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映画を観た日のアレコレ No.53

ジャルジャル
福徳秀介の映画日記
2021年11月3日

映画を観た日のアレコレ
なかなか思うように外に出かけられない今、どんな風に1日を過ごしていますか? 映画を観ていますか?
何を食べ、何を思い、どんな映画を観たのか。 誰かの“映画を観た一日”を覗いてみたら、どんな風景が見えるでしょう? 日常の中に溶け込む、映画のある風景を映し出す連載「映画を観た日のアレコレ」。
53回目は、お笑い芸人 ジャルジャル 福徳秀介さんの映画日記です。
日記の持ち主
お笑い芸人
福徳秀介
Shusuke Fukutoku
1983年10月5日生まれ、兵庫県出身。2003 年にお笑いコンビジャルジャルを結成。07年「NHK 新人演芸大賞演芸部門」大賞、13年「ABC お笑いグランプリ」優勝、20年「TBSキングオブコント」チャンピオンなど。作家としては、20年に初の長編小説『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』を発売。21年には映画『半径1メートルの君へ~上を向いて歩こう~』で脚本家デビュー。
Youtube「ジャルジャルタワー」に毎日ネタを投稿中。

2021年11月3日

夕方、雨がやむとすぐに虹が出た。
虹を見ると、誰かに教えたくなる。
そんな感覚で、いい映画を観ると、誰かに教えたくなる。

1998年10月24日、土曜日の朝。
高校受験を控えていた中3の僕は、朝起きてすぐ、食卓についた。
すると母が開口一番

「昨日の金曜ロードショー、シュウスケが好きそうな映画やってたから録画しといたよ。勉強の合間にでも見とき」

と言った。

僕は映画について、母と語り合ったことはなかった。
そもそも当時の僕には映画の好みなんてものはなかった。
だから母が考える「シュウスケが好きそうな映画」がとても気になった。
都合よく、この日は学校が休み。とはいえ、受験生。
一日中、勉強に励んだ。

夜9時。
途切れながらも続いていた集中力は、ついに枯渇した。
中3ながら、母の思いやりをぞんざいに扱ってはいけないと、小さな使命感にも駆られていた僕は、すぐに録画してくれた映画を観始めた。

──現在38才の僕は、この映画を今までに80回以上は観ている。

初めてもらったアルバイトの給料で、この映画のVHSテープを買った。

初めてもらったお笑い芸人のギャラで、この映画のDVDを買った。

「一番好きな映画はなに?」という、センスを問われる厄介な質問に、僕はこの映画を即答している。
質問してきた側はたいてい、「意外。なんで?」と聞いてくる。それに対して僕はスラスラと答え、相手は耳をすまして聞いている。
この映画を、一番好きな映画、にあげる人は、
例えるならば、

靴下の柄をチラ見せするファッションには手を出さない男性のような、

瓶に入った新品のジャムを開け、キレイな平らな表面に、スプーンをもぐらせるとき、小声で「お邪魔します」と言う女性のような、

恋人に「花火大会に浴衣着ていこうよ」と懇願され、イタズラ心で、甚平を着て行き、「え!? これ浴衣じゃないの?」とおどける男性のような、またそのとき笑ってくれる女性のような、

そんなセンスを持った人たちに違いない。
ハイセンスではなく、柔らかいセンスを持った人たち。

そこまでも連想させる映画なのだ。

母が映画を録画してくれたのは、あとにも先にもこの映画だけだった。
不思議に思い、母に訊いたことがあった。

「オレが中3のとき、なんでこの映画、録画してくれたん?」
「そんなん知らん。覚えてへんわ」

とのこと。
でも僕は覚えている。「シュウスケが好きそうな映画」と言われた感覚を。

だから今でも、いい映画と出会ったとき、
「これ面白いから観てみて」ではなく、
「○○が好きそうな映画見つけた」と言って勧めるようにしている。

不思議と、そっちの方が観てくれる気がする。

ということで、
こんなコラムを最後まで読むマニアックな人なら、
僕が中3のときに衝撃を受けた映画ではなく、
日本で2019年に公開された映画『バーニング 劇場版』が好きそうなので、そちらをオススメします。

ジャルジャル福徳秀介の映画日記
BACK NUMBER
INFORMATION
『サンチョー』
キャスト:後藤淳平(ジャルジャル) 、福徳秀介(ジャルジャル)
作:ジャルジャル(後藤淳平、福徳秀介)
監督:倉本美津留
構成:藤井直樹 川上潤也 企画構成:本多アシタ
音楽:窪田渡
ポスター写真:大金康平
プロデューサー:真砂陣
制作協力:株式会社ニンポップ 株式会社レゾナージュ
制作・配給:吉本興業

『サンチョー』11月19日(金)より全国順次ロードショー
©︎2021 「THANC YOU ─JARUJARU TOWER 2021─」 吉本興業
高校一年生の安田(福徳)は、ある日登山部の顧問(後藤)に呼び出される。三年の先輩たちが引退してたった一人の部活動となってしまった登山部を廃部にするため、退部届を出してくれという相談だった。顧問との山登りが学校生活で唯一の楽しみだった安田は失意の底に。その様子を、入学してから一人も友達ができずにいた生徒(後藤)が見ていた───。

一方、公園では駆け出しの漫才師(後藤、福徳)が、芸への向き合い方を巡って解散の危機に瀕していた。また同じころ別の場所では、若手俳優(福徳)が、自分の名字を変えるために女性にアプローチを繰り返していた。

オリジナルのカット技法を極めた美容師(福徳)、先輩に屈託なくいたずらをしかけようとする後輩(後藤)、家主に鉢合わせてしまう泥棒(後藤)、マジシャンの卵(後藤)、公演に人生をかける劇団の座長(後藤)……それぞれの場所でそれぞれ必死に生きる奴ら。ときに苦く、ときにおかしく、人生は進んでいく。山を愛する以外になにもなかった少年たちの人生は、果たしてどんな方向に転がりはじめるのか。
PROFILE
お笑い芸人
福徳秀介
Shusuke Fukutoku
1983年10月5日生まれ、兵庫県出身。2003 年にお笑いコンビジャルジャルを結成。07年「NHK 新人演芸大賞演芸部門」大賞、13年「ABC お笑いグランプリ」優勝、20年「TBSキングオブコント」チャンピオンなど。作家としては、20年に初の長編小説『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』を発売。21年には映画『半径1メートルの君へ~上を向いて歩こう~』で脚本家デビュー。
Youtube「ジャルジャルタワー」に毎日ネタを投稿中。
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