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映画を観た日のアレコレ No.49

演劇作家
藤田貴大の映画日記
2021年9月15日

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なかなか思うように外に出かけられない今、どんな風に1日を過ごしていますか? 映画を観ていますか?
何を食べ、何を思い、どんな映画を観たのか。 誰かの“映画を観た一日”を覗いてみたら、どんな風景が見えるでしょう? 日常の中に溶け込む、映画のある風景を映し出す連載「映画を観た日のアレコレ」。
49回目は、演劇作家 藤田貴大さんの映画日記です。
日記の持ち主
演劇作家
藤田貴大
Takahiro Fujita
「マームとジプシー」主宰、演劇作家。1985年生まれ、北海道出身。2007年マームとジプシーを旗揚げ。象徴するシーンのリフレインを別の角度から見せる映画的手法が特徴。さまざまな分野の作家との共作を積極的に行う。2011年、三連作「かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。」で第56回岸田國士戯曲賞を受賞。今日マチ子の漫画を舞台化した「cocoon」で2016年第23回読売演劇大賞優秀演出家賞受賞。エッセイや小説、共作漫画の発表など活動は多岐に渡る。2020年には初小説集『季節を告げる毳毳は夜が知った毛毛毛毛』(河出書房新社)を上梓。

2021年9月15日

今日もお疲れさまでした、ということで0時が回ったところで、コンビニへ向かう。DVDが入った棚から3枚、取り出しておいた。M.ナイト・シャマランの『アンブレイカブル』、『スプリット』、『ミスター・ガラス』である。何度も観ているこれらを今夜は朝にかけてあらためて観ていこうと思う。

コンビニで買ったのは缶ビール、そして缶チューハイ。『アンブレイカブル』が公開されたのは2000年だから、あれから20年とすこし経ったのかあ、と唸りながら。再生ボタンを押す。ひと口目のビールというのはなんて美味しいのだろうと、いつものように驚く。

物語はゆるやかに進行していく。ブルース・ウィリス演じるデヴィッドが、人と違う自分の"身体"に時間をかけて気づいていく意識の流れそのものを観ているようだなあ、と前回観たときには抱かなかったことを思う。そして当たり前のことかもしれないが、ずいぶん時代は移ろいここまで流れ着いたのだなあ、と。画面のなかで描かれている悪というのが、現在だとぜんぜん違って目に映る。

映画はいいなあ、と思う。そのままでいてくれるから。変わったのは、ぼくと時代だけなのだ。

もう2時半を回っている、まずい、朝になってしまう。ということで、2枚目。『スプリット』をプレーヤーへ。もう缶は4本空いていた。なぜだろう、今夜はまだまだ観れるし、飲めてしまう。

うーん、何度観てもこのジェームズ・マカヴォイ、すごいな。すばらしい。これは公開が2017年だから、ここにいたるまでX-MENのプロフェッサーXを3作も演じて、そしてケヴィン・ウェンデル・クラムというこんな難解な役にキャスティングされるという流れ自体がすばらしすぎる。アニャ・テイラー=ジョイ演じるケイシー・クックもあらためて観てもやっぱり異様な存在感を放っている。このあとに、あの『クイーンズ・ギャンビット』だし、この人はこの先、期待しかないな。ほんとうに。

しかし俳優さんって、作品と作品をこうして行き来できるから、作品単体の物語りとは別の物語りのうえを生きているようで、羨ましいなあ。作家や監督は、自分の作品や現場のなかでしか生きることができないからなあ。

もうすっかり、窓より外は白んでいて、部屋のなかは朝日でぼんやりと眩しい。飲み干した空き缶は山積みになっている。しかし、まだ外へ出るには早い時間。最後に『ミスター・ガラス』いってみようか、ということで。

もちろん、ずっと待ち侘びていました。『アンブレイカブル』のあのラストシーンからどれだけ待ったことか。サミュエル・L・ジャクソン演じるイライジャ・プライスの不敵な表情が脳裏に張りついて離れなかったんです。と、何度観返しても、観始めるとき、興奮する。

サミュエル・L・ジャクソンは『アンブレイカブル』のあと、ここにいたるまで、あのMCUシリーズにてS.H.I.E.L.D.のニック・フューリーを演じてきたわけだし、『ミスター・ガラス』の公開は2019年、つまり『アベンジャーズ/エンドゲーム』の公開と同じ年である。思い出して震えるくらい、あの年は熱かった。彼の眼差しにはいつも裏があり、そして社会や世界の仕組み、からくりを見透かしているようだ。

『ミスター・ガラス』は何度観ても、ぼくはどうしてか泣けてしまう。最後の決戦の場だとされていたタワーへ行くまえに決戦が始まっちゃったところではかならず爆笑してしまうが、最後にはどうしてか。

現在は“知ることができる”。正しいとおもうこと、そして悪だとおもうことも、我々は“知ることができる”のだ。

すっかりもう、朝というか午前中で。社会は、世界は今日も動いている。酔い覚ましに、アイスコーヒーを飲み干した。

あ、こないだ久しぶりに足を運んだ映画館で観たM.ナイト・シャマランの『OLD』を、まだすこし酒に酔っている頭のなかで反芻している。あそこで描かれていたビーチはいったいなんだったんだろうと考えている。

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PROFILE
演劇作家
藤田貴大
Takahiro Fujita
「マームとジプシー」主宰、演劇作家。1985年生まれ、北海道出身。2007年マームとジプシーを旗揚げ。象徴するシーンのリフレインを別の角度から見せる映画的手法が特徴。さまざまな分野の作家との共作を積極的に行う。2011年、三連作「かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。」で第56回岸田國士戯曲賞を受賞。今日マチ子の漫画を舞台化した「cocoon」で2016年第23回読売演劇大賞優秀演出家賞受賞。エッセイや小説、共作漫画の発表など活動は多岐に渡る。2020年には初小説集『季節を告げる毳毳は夜が知った毛毛毛毛』(河出書房新社)を上梓。
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