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映画の言葉『アンダーカレント』山崎道夫のセリフより

「人をわかるって どういうことですか?」

アンダーカレント
©豊田徹也/講談社 ©2023「アンダーカレント」製作委員会
映画の中の何気ない台詞が、
あなたにとっての特別な“言葉”となり、
世界を広げ、人生をちょっと豊かにしてくれるかもしれない。
そんな、映画の中の言葉を紹介します。

人をわかるって
どういうことですか?

By 山崎道夫

『アンダーカレント』より

中学1年生のとき、小学生の頃から家族ぐるみで仲良くしていた友人から突然無視をされたことがありました。勇気を出して無視の理由を尋ねたところ、返ってきた答えは「最初からあんたの容姿も言動も嫌いだったから」。私は彼女のことが大好きだったし、何でも知っている気がしていたけれど、そんな風に思われていたなんて全然気付いていませんでした。

銭湯を営む『アンダーカレント』の主人公・かなえ(真木よう子)は、夫が旅行先で失踪して以来休業していました。久々に営業を再開したところ、住み込みで働きたいという男・堀(井浦新)がやってきます。銭湯業に勤しみつつ、かなえは友人に紹介された探偵・山崎(リリー・フランキー)に夫の捜索を依頼。夫について好き勝手にわかったようなことを言う山崎に、かなえは憤慨して「(夫のことを)少なくともあなたよりはわかっているつもりです」と言い返します。しかし、

「人をわかるって どういうことですか?」

山崎にこう質問され、かなえは答えに窮してしまうのでした。そしてこの問いは、本作のテーマそのものになっていきます。

誰かのことを完全に理解することなどできるのでしょうか? かなえの夫のことだけではなく、本作では複数のキャラクターの過去や、意外な一面が明らかになっていきます。家族のことだって、さらには自分自身のことだって、完全にわかることなど永遠にできないのだ……そう思い知れされます。

でも、だからといって諦めるしかないのでしょうか? それはきっと違います。私は結局、中学時代に私を嫌いだと言った友人と仲直りをすることはありませんでしたが、あのとき勇気を出して相手に疑問をぶつけられたからこそ、傷ついても立ち直ることができたと思っています。未知の何かを受け止める勇気と強さは、きっと未来へ進んでいく力になるはず。かなえたちそれぞれの苦悩と葛藤と決断を、ぜひスクリーンで目撃してください。

アンダーカレント

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INFORMATION
『アンダーカレント』
出演:真木よう子、井浦新、リリー・フランキー、永山瑛太、江口のりこ、中村久美、康すおん、内田理央
監督:今泉力哉
音楽:細野晴臣
脚本:澤井香織、今泉力哉
原作:豊田徹也『アンダーカレント』(講談社「アフタヌーンKC」刊)
製作幹事:ジョーカーフィルムズ、朝日新聞社
企画・製作プロダクション:ジョーカーフィルムズ
配給:KADOKAWA

10月6日(金)全国公開
©豊田徹也/講談社 ©2023「アンダーカレント」製作委員会
銭湯の女主人・かなえは、夫・悟が突然失踪し途方に暮れる。なんとか銭湯を再開すると、堀と名乗る謎の男が「働きたい」とやってきて、住み込みで働くことになり、二人の不思議な共同生活が始まる。一方、友人・菅野に紹介された胡散臭い探偵・山崎と悟の行方を探すことになったかなえは、夫の知られざる事実を次々と知ることに。悟、堀、そして、かなえ自身も心の底に沈めていた想いが、徐々に浮かび上がってくる−。
PROFILE
映画・演劇ライター
八巻綾
Aya Yamaki
映画・演劇ライター。テレビ局にてミュージカル『フル・モンティ』や展覧会『ティム・バートン展』など、舞台・展覧会を中心としたイベントプロデューサーとして勤務した後、退職して関西に移住。八巻綾またはumisodachiの名前で映画・演劇レビューを中心にライター活動を開始。WEBサイト『めがね新聞』にてコラム【めがねと映画と舞台と】を連載中。
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