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映画の言葉『水は海に向かって流れる』榊千紗のセリフより

「怒っていいよ 怒って大丈夫だよ」

©2023映画「水は海に向かって流れる」製作委員会 ©田島列島/講談社
映画の中の何気ない台詞が、
あなたにとっての特別な“言葉”となり、
世界を広げ、人生をちょっと豊かにしてくれるかもしれない。
そんな、映画の中の言葉を紹介します。

怒っていいよ
怒って大丈夫だよ

By 榊千紗

『水は海に向かって流れる』より

「怒り」に対して、社会は冷淡だと感じることがあります。
何かに対して怒ったとき、こんな言葉をかけられたことはありませんか?

怒りは何も生み出さないよ。
〇〇ちゃんは謝ったんだから、あなたも許してあげなきゃ。

また、権利を主張するマイノリティについて「ギャーギャー騒いでいる」という表現を使ったり、主張が強い同僚に対して「あの人いつも怒っているよね」と言ってみたり。しかし、そもそも怒りというのは嫌忌けんきされたり軽視されるべき感情なのでしょうか?

田島列島の同名コミックを前田哲監督が映画化した『水は海に向かって流れる』の主人公は、実家から離れた高校に通学するために叔父の家にやってきた直達(大西利空)です。しかし、てっきり一人暮らしをしていると思っていた叔父(高良健吾)はシェアハウスに暮らしていて、駅まで迎えに来てくれたのは妙にクールな20代女性の千紗(広瀬すず)でした。

どこか風変りだけれど優しいシェアハウスの住人たちと、拾った子猫のムーちゃん。直達は平和な高校生活をスタートさせますが、千紗だけは表情に暗い影を浮かべたまま。そして、その理由である複雑な偶然が判明し……。

「怒っていいよ 怒って大丈夫だよ」

これは、千紗が直達にかけた言葉です。ある事実を知り戸惑っていた直達は、あるとき自分が酷く怒っていることに気づきます。自分たちには何の責任もないことで、大切な人も自分も深く傷つけられている……そんな理不尽に対して怒りを抱くのは当然です。千紗から「怒っていいよ」と言われた直達は、ようやく自分の感情を解放してあげることができるのでした。

千紗はまた、「怒ったってしょうがないことばかりだけど 怒らなければ許してるのと同じよ」とも言います。今さらどうにもならなくても、怒りをぶつけたところで何も変わらなくても、「怒る」こと自体を咎める権利など誰にもありません。傷ついている誰かから「怒り」を取り上げるのは、ひどく横暴な行為なのではないでしょうか。「怒り」を軽視するのではなく、「怒っていいよ」と言ってあげられる社会であってほしいと、私は願います。

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「水は海に向かって流れる」

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INFORMATION
『水は海に向かって流れる』
出演:広瀬すず
大西利空 高良健吾 戸塚純貴 當真あみ/勝村政信
北村有起哉 坂井真紀 生瀬勝久
監督:前田哲
原作:田島列島「水は海に向かって流れる」(講談社「少年マガジンKCDX」刊)
脚本:大島里美
音楽:羽毛田丈史
主題歌:スピッツ「ときめきpart1」(Polydor Records)
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
製作プロダクション:スタジオブルー
製作:映画「水は海に向かって流れる」製作委員会

6月9日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー中
©2023映画「水は海に向かって流れる」製作委員会 ©田島列島/講談社
この雨の日の出会いが、世界を変えた――
通学のため、叔父・茂道の家に居候することになった高校生の直達。だが、どしゃぶりの雨の中、最寄りの駅に迎えにきたのは見知らぬ大人の女性、榊さんだった。案内されたのはまさかのシェアハウス。いつも不機嫌そうにしているが、気まぐれに美味しいご飯を振る舞う26 歳の OL ・榊さんを始めとし、脱サラしたマンガ家の叔父・茂道(通称:ニゲミチ)、女装の占い師・泉谷、海外を放浪する大学教授・成瀬…と、いずれも曲者揃いの男女5人、さらには、拾った猫・ミスタームーンライト(愛称:ムー)をきっかけにシェアハウスを訪れるようになった直達の同級生で泉谷の妹・楓も混ざり、想定外の共同生活が始まっていく。そして、日々を淡々と過ごす榊さんに淡い想いを抱き始める直達だったが、「恋愛はしない」と宣言する彼女との間には、過去に思いも寄らぬ因縁が……。榊さんが恋愛を止めてしまった《本当の理由》とは……?
PROFILE
映画・演劇ライター
八巻綾
Aya Yamaki
映画・演劇ライター。テレビ局にてミュージカル『フル・モンティ』や展覧会『ティム・バートン展』など、舞台・展覧会を中心としたイベントプロデューサーとして勤務した後、退職して関西に移住。八巻綾またはumisodachiの名前で映画・演劇レビューを中心にライター活動を開始。WEBサイト『めがね新聞』にてコラム【めがねと映画と舞台と】を連載中。
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