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映画の言葉『銀河鉄道の父』父・宮沢政次郎のセリフより

「私が全部聞いてやる! 宮沢賢治の一番の読者になる!」

©2022「銀河鉄道の父」製作委員会
映画の中の何気ない台詞が、
あなたにとっての特別な“言葉”となり、
世界を広げ、人生をちょっと豊かにしてくれるかもしれない。
そんな、映画の中の言葉を紹介します。

私が全部聞いてやる!
宮沢賢治の一番の読者になる!

By 父・宮沢政次郎

『銀河鉄道の父』より

芸術、農耕、宗教と多くのものに情熱を注ぎ、37年という短い命を燃やした宮沢賢治(菅田将暉)。『銀河鉄道の父』は、ドラマチックなその人生を父親の目線から描いた作品です。

物語は、男の子(賢治)が生まれたという報を受けて急いで帰京する父・政次郎(役所広司)の姿から始まります。帰るなり赤子の元に駆け付け、賢治が体調を崩せば仕事も放って自ら看病する政次郎はまさに親バカ。家業である質屋を継ぐこともせず、大人になってからもずっと自分探しを続ける長男・賢治のことを受け入れ、家族を支え続けます。

本作は混じりっけなしの家族映画であると同時に、「死」についての物語でもあります。宮沢賢治自身、若くして亡くなってしまったわけですが、賢治の家族は本作でいくつもの「死」を乗り越えていきます。

「私が全部聞いてやる! 宮沢賢治の一番の読者になる!」

これは、家族を襲ったあまりにも辛い「死」の後に、創作への意欲も失いかけてしまった賢治に対して政次郎がかけた言葉です。

賢治を奮い立たせたこの政次郎の言葉を聞いて、私は自分の母の言葉を思い出しました。「私たちは何があっても絶対にあなたの味方だからね」……たとえ世界中が私と敵対しても、親だけは自分の味方でいてくれる。この言葉は私の中でお守りとなり、どんなに辛いことがあっても私の前を照らしてくれました。賢治に家業を継いでもらいたいと願っていたはずなのに、いつのまにか彼が作る物語の力を信じ、全力で息子の味方であり続けると誓う政次郎の姿に、いつしか私は自分の親の姿を重ねていました。

本作のパワーの源は、政次郎たち家族の間にある強い信頼だと私は思います。絶対的に自分を信じてくれている人がいるという安心感こそ、親が子どもに対して与えられる最大の愛情なのかもしれません。

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「銀河鉄道の父」

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INFORMATION
『銀河鉄道の父』
出演:役所広司 / 菅田将暉 森七菜 豊田裕大 / 坂井真紀 / 田中泯
監督:成島出
原作:門井慶喜「銀河鉄道の父」(講談社文庫)
脚本:坂口理子  音楽:海田庄吾
製作:木下グループ
制作プロダクション:キノフィルムズ / ツインズジャパン
配給:キノフィルムズ
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会  

2023年5月5日(金・祝)より全国公開
公式サイト: ginga-movie.com
©2022「銀河鉄道の父」製作委員会
笑って、泣いて、ぶつかって―
弱いけど強い、それが家族。

質屋を営む裕福な政次郎の長男に生まれた賢治は、跡取りとして大事に育てられるが、家業を「弱い者いじめ」だと断固として拒み、農業や人造宝石に夢中になって、父・政次郎と母・イチを振り回す。さらに、宗教に身を捧げると東京へ家出してしまう。そんな中、賢治の一番の理解者である妹のトシが、当時は不治の病だった結核に倒れる。賢治はトシを励ますために、一心不乱に物語を書き続け読み聞かせる。だが、願いは叶わず、みぞれの降る日にトシは旅立ってしまう。「トシがいなければ何も書けない」と慟哭する賢治に、「私が宮沢賢治の一番の読者になる!」と、再び筆を執らせたのは政次郎だった。「物語は自分の子供だ」と打ち明ける賢治に、「それなら、お父さんの孫だ。大好きで当たり前だ」と励ます政次郎。だが、ようやく道を見つけた賢治にトシと同じ運命が降りかかる──。
PROFILE
映画・演劇ライター
八巻綾
Aya Yamaki
映画・演劇ライター。テレビ局にてミュージカル『フル・モンティ』や展覧会『ティム・バートン展』など、舞台・展覧会を中心としたイベントプロデューサーとして勤務した後、退職して関西に移住。八巻綾またはumisodachiの名前で映画・演劇レビューを中心にライター活動を開始。WEBサイト『めがね新聞』にてコラム【めがねと映画と舞台と】を連載中。
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