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映画の言葉『パスト ライブス/再会』ヘソンのセリフより

「君が君だから 僕は好きだ」

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映画の中の何気ない台詞が、
あなたにとっての特別な“言葉”となり、
世界を広げ、人生をちょっと豊かにしてくれるかもしれない。
そんな、映画の中の言葉を紹介します。

君が君だから 僕は好きだ

By ヘソン

『パスト ライブス/再会』より

あなたには、忘れられない人や忘れられない後悔がありますか? 恋愛感情に限らず、誰にでも「もしもあのときこうしていれば」と思う瞬間があるのではないでしょうか。

『パスト ライブス/再会』は、共にソウルで育ち、12歳の時に離ればなれになった少年ヘソンと少女ノラのその後を描いた物語です。ヘソン(ユ・テオ)は韓国に留まり、ノラ(グレタ・リー)は移民としてカナダに渡りましたが、互いへの初恋の記憶はそれぞれの心の中に強く刻まれたままでした。

美しい情景や音楽と共に綴られるその後の24年間。2人はそれぞれの場所で迷い、つまずきながら人生を歩んでいきます。24年後に遂に再会を果たした2人はすっかり大人になっていました。

「君が君だから 僕は好きだ」

これは、24年の時を経てヘソンがノラに伝えた言葉です。「君が君だから」という言葉の中には、初恋の思い出を大切にしつつも、24年という時間を積み重ねてきた「今」のノラを受け止めているというニュアンスが込められています。もしノラが移住をせずにずっとヘソンと一緒にいたら、ノラは今とは少し違うノラになっていたでしょう。24年間離れていたからこそ、ヘソンは「君が君だから 僕は好きだ」と思えるノラと出会うことができた……それもまた運命だったのかもしれません。

本作において、運命は「イニョン」という言葉で表されます。ノラはイニョンについて「見知らぬ者同士が道ですれ違い、袖が偶然軽く触れたら、それは2人の間にはきっと前世で何かがあったから」と説明します。たとえ一瞬の関りであったとしても、そこに「縁」を見出すというのがイニョンです。

本作を観た人は、ヘソンとノラの姿に、自分自身の人生を重ねずにはいられないでしょう。前世でイニョンを結んできたヘソンとノラがきっと来世でもイニョンを結んでいくように、あなたも数多くのイニョンを結んできて、これからも結び続けていくのです。あなたの中にある「もしもあのときこうしていれば」という後悔も、きっと希望に変わるはずです。

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FEATURED FILM
出演:グレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロ
監督/脚本/プロデュース:セリーヌ・ソン
製作総指揮:ダビド・イノホサ(PGA会員) クリスティーン・ヴェイコン(PGA会員)パメラ・コフラー(PGA会員)
共同製作総指揮:ヨンウ・チョイ
共同プロデューサー:カン・サンウ イェール・チェイスン
撮影監督:シャビアー・カークナー
プロダクション・デザイン:グレイス・ユン
編集:キース・フラース
衣装デザイン:カティナ・ダナバシス
音楽:クリストファー・ベア、ダニエル・ロッセン
キャスティング:エレン・チェノウェス、スザンヌ・シール
字幕翻訳:松浦美奈
原題:Past Lives
提供:ハピネットファントム・スタジオ、KDDI
配給:ハピネットファントム・スタジオ
2024年4月5日(金)より全国公開中

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ソウルに暮らす12歳の少女ノラと少年ヘソン。ふたりはお互いに恋心を抱いていたが、ノラの海外移住により離れ離れになってしまう。12年後24歳になり、ニューヨークとソウルでそれぞれの人生を歩んでいたふたりは、オンラインで再会を果たし、お互いを想いながらもすれ違ってしまう。そして12年後の36歳、ノラは作家のアーサーと結婚していた。ヘソンはそのことを知りながらも、ノラに会うためにニューヨークを訪れる。24年ぶりにやっとめぐり逢えたふたりの再会の7日間。ふたりが選ぶ、運命とはーー。
PROFILE
映画・演劇ライター
八巻綾
Aya Yamaki
映画・演劇ライター。テレビ局にてミュージカル『フル・モンティ』や展覧会『ティム・バートン展』など、舞台・展覧会を中心としたイベントプロデューサーとして勤務した後、退職して関西に移住。八巻綾またはumisodachiの名前で映画・演劇レビューを中心にライター活動を開始。WEBサイト『めがね新聞』にてコラム【めがねと映画と舞台と】を連載中。
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