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映画を観た日のアレコレ No.13

フリーアナウンサー
宇垣美里の映画日記
2020年7月26日

なかなか思うように外に出かけられない今、どんな風に1日を過ごしていますか? 映画を観ていますか?
何を食べ、何を思い、どんな映画を観たのか。
誰かの“映画を観た一日”を覗いてみたら、どんな風景が見えるでしょう?
日常の中に溶け込む、映画のある風景を映し出す連載「映画を観た日のアレコレ」。
13回目は、フリーアナウンサー 宇垣美里さんの映画日記です。
フリーアナウンサー
宇垣美里
Misato Ugaki
1991年4月16日生まれ、兵庫県出身。同志社大学卒業。
2014年にTBSにアナウンサーとして入社し、数々の人気番組に出演。
2019年3月に退社し、現在はフリーランスとして、アナウンサー、モデル、ラジオパーソナリティ、多数のCM出演など幅広く活躍中。
コスメ好きとしても有名で、コラムやエッセイなどの執筆活動も行っている。

2020年7月26日

オリンピックの開会式準備のため、のはずだった4連休。東京都民にはできるだけ外出を控えるようにとのお達しがきているので、おいそれと散歩にでるのもなんだか気が引ける。本当は東京都内くらいは出てもいいのだろうけれど……まあ、いい。それよりもやらなければならない原稿の山が、私には、ある。

4月から1ヶ月ばかり続いた緊急事態宣言。仕事以外は、ほぼ家にこもりっきりの生活をしてわかったことは、私はステイホームにめちゃくちゃ向いているということだ。休みが取れると分かれば即座にアプリを開き、航空券等の予約を済ませてしまうほどのフットワークの軽さを誇り、2日以上休みが続いたら「どこか遠くへ、ここではないどこかへ行かなければ」という焦燥感でソワソワしてしまうほどだった、落ち着きのない私。どこへも行けない現状にさぞ苦しむことだろうと、正直、自分で自分を心配していた。けれど蓋を開けてみれば、見たかったもの、読みたかったものが多すぎて、外に出るなんて気持ちが湧く暇もなかった。
読みたくて買ってきたのに積んだまま置いてあった本、観たい映画リストはどんどん増えていくのに、なかなかそれが減っていかない状況は、私にとってかなりのストレスだったみたい。あれも見たい、これも摂取したい。けれど、時間がない。できてないことが増えれば増えるほど、こんなこともできてない自分が情けなくて、ふがいなくて。それをようやくドカンと消化できて、一気に肩の荷が下りた。思えばここまでの人生、生き急ぎすぎていたのかもしれないなあ。

だいたい一日1~2本は映画を観ただろうか。お気に入り映画がたくさん増えた。それでもやっぱり何度も観返してしまう映画は、ずっとおなじ1作品。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。もう何十回と観ているので、今更字幕は追わない。この後の展開も分かるし、なんなら同じタイミングで台詞を言う事だってできちゃう。だから仕事や家事をしながらでも観ることができる。今日は料理をしながら観ることにした。激しいエンジン音に身を任せているうちに、作っていたカレーはかなり辛口になってしまった。スパイスをそんな勢いつけてふりかける必要はないし、肉を叩き切るのもやめたほうがいい。なんかまな板に傷がついた。でもやっぱり逸る心は止められない。
V8! V8! サイッコー。私たちは物じゃないし、自分らしく生きられないところで得られる長寿なんていらない。あると信じた楽園が存在しなかったとしても、もう一度走り出さないといけないし、ユートピアがないなら、今いるここで血みどろになって戦わなくてはならない。なんてキツイ教えだろう。甘えを許さないメッセージだろう。それでも観るたびに瞳孔をかっぴらいて「やってやろうじゃん?」って気持ちになれるのだ。こうテンションが上がってしまっては、すぐには眠れない。よし。カレー食べたら、ギリギリ締め切りを過ぎてしまった原稿の山にとりかかろう。

私にとってこの作品は立ちあがるための、一歩を踏み出すための、ルーティーンなのかもしれない。スイッチをいれるために2時間必要って、ポンコツだな。
別に喧嘩する予定があるわけじゃないけれど、明日は思いっきりアイラインを濃く入れよう。黒いシャドウでぐるりと目を囲めば、気分はフュリオサだ。将来的に私はシャーリーズ・セロンになりたい。

BACK NUMBER
FEATURED FILM
監督:ジョージ・ミラー
出演:トム・ハーディー、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、ヒュー・キース=バーン、ロージー・ハンティントン=ホワイトリ
石油も、そして水も尽きかけた世界。主人公は、愛する家族を奪われ、本能だけで生きながらえている元・警官マックス(トム・ハーディ『ダークナイト ライジング』)。資源を独占し、恐怖と暴力で民衆を支配するジョーの軍団に捕われたマックスは、反逆を企てるジョーの右腕フュリオサ(シャーリーズ・セロン)、配下の全身白塗りの男ニュークス(ニコラス・ホルト)と共に、奴隷として捕われた美女たちを引き連れ、自由への逃走を開始する。凄まじい追跡、炸裂するバトル……。絶体絶命のピンチを迎えた時、彼らの決死の反撃が始まる!
PROFILE
フリーアナウンサー
宇垣美里
Misato Ugaki
1991年4月16日生まれ、兵庫県出身。同志社大学卒業。
2014年にTBSにアナウンサーとして入社し、数々の人気番組に出演。
2019年3月に退社し、現在はフリーランスとして、アナウンサー、モデル、ラジオパーソナリティ、多数のCM出演など幅広く活躍中。
コスメ好きとしても有名で、コラムやエッセイなどの執筆活動も行っている。
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