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映画を観た日のアレコレ No.33

絵本作家
石黒亜矢子の映画日記
2021年1月7日

映画を観た日のアレコレ

なかなか思うように外に出かけられない今、どんな風に1日を過ごしていますか? 映画を観ていますか?

何を食べ、何を思い、どんな映画を観たのか。
誰かの“映画を観た一日”を覗いてみたら、どんな風景が見えるでしょう?
日常の中に溶け込む、映画のある風景を映し出す連載「映画を観た日のアレコレ」。

33回目は、絵本作家 石黒亜矢子さんの映画日記です。

日記の持ち主
絵本作家
石黒亜矢子
Ayako Ishiguro
1973年生まれ。絵描き。
主に創造の生き物、妖怪,化け猫などを描く。
絵本、装丁画、挿絵などの仕事をしながら、個展開催や企画展参加などで活動中。
猫と爬虫類の世話、部屋で映画を観る事が幸せ。
個人販売店「月光蔵」: https://gekko.katalok.ooo/ja
Instagram: @ishiguroayako

2021年1月7日

毎朝午前6時に起床。
爬虫類ケージのバスキングライトのスイッチを入れ、早起きの小さな恐竜たちの可愛い顔をマジマジと眺める。
『ジュラシック・パーク』が大好きだ。
恐竜映画の傑作中の傑作だと思う。初めて映画館で観た時には、あの壮大な音楽と、本当にそこで生きているような恐竜たちの映像に鳥肌がたち、感動と羨ましさでボロボロ泣いたものだ。劇中に登場する尻尾に特徴のあるアンキロサウルスが、うちにいるトゲオアガマにほんのちょっと似ている。

次に、猫のトイレ掃除と餌やり。家族の朝食の支度。上の子と家人の昼の弁当作り。洗濯物干し。部屋の片付け。爬虫類の餌やり。
午前8時。子供たちを学校に送り出して、ようやく腰を下ろす。ここまでで結構クタクタになる。『ミセス・ダウト』に来てもらいたい。ロビン・ウィリアムズ、大好きだった。亡くなったときはとても悲しかった。

午前9時から10時の間に、仕事場のある実家に向かう。徒歩8分程度の距離。
実家に到着。居間で母と談笑しつつ両親の飼猫を弄り倒す。去年もらってきたばかりの雄の子猫だ。食い意地が張っていて可愛い。猫の脳味噌は20gしかないとどこかで聞いた事があるが、『こねこ』に登場する猫たちの演技力はすごかった。猫ってこんなにできる子なの! と驚いたものだ。特に主人公に一番懐いている猫の芸当と賢さは、群を抜いていた。あれは雌猫であろう。

午前11時。インスタントコーヒーを片手にようやく仕事部屋に向かう。机の真正面にはiPad miniというミニミニシアターを設置している。滑って倒れないように、iPadの角二つを練り消しで固定している。そのミニシアターの横には『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』のDVDが飾ってある。この映画は、だいぶ前にアートディレクターで友人の大島依提亜さん(ちなみに「依提亜」がうまく漢字変換できず、毎回一度、依頼、提訴、亜細亜と打って頭文字だけとっている)に教えてもらっていたのだが、グズグズと観ておらず忘れていた。
そんなある日、Netflixの「あなたにおすすめの映画」で紹介されていて「あれ? これ依提亜さんが前にオススメしてたなあ」と、なんとなく観たらめちゃくちゃ面白かった代物だ。今年中にオマージュ画を描きたい。

机に向かうとすぐにNetflixを立ち上げて、本日の仕事のお供の映画を選ぶ。お供になる映画には条件がある。日本語吹き替え版のやつ、何回か観てるやつ、特に夢中にならなくても良さそうなやつ。絵を描く作業をしながら観るので、画面から目を離すことが多い為だ。映画に対してとても失礼だが、そんな片手間な楽しみ方もできる映画って偉大だと思う。

今日の仕事のお供はエディ・マーフィの『星の王子ニューヨークへ行く』だ。好きすぎて繰り返し観ている。会話と挿入曲だけでもどの場面か想像がつくので、好きなシーンの音がきたら画面に目を向ける。好きな登場人物は、アキーム王子の幼なじみで側近のセミと、リサの恋人で整髪料会社のドラ息子・ダリル。二人とも、それぞれにクセが強いんじゃ。今年、続編が配信されるということで、とてもとても楽しみにしている。

また仕事中とは別に、昔から私はお気にいりの映画を何回も観る。新しい映画を次々と知るのも楽しいのだが、よく知っている大好きな映画は精神安定剤になる。好きな定番映画を挙げるとなると、あれもこれもと浮かんできてキリがないが、一つ挙げるとすれば、去年シリーズ最終章を迎えた『イップ・マン』シリーズ。香港に実在した功夫(カンフー)家イップ・マンをモデルにした功夫映画だ。詠春拳えいしゅんけん (※1)は、一見地味な拳法だが、イップ・マン役のドニー・イェンの詠春拳が最高にかっこいいのだ。インスタもフォローしちゃってる。そういや、劇中でイップ・マンが練習に使っていた木人椿ジークンドー(※2)がコストコに売っていたが、売れたのかな。

※1:中国広東省で創始された武術の一種。

※2:人に見立てた、詠春拳の訓練道具。

石黒亜矢子の映画日記

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PROFILE
絵本作家
石黒亜矢子
Ayako Ishiguro
1973年生まれ。絵描き。
主に創造の生き物、妖怪,化け猫などを描く。
絵本、装丁画、挿絵などの仕事をしながら、個展開催や企画展参加などで活動中。
猫と爬虫類の世話、部屋で映画を観る事が幸せ。
個人販売店「月光蔵」: https://gekko.katalok.ooo/ja
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