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映画の言葉『前科者』斉藤みどりのセリフより

「弱いからいいんだ。佳代ちゃんの弱さは武器だから」

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前科者
© 2021香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会
映画の中の何気ない台詞が、
あなたにとっての特別な“言葉”となり、
世界を広げ、人生をちょっと豊かにしてくれるかもしれない。
そんな、映画の中の言葉を紹介します。

弱いからいいんだ。
佳代ちゃんの弱さは武器だから

By 斉藤みどり

『前科者』より

ここ最近、「傷ついた気持ちに寄り添う」や「社会的に弱い人々に寄り添う」など「寄り添う」という言葉を頻繁に聞くようになった気がします。ところで、「寄り添う」とはいったいどういうことなのでしょうか?

『前科者』の主人公・佳代(有村架純)は保護司です。保護司とは非常勤の国家公務員で、犯罪や非行をした人たちの更生をサポートするボランティア。保護観察対象者と定期的に面会し様々な指導や手助けを行いますが、報酬はありません。

コンビニで働きながら保護司をしている佳代は、過去に殺人を犯した保護観察対象者の誠(森田剛)が順調に生活を立て直し、現職場の社員になれる見込みであることに喜びを感じていました。しかし、思いもよらない出来事が発生してしまいます。

無報酬で罪を犯した人々に「寄り添う」生き方を選んだ佳代。でも、対象者が失踪したことによって自信を失い「対象者に寄り添うなんて偉そうに……私なんて何もできないのに」と押しつぶされそうになっている佳代を見て、彼女の初めての保護観察対象者だったみどり(石橋静河)はこう声をかけます。

「弱いからいいんだ。佳代ちゃんの弱さは武器だから」

罪を犯してから出会う人間は真っ当で強い人間ばかりで、心を閉ざしていたというみどり。でも、佳代には弱さがあるから隣にいると落ち着ける、前科者に必要なのは佳代みたいな人間だ、と続けます。佳代が保護司を志した裏には、ある出来事がありました。その過去ゆえに悩み苦しんできた佳代は、自身も対象者と同じ弱さがあることを自覚し、一緒に悩みながら歩んできたのです。

格差や感染症など様々な要因により、いまの社会はどんどん生きづらくなっています。だからこそ、罪を犯した人々はもちろん、目に見えない苦しみを抱えている人や不自由を感じている人々を切り捨てるのではなく、しっかりと「寄り添う」ことの重要性が問われてきているのではないでしょうか。でも、常識を振りかざして上から目線で叱咤激励して、助けてあげている気になっていることも多い気がします。

そうではなく、「寄り添う」ということがわからない、と本気で悩むことができる佳代。本当の意味での「寄り添う」とは、彼女のように自問自答しながら「寄り添う」ことの答えを謙虚にどこまでも模索し続けることなのかもしれません。

※今回取り上げた言葉は、映画版『前科者』の台詞です。映画版に先駆けて、阿川佳代が保護司になったばかりの頃の物語が、連続ドラマ版としてWOWOWオンデマンドとAmazon Prime Videoでも配信されています。

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BACK NUMBER
INFORMATION
『前科者』
出演:有村架純 磯村勇斗 若葉竜也 マキタスポーツ 石橋静河 北村有起哉 宇野祥平
リリー・フランキー 木村多江 /森田剛
監督・脚本・編集:岸善幸
原作:「前科者」(原作/香川まさひと・月島冬二「前科者」(小学館「ビッグコミックオリジナル」連載))
配給:日活・WOWOW
2022年1月28日(金) 全国ロードショー
© 2021香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会
いま届けたい希望と再生の物語
ふたつの仕事をかけ持つ阿川佳代、28歳。コンビニ勤務は至って平穏だが、もうひとつの務めは波乱に満ちていた。
元受刑者の更生を助ける保護司という仕事で、国家公務員だがボランティアのため報酬は一切ない。それでも阿川は、次々と新たな問題を起こす前科者たちを、「あなたは崖っぷちにいます!」と厳しく叱り、「落ちたら助けられなくなります」と優しく励ます。「もっと自分の人生を楽しめば」と周りには言われるが、何があっても寄り添い続ける覚悟に一点の曇りもなかった。
そんな中、阿川は殺人を犯した工藤誠を担当することになり、懸命に生きる彼を全力で支える。ところが、工藤は保護観察終了前の最後の面談に現れず、社員登用が決まっていた自動車修理工場からも悠然と姿を消す。折しも連続殺傷事件が発生、捜査線上に工藤が容疑者として浮かぶことで、これまで阿川が隠してきた過去や“保護司になった理由”が明かされていく。置いてきた過去に再び向き合う工藤、彼を信じてその更生に全力を注ぐ阿川。
二人がたどりついた先に見える希望とは――?
PROFILE
映画・演劇ライター
八巻綾
Aya Yamaki
映画・演劇ライター。テレビ局にてミュージカル『フル・モンティ』や展覧会『ティム・バートン展』など、舞台・展覧会を中心としたイベントプロデューサーとして勤務した後、退職して関西に移住。八巻綾またはumisodachiの名前で映画・演劇レビューを中心にライター活動を開始。WEBサイト『めがね新聞』にてコラム【めがねと映画と舞台と】を連載中。
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