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映画を観た日のアレコレ No.68

俳優
祐真キキの映画日記
2022年6月26日

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映画を観た日のアレコレ
なかなか思うように外に出かけられなかった時を経て、今どんな風に1日を過ごしていますか? 映画を観ていますか?
何を食べ、何を思い、どんな映画を観たのか。 誰かの“映画を観た一日”を覗いてみたら、どんな風景が見えるでしょう? 日常の中に溶け込む、映画のある風景を映し出す連載「映画を観た日のアレコレ」。
68回目は、俳優 祐真キキさんの映画日記です。
日記の持ち主
俳優
祐真キキ
Kiki Sukezane
1989年京都生まれ。20歳で上京。東京のUnited Peformers Studioで演技を学び、その後ロサンゼルスへ。2015年アメリカのテレビシリーズ「Heros Reborn」でレギュラー出演を果たす。その後 Netflix「Lost in Space」、アンソニーホプキンス主演の「West World season2」に出演。2018年には 米映画「Earthquake Bird」2019年にはリドリースコット製作指揮ドラマシリーズ「The Terror: Infamy」で主役を演じ、活躍の場を広げている。

※本記事には薬物の使用に関する記述が含まれます。

2022年6月26日

朝LINEの電話が鳴る。

「今日オレ何するんやっけ?」

「今日は10時から病院。8時半には家出るから準備しといてな」

早朝。
青々とした山道の高速を、朝日を眺めながら1時間半かけて車で友達を迎えにいく。

友達は、睡眠導入剤の依存で、記憶障害になってしまった。
(友達をここではB君と呼ぶ事にしますね。)

ピンポーン。8時。

B君「お〜早いな! 今日何するんやっけ?」

私「今日も病院。後30分で出るから準備してな」

早く来て大正解。

B君「オッケー‼︎」

笑顔と愛想だけは良い。

車に乗り込み、
また1時間半かけて病院へ向かう。

B君「病院で何するんやっけ?」

私「今日は薬をもらいに行くだけ」

B君「あ、せやせや」

ここ半年の私の人生は、B君救出劇。

半年前。
アメリカから日本に一時帰国した私は、
マンスリーマンションで死の淵にいるB君を発見してしまった。

遮光カーテンは締め切られたまま、部屋の空気は湿気で澱み、異臭が漂っている。
コンビニで買ったであろう小さいクロワッサンの残りが、汚れたシンクの横に転がっている。
飲み干した水のペットボトルがあちらこちらに散らかり、ゴミ箱の中やテーブルの上は、薬袋が散らかっている。

ベッドには…

ガリガリにやせ細り、顎はガクガク小刻みに動き、指はずっと動きっぱなしのB君。

自分が今なぜここにいるのか、なぜ病院へ運ばれるのか、今日は何をしていたのか、ご飯は食べたのか、薬を何錠飲んだのか、彼は全く思い出せない。
何も思い出せない自分の状況にパニックを起こし、目の焦点があっていない。

そんな彼を見て、私の心臓も恐怖でバクバク。

医師には入院を強く勧められたが、看護師さんの説得も虚しく、本人が拒否。

アンビリーバボー! (笑)。

彼の脱薬と禁断症状、病院との往復に付き添うことになり、私はなぜか映画のような日常を送る事に…

病院の廊下で、

B君「ちょっとトイレ」

私「あっち右曲がったとこにあるわ」

B君「オッケー!」

30分経過…

探しに行くと、
全く違う場所でウロウロしているB君を発見…

B君「お〜!! (笑顔)迷ったわ〜」

(笑)…

ある日。

B君「メガネが6つも届いたぞ!」

私「え?」

B君は1人で眼鏡屋へ行ったみたいで、メガネを2つ購入。
次の日も眼鏡屋へ。
前日にメガネを買った事を忘れ、また2つ購入。
そして、またその次の日も2つ購入…

1週間後に6つのメガネが届き、驚いて私に電話をかけてきた。
眼鏡屋の店員さん! 止めてあげてよ!

と私は心の中で叫ぶ(笑)。

またある日、

B君「オレの車が無い!」

私「え?」

1人でショッピングモールへ行き、車をどこに停めたのか忘れたらしい。
結局警備員さんのおじさんに手伝ってもらい、1時間以上かけて無事に車を発見。

後々B君は車を失くす常連さんに。
警備員のおじさんとも友達になったみたい(笑)。

そんなこんなでなかなか映画をゆっくりと観る暇も余裕もなかった私。

さてと、ここからが、この話の本題。

久々に無性に映画が観たくなった私は、去年アンソニー・ホプキンスがアカデミー賞を受賞した作品『ファーザー』を、内容は一切何も知らないまま、家で1人で鑑賞。

まじか…

めっちゃタイムリーやん…(笑)。

映画の状況と、私のリアルライフの状況にリンクする部分がありすぎて、認知症の父親役のアンソニー・ホプキンスと娘役のオリヴィア・コールマンが、映画の中で表現している行動や感情や思いが、本当に本当にとてもリアルに表現されていて、共感の嵐。
経験した事があるとしか思えないほどの素晴らしい演技。

もうね、感動しすぎて髪の毛が抜けるかと思いました。

80代のアンソニー・ホプキンスの膨大なセリフ量にも感動。

B君の病院の付き添い、彼をとりまく状況に対しての悲しみやもどかしさ、苛立ちや焦り、将来がどうなっていくのかという不安。

B君に対するさまざまな感情に押し潰されかけていた私。

「私だけじゃ無いんだ。」

この映画が、私の感情を少し解放してくれた気がしました。

その後はB君も順調に回復し、社会へ復帰する事ができるまでになりました。

後は本人が頑張ってくれる事を、私は遠く離れたNYから願いながら、このコラムを書いています。

終わり。

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PROFILE
俳優
祐真キキ
Kiki Sukezane
1989年京都生まれ。20歳で上京。東京のUnited Peformers Studioで演技を学び、その後ロサンゼルスへ。2015年アメリカのテレビシリーズ「Heros Reborn」でレギュラー出演を果たす。その後 Netflix「Lost in Space」、アンソニーホプキンス主演の「West World season2」に出演。2018年には 米映画「Earthquake Bird」2019年にはリドリースコット製作指揮ドラマシリーズ「The Terror: Infamy」で主役を演じ、活躍の場を広げている。
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