PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば PINTSCOPE(ピントスコープ) 心に一本の映画があれば

映画の言葉

「作家は書かなきゃ」

SNSで最新情報をチェック!
©META FILM LONDON LIMITED 2017
映画の中の何気ない台詞が、
あなたにとっての特別な“言葉”となり、
世界を広げ、人生をちょっと豊かにしてくれるかもしれない。
そんな、映画の中の言葉を紹介します。

作家は書かなきゃ

By ジョーン

『天才作家の妻 40年目の真実』より

手柄を横取りされて悔しい思いをしたことはありますか?
または自分の成し遂げたことが正当に評価されず、無念を感じたことはありますか?

『天才作家の妻 40年目の真実』の主人公もそのひとり。ノーベル文学賞作家の妻であるジョーン(グレン・クローズ)は、夫に手柄を横取りされ続けてきました。というのも、実際に小説を執筆していたのは彼女だったからです。

今回取り上げるセリフは、ジョーンが大学生の時のもの。先輩女流作家へ、彼女の作品を「あなたの文章、シャープで力強くて好きです」と賞賛したジョーンに対して、男は女が書いたものなどまともに取り合わないと、先輩は自らをあざけります。ジョーンは「作家は書かなきゃ」と反論し、諦めるべきではないと主張しますが、「本は読まれなきゃ」(書いたって読まれなければ意味がない)と先輩は言い捨てるのでした。その後、自分の言葉通りジョーンは書き続けました。ただし、夫の名義で。
年老いたジョーンは、自分の作品が世界的に認められた喜びと、その賞賛が夫に向けられている悔しさの狭間で苦しみます。

ジョーンが書くことを止めていたら、傑作は生まれませんでした。その偉大な業績が正当に評価されないなんて理不尽ですが、歴史上には実際に夫名義で書いた人物は他にも存在しました。例えば、フランスの女性作家シドニー=ガブリエル・コレット(1873-1954)などです。

文学に限らず、女性に限らず、きっとどの時代にもどの世界にも大勢のジョーンがいるはず。今だって、「あなたじゃ見向きもされない」と言われて悔し涙を流している才能の原石が各分野に大勢いるかもしれません。

あるべきは、肩書や見た目で評価、判断されるのではなく、生み出した成果できちんと評価される世界。その実現のため、我々は表面的なものや偏見に惑わされずに真価を見定める目を鍛えなければいけないのだと思います。ジョーンの秘密に気付いたあの記者のように。

PINTSCOPEでは、TOPページで「映画の言葉」を定期的に更新中!

BACK NUMBER
RANKING
  1. 01
    山田真歩のやっほー!シネマ 第16回
    猫と留守番しながら思ったこと
  2. 02
    【特集】おうち映画がもっと特別になる「ポップコーン」の世界 前編
    “おうちシネマセット”6選
    「映画×ポップコーン×飲み物」
    ベストマッチを探せ!!
  3. 03
    有賀薫の心においしい映画とスープ 6皿目
    仕事か恋か、その選択を超えていけ
    『プラダを着た悪魔』
  4. いつでも口ずさむ歌があれば 04
    山田真歩のやっほー!シネマ 第15回
    いつでも口ずさむ歌があれば
  5. 一人で悩まなくてもいい。 一緒に考えてくれる人が周りにきっといるはず 05
    シム・ウンギョン×松坂桃李 インタビュー
    一人で悩まなくてもいい。
    一緒に考えてくれる人が周りにきっといるはず
  6. “自分の気持ちが自分でわかる”なんて思い込み。「コントロールできない」を肯定してみる 06
    森崎ウィン×深田晃司監督 インタビュー
    “自分の気持ちが自分でわかる”なんて思い込み。「コントロールできない」を肯定してみる
  7. 「会社を辞めて、生きていけるワケがない!」 その“呪い”から、映画と旅が解放してくれた 07
    地球の広報・旅人・エッセイスト たかのてるこインタビュー
    「会社を辞めて、生きていけるワケがない!」 その“呪い”から、映画と旅が解放してくれた
  8. 理解できない! それなのに、危険な存在に惹かれてしまう怖さって? 08
    嗚呼、こんなにも魅惑的な登場人物たち! 第2回
    理解できない! それなのに、危険な存在に惹かれてしまう怖さって?
  9. 2020年9月13日 石井玄の映画日記 09
    映画を観た日のアレコレ No.20
    2020年9月13日
    石井玄の映画日記
  10. 2020年9月27日 和田ラヂヲの映画日記 10
    映画を見た日のアレコレ No.21
    2020年9月27日
    和田ラヂヲの映画日記
FEATURED FILM
天才作家の妻 -40年目の真実-
監督:ビョルン・ルンゲ
キャスト:グレン・クローズ(『危険な情事』)、ジョナサン・プライス(『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ)、クリスチャン・スレーター(『ブロークン・アロー』)、マックス・アイアンズ、ハリー・ロイド、アニー・スターク、エリザベス・マクガヴァン
発売日:2019年8月28日
発売元:松竹
販売元:松竹
©META FILM LONDON LIMITED 2017
現代文学の巨匠ジョゼフと妻ジョーンのもとに、ノーベル文学賞受賞の吉報が届く。ふたりは息子を伴い授賞式が行われるストックホルムを訪れるが、ジョゼフの経歴に疑惑を持つ記者ナサニエルから夫婦の“秘密”について問われたジョーンは動揺を隠せない。実は若い頃から豊かな文才に恵まれていたジョーンだったが、あることがきっかけで作家になる夢を諦めた過去があった。そしてジョゼフとの結婚後、ジョーンは彼の“影”として、世界的な作家の成功を支えてきたのだ。
ずっと心の奥底に押しとどめていたジョゼフへの不満や怒りがジョーンの中でわき起こり、長年共に歩んできた夫婦の関係は崩壊へと向かう。そして授賞式当日、彼女はこれまで通り慎ましく完璧な“天才作家の妻”を装うのか。それとも本当の人生を取り戻すために、衝撃的な“真実”を世に知らしめるのか…
史上最大のスキャンダルの行方は―
PROFILE
映画・演劇ライター
八巻綾
Aya Yamaki
映画・演劇ライター。テレビ局にてミュージカル『フル・モンティ』や展覧会『ティム・バートン展』など、舞台・展覧会を中心としたイベントプロデューサーとして勤務した後、退職して関西に移住。八巻綾またはumisodachiの名前で映画・演劇レビューを中心にライター活動を開始。WEBサイト『めがね新聞』にてコラム【めがねと映画と舞台と】を連載中。
シェアする