素敵」と夕焼けを見て心を震わせるのです。空って大好きとつぶやいた彼女に合わせて、ギルバートも空を「とても大きい」と表現しますが、ベッキーはこう返します。

「“大きい”なんて言葉は 空には小さすぎるわ 空を表すにはもっと大きな言葉を」

ギルバートにとって「この街の夕焼け」は、代わり映えしない“いつもの風景”だったことでしょう。ですが、表現のされ方によって、一緒に見る人によって、感じ方が大きく変わるという事実に驚いたのではないでしょうか。彼女と過ごす時間は、ギルバートにとって自分を見つめる時間になり、一人で抱えていた心のしがらみを少しずつ打ち明けられるようになっていくのです。

心の平穏を守るために、自分の感じたことを「言わない」、自分の感情を「表に出さない」という選択肢が必要な時もあるでしょう。しかし、あまりにも心の中に閉じ込めてばかりいると、本当は何を思っているのか、何を大事だと思っているのかわからなくなり、人生の道筋を見失ってしまうことにもなりかねません。周りの声や社会の風潮に押し流され、自分の大切なものを見失いそうになった時は、大切な人と、自分の気持ちや本音についてじっくりと分かち合う時間を作るのがいいかもしれませんね。

大切な人と、美しいものを見ながら「今、何がしたいのか」語り合ってみてはいかがでしょうか。

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原作・脚本:ピーター・ヘッジズ
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