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映画を観た日のアレコレ No.71

料理人
山本千織の映画日記
2022年7月30日

映画を観た日のアレコレ
なかなか思うように外に出かけられなかった時を経て、今どんな風に1日を過ごしていますか? 映画を観ていますか?
何を食べ、何を思い、どんな映画を観たのか。 誰かの“映画を観た一日”を覗いてみたら、どんな風景が見えるでしょう? 日常の中に溶け込む、映画のある風景を映し出す連載「映画を観た日のアレコレ」。
71回目は、料理人 山本千織さんの映画日記です。
日記の持ち主
料理人
山本千織
Chiori Yamamoto
2011年に代々木上原で「chioben(チオベン)」を開業。撮影現場や映画、舞台のバックヤードのお弁当、ケータリング、雑誌や広告等幅広く活躍。近著は『チオベンの作りおき弁当』(PHP研究所)。
Instagram: @chiobenfc

2022年7月30日

明日で大好きな7月が終わる。
北国で育ったのもあり、暑さをありがたく思うとこがある。特に冷房が効いた屋内から外に出た時のむわってくる感じが大好きだ。

休日。
朝一番で『わたしは最悪。』を観に行く。
今週は『ベイビー・ブローカー』も観に行ったので新宿の映画館漬け。

私は、一生懸命で自虐なのに迷っていなく、どこか「受け入れている」人が好きだ。
自分もそうなりたいと思っているし、そういうものに惹かれるし泣くし笑える。
『ベイビー・ブローカー』はひねくれてたり恨んでいたりもするけど、それを受け入れ何かを強く望んでいる人たちが出ている。利益目的で赤ちゃんの引き取り手を探す旅の途中、早々と登場人物みんなが、思惑はあれど「良い人に引き取ってもらいたい」と、赤ちゃんの幸せを望んでることがわかる。それが観ているこちら側の“救い”にもなる。後半はずっと泣きっぱなしだった。

かたや休日の一番に観に行った『わたしは最悪。』の主人公は迷いまくり。同じく街を疾走する迷ってる女『フランシス・ハ』と違うのは自虐を受け入れないことなのかなと思いながら、映画館の階段を上り陽が照りつける新宿の街へ出た。

歩行者天国では沖縄の衣装を纏った人たちが、太鼓を打ち鳴らしチームを組んで踊っている。
若い子も多く迫力があって清々しい。背景に見える「PCR検査無料」の看板で「疫病退散」と歌ってるように見えてしまう。無事を思う。

小田急線で下北沢へ行き、買い出しを済ませアトリエへ。
明るい時間からの休日に、ひとりでする仕込みは嫌いじゃ無い。
ずっと映画やドラマの配信をかけっぱなしにする。集中し台詞を追いながら観ることはできないので、一度観た邦画やシリーズもののドラマやアニメを選ぶことが多い。
それでも手が止まって、気がつけば1時間何も仕込みが進んでいなかったということはざらにある。

夏に滑り込ませたい気持ちで『サマーフィルムにのって』と『子供はわかってあげない』を選ぶ。
どちらも大好きな映画で夏が舞台。特に『サマーフィルムにのって』は昨年劇場で観て大好きだ! と思った映画。
夏、タイムトラベルもの、時代劇、映研、あだ名が「ハダシ、ビート板、ブルーハワイ」って、、、。若い頃ミニシアターで働いていた自分にとってクラっとくる既視感だ。内容のてんこ盛り感を裏切らない主役ふたりの疾走感ある演技に、やっぱり手が止まって仕事が進んでいない。あっというまに終わり『子供はわかってあげない』を観出す。
花火大会やキャンプへさほど興味もなく、行きたいとも思っていない自分に「夏のやるべきこと」をクリアしている感じだなと自嘲する。

やっぱり日が暮れてしまった。
明日は完成披露試写会用の弁当を楽屋に入れる仕事がある。進んでいない仕込みを見て「がんばろ」と思う。

山本千織の映画日記

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PROFILE
料理人
山本千織
Chiori Yamamoto
2011年に代々木上原で「chioben(チオベン)」を開業。撮影現場や映画、舞台のバックヤードのお弁当、ケータリング、雑誌や広告等幅広く活躍。近著は『チオベンの作りおき弁当』(PHP研究所)。
Instagram: @chiobenfc
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