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映画を観た日のアレコレ No.36

トリプルファイヤー
吉田靖直の映画日記
2021年2月27日

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なかなか思うように外に出かけられない今、どんな風に1日を過ごしていますか? 映画を観ていますか?
何を食べ、何を思い、どんな映画を観たのか。
誰かの“映画を観た一日”を覗いてみたら、どんな風景が見えるでしょう?
日常の中に溶け込む、映画のある風景を映し出す連載「映画を観た日のアレコレ」。
36回目は、トリプルファイヤー 吉田靖直さんの映画日記です。
日記の持ち主
ミュージシャン
吉田靖直
Yasunao Yoshida
バンド「トリプルファイヤー」のボーカル。1987年4月9日生まれ、香川県出身。音楽活動のほか、映画やドラマ、舞台、大喜利イベントなどにも出演。また雑誌や各種WEBサイトで執筆活動を行っている。

2021年2月27日

「若いミュージシャンには、映画をどの程度観ているのかをまず聞く。あまり映画を観ていない場合、この先が期待できないなと少しがっかりする。映画は映像、音楽、物語などあらゆる表現を用いた総合芸術であり、そこにアンテナを張っていない時点で音楽に対しても向上心や感受性が欠けているように思う。」

スタジオに置かれていたフリーペーパーの中にあった、とある著名新人発掘担当音楽プロデューサーの言葉を10年以上たった今もたまに思い出す。

私は映画を多く観ていない。マニアックな作品はもちろん、誰もが観ているような有名な作品もあまり観たことがない。例をあげれば『となりのトトロ』『ショーシャンクの空に』『ターミネーター』『パラサイト 半地下の家族』など。

映画に詳しい人になろうと思い立ち、TSUTAYAで名作のビデオを5~6本まとめて借りたことも一度や二度ではないが、ほとんどは観ないまま返却してしまった。集中力が足りないのか、映画を観ている2時間余りをかなり長く感じてしまう。DVDのパッケージを見て、「今から137分これに集中しないといけないのか……」などと考えだすと気が重い。

これから映画を観始めても詳しい人には追いつけない。しかし映画はきっと素晴らしいものなのだろうから、観ないよりも観た方がいいに決まっている。私の好きなミュージシャンや作家なども多くは映画をめちゃくちゃ観ている。「俺、映画逆に観ない人なんで」と開き直りたくなる変なプライドを捨て、謙虚に一つ一つ映画を観ていきたい。

コラムの執筆依頼をいただいたこの機会に乗じ、過去に何度もレンタルしたにもかかわらず一度も観ていない大作のうちの一つ、『マトリックス』を観ようと決めた。『マトリックス』が公開された1999年、私は小学5年生か6年生だった。その頃ざっくり聞いた情報では、現実だと思って生きていた世界が実は機械に見せられていた夢だった、という話らしい。似たような妄想を当時頻繁にしていた私は強く心惹かれた。それなのにまさか観ないまま30代を迎えるとは思わなかった。

天気がよく2月にしては暖かい土曜日。昼前に起き、何をするでもなくボーッとしていたら、突然今日が『マトリックス』を観るべき日だ、と直感した。その時、友人の佐藤さんから「2時からジム行かない?」と連絡が来る。私は数年前から佐藤さんと一緒に格闘技のジムに通っている。これまで何度も筋トレに挫折してきた私でも、佐藤さんが誘ってくれるおかげで週2~3のペースで続けることができているのだ。運動をすると頭が冴え、文章もすんなりと書ける気がする。とりあえずジムに行ってから映画を観て、感想を書こうと思った。

トレーニングを終え、高田馬場に戻ってくると午後5時になっていた。心地よい疲れと達成感の中で、なんとなくまっすぐ家に帰りたくなかった。大して打ちたくもなかったが、駅近くのパチンコ屋に入って「P真・北斗無双3」を打つ。パチンコというのは大して打ちたくもない時の方が得てしてよく当たるものだ。お金をおろし、一回確変を引くまで打とうと思った。
気づくと当たりを一度も引けないまま午後9時半になっていた。私は痛手となる額のお金を失った。それに後半はコラムのネタにするためにわざと負けているような気もしてきた。

自己嫌悪に苛まれながら家に着きコタツに入って間も無く、強い睡魔に襲われる。なぜパチンコを打つとこんなに眠たくなるのだろう。しかし寝るわけにはいかない。今日は『マトリックス』を観る日だから。

『マトリックス』はAmazonプライムでは無料配信されておらず、300円を払ってレンタルした。30分ほど観たところでやはり眠くなり、一時停止をしたまま就寝。 目覚めると午前4時だった。そのまま視聴を再開したが、睡眠時間が足りずまた30分ほど進んだところで就寝。午前11時に再び起き、飲み物やお菓子なども用意してやっと最後まで観ることができた。

2021年に『マトリックス』の感想を求めている人など存在しないかもしれないが一応言っておくと、かなり面白い映画だった。ただ、小6の時に観ていたらもっと衝撃を受けるくらい楽しめた気がする。そこが少し残念だ。学生時代に「水槽の中の脳」のような思考実験の本を読んだため、「現実の不確実性」的な話に少し耐性がついてしまっていた。

聞くところによると『マトリックス リローデッド』などの続編も名作として名高いようだが、今はまだ観る気にならない。次は、観ていないせいで何度も話の輪に入れなかった『ジョーカー』を観よう。今はもう誰も『ジョーカー』の話はしていないが、私は一から始めなくてはならないのだ。

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PROFILE
ミュージシャン
吉田靖直
Yasunao Yoshida
バンド「トリプルファイヤー」のボーカル。1987年4月9日生まれ、香川県出身。音楽活動のほか、映画やドラマ、舞台、大喜利イベントなどにも出演。また雑誌や各種WEBサイトで執筆活動を行っている。
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