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映画を観た日のアレコレ No.77

俳優
岡本玲の映画日記
2023年2月1日

映画を観た日のアレコレ
なかなか思うように外に出かけられなかった時を経て、今どんな風に1日を過ごしていますか? 映画を観ていますか?
何を食べ、何を思い、どんな映画を観たのか。 誰かの“映画を観た一日”を覗いてみたら、どんな風景が見えるでしょう? 日常の中に溶け込む、映画のある風景を映し出す連載「映画を観た日のアレコレ」。
77回目は、俳優 岡本玲さんの映画日記です。
日記の持ち主
俳優
岡本玲
Rei Okamoto
1991年生まれ、和歌山県出身。
2003年、「第7回ニコラモデルオーディション」グランプリを獲得し、モデルデビュー。
現在はドラマ・映画・舞台と確かな演技力で活躍中。主な出演作はNHK連続テレビ小説「純と愛」「わろてんか」「わたし旦那をシェアしてた」や映画「弥生、三月-君を愛した30年-」舞台「熱帯樹」「森 フォレ」「ロビー・ヒーロー」「レオポルトシュタット」など。
4/1から出演舞台「ブレイキング・ザ・コード」(シアタートラム)が上演予定。

2023年2月1日

朝十時。
夜明けとともにスタートした今日の撮影、私の出番はこれで終了。
さて、何をしよう。ここどこだっけ? あぁ、六本木か。
映画でも観ようかな、渋谷で十二時くらいから上映する気になる作品があったはずだ。
昨日寝る前に調べたもの。

それにしても快晴だ。
冬の晴れた日は空気が澄んでいて気持ちがいい。
しかもひと仕事終えた後だからなおさら。
この仕事は始発じゃ間に合わないくらい早朝の集合もあるけれど、終わるのも早いことが多々ある。早い時は通勤ラッシュと帰路への電車がかち合うことも。

険しい顔で足早にすれ違っていく人達を横目に、無事に今日の出番を終えた達成感で頬がゆるむ。少しの優越感。それと同時になんだか、そう、自分で気づきたくないもやっとした感情も顔を出す。罪悪感、いや、劣等感、言葉にすると全部違う気がするけれど、社会に馴染んでいない違和感、寂しさみたいなものというべきか。

あぁ、面倒臭い、自分が。
「わーい! 今日の仕事終わりだー! やったー!」
でいいじゃないか、まったく。
あぁ〜、面倒臭い、本当に、何もかも。

おっと、普段隠している面倒臭がりのたちが頭の中を支配してきたぞ。
もう今日は家で愛猫たちと過ごそう。
美味しいコーヒー淹れて、家で映画を観るんだ。
そうしよう。

十二時半。
帰りにスーパーで購入したおいなりさんを手に、家のDVD棚の前に座る。
さて、何を観ようか。
「…うなぎ、うなぎが食べたい、うなぎが食べたい…」
スーパーで見たうなぎが頭から離れない。
余談だが、年明けからうなぎが食べたくて仕方ない。
(日記なんて余談の塊でしかないか。)
「うなぎ、、、『うなぎ』って映画があったなぁ。あ、うなぎじゃないけど、カウンターで日本酒飲んでるいい映画があったなぁ。うなぎじゃなくてなんだっけ、、、岩下志麻さんがすごく綺麗な、、、秋刀魚だ! 『秋刀魚の味』だ。小津作品。大学の授業で沢山観せられたなぁ。レポートとか書いたなぁ。DVDあったはず。」
おかしい。探しても探しても見つからない。誰かに貸したかなぁ。
となれば、同じ年代で女優さんが魅力的なものを。
『あゝ野麦峠』にしよう。
大竹しのぶさんの天真爛漫さったらもう。
…おかしい。ないぞ。数年前に買ったはず。誰に貸したっけ?
じゃあ、なんだ、何にしよう。
女優さんが魅力的で好きな作品…
『JUNO/ジュノ』のエリオット・ペイジか、『川の底からこんにちは』の満島ひかりさんか、
『アクトレス〜女たちの舞台〜』のクリステン・スチュワート(ジュリエット・ビノシュもクロエ・グレース・モレッツももちろん素敵)、
いや、やはり『オープニング・ナイト』のジーナ・ローランズ。
『ブルーバレンタイン』のミシェル・ウィリアムズも最高、大好き。

でもやっぱり邦画にしない?
『永い言い訳』の深津絵里さん!
あれ、『永い言い訳』のDVDもない。
映画館で観て大好きになってDVD発売めっちゃ楽しみにしてすぐ買ったやつ!
いろんな特典ついててわくわくしながら開いたあのDVD。
何故だ、誰だ、誰に貸した、、、何故、人に貸した私、、、!?

配信にもあるんだよ、でもまた違うのよ、
DVDをデッキに入れる時の胸の高まり。
たまについてる特典のメイキングを観た時の特別感。
画面にかじりついて何か得られるものがないかと、
訳もわからず出た涙とあの心のざわざわ感。
青春。

大人しくサブスクで楽しもう。
あ、『秋刀魚の味』がNetflix にあるではないか。すごい。

もはやコーヒーじゃないね。
日本酒ちびちびやりながら小津作品に癒されよう。
大学の時レポートなんて書いたかな。
もう忘れちゃったな。

「DVD 貸したら最後 戻らない」

BACK NUMBER
INFORMATION
『茶飲友達』
出演:岡本玲
岬ミレホ、瀧マキ、長島悠子、百元夏繪、クイン加藤、海江田眞弓、楠部知子、海沼未羽、中山求一郎、アサヌマ理紗、鈴木武、佐野弘樹、光永聖、中村莉久、牧亮佑
渡辺哲
監督・脚本:外山文治
プロデューサー:市橋浩治 外山文治
共同プロデューサー:宇津井武紀
配給・宣伝:EACHTIME
制作:ENBUゼミナール

2023年2月4日(土)渋谷ユーロスペースほか全国順次公開中
公式サイト: http://teafriend.jp/
公式Twitter: @teafriend2021
©️2022茶飲友達フィルムパートナーズ
妻に先立たれ孤独に暮らす男、時岡茂雄(渡辺哲)がある日ふと目にしたのは、新聞の三行広告に小さく書かれた「茶飲友達、募集」の文字。その正体は、高齢者専門の売春クラブ「茶飲友達(ティー・フレンド)」だった。運営するのは、代表の佐々木マナ(岡本玲)とごく普通の若者たち。彼らは65歳以上の「ティー・ガールズ」と名付けられたコールガールたちに仕事を斡旋し、ホテルへの送迎と集金を繰り返すビジネスを行なっていた。マナはともに働くティー・ガールズや若者たちを “ファミリー”と呼び、それぞれ孤独や寂しさを抱えて生きる彼らにとって大事な存在となっていた。
ある日、一本の電話が鳴る。
それは高齢者施設に住む老人から「茶飲友達が欲しい」という救いを求める連絡であったー。
PROFILE
俳優
岡本玲
Rei Okamoto
1991年生まれ、和歌山県出身。
2003年、「第7回ニコラモデルオーディション」グランプリを獲得し、モデルデビュー。
現在はドラマ・映画・舞台と確かな演技力で活躍中。主な出演作はNHK連続テレビ小説「純と愛」「わろてんか」「わたし旦那をシェアしてた」や映画「弥生、三月-君を愛した30年-」舞台「熱帯樹」「森 フォレ」「ロビー・ヒーロー」「レオポルトシュタット」など。
4/1から出演舞台「ブレイキング・ザ・コード」(シアタートラム)が上演予定。
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