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映画の言葉『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』リリーのセリフより

「でもママとは別々よ」

©2015 LILY HARDING PICTURES, LLC ALL RIGHTS RESERVED. ©JON PACK, HALL MONITOR INC.
映画の中の何気ない台詞が、
あなたにとっての特別な“言葉”となり、
世界を広げ、人生をちょっと豊かにしてくれるかもしれない。
そんな、映画の中の言葉を紹介します。

でもママとは別々よ

By リリー

『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』より

今日一緒にご飯を食べる人に「何を食べたい?」と聞かれたら、どんな返答をしますか? 私はつい「合わせるよ」とか「○○が食べたいものでいいよ」と答え、決断を相手にゆだねてしまうことがあります。食事のメニューに限らず、小さなことから大きなことまで、自分の決断をおろそかにするくせに、他人の選択にはつい口を出したくなってしまう。自分と他人の境界線はいつも曖昧。それが家族であればなおさら…。そんな性分の人、実は結構多いのではないでしょうか。

小さなころから、私は家族のなかで、いつも“面白くてしっかりもののお姉ちゃん”でした(と、自負しています)。成人した後もずっと、一番のアイデンティティは “お姉ちゃんでいること”で、家族に問題が起きたときは我先にと口を出し、各人の生活態度に対して約300km離れた土地からうるさく干渉してきました。

『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』は、新しい家族の在り方を模索して奔走する、マギー(グレタ・ガーウィグ)とジョン(イーサン・ホーク)、ジョーゼット(ジュリアン・ムーア)という男女三人の奇妙な三角関係を描いたコメディ映画です。

取り上げたのは、物語の後半でマギーと娘のリリーがシャボン玉をしながらお風呂に入るという可愛らしいシーンのセリフ。母親であるマギーの「シャボン玉のなかで暮らしたい」というつぶやきに対し、3歳のリリーが「私も」と言ってから続けたこの言葉は、人はみなそれぞれの人生を生きているということを示唆しています。そしてそれは、自分の安心のためだけに過干渉で、その実誰よりも家族に依存的な私を顧みさせてくれた、痛くて重い真実のセリフでした。

自己中心的で大人になりきれない三人が、右往左往しながら迎える物語のラスト。その姿は、人はみな、まず自分の人生を生きて幸せになること。そのうえで、ときには支え合い助け合うということの大切さを教えてくれました。それは、家族のためだけでなく、自分のためにも忘れないでいたいことです。

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FEATURED FILM
マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ
監督・脚本:レベッカ・ミラー
原案:カレン・リナルディ
プロデューサー:レイチェル・ホロヴィッツ、デーモン・カーダシス、レベッカ・ミラー
音楽監修:アダム・ホロヴィッツ

キャスト:
グレタ・ガーウィグ、イーサン・ホーク、ビル・ヘイダー、マーヤ・ルドルフ、トラヴィス・フィメル、ジュリアン・ムーア

2017年8月2日リリース
発売元:松竹  販売元:松竹
©2015 LILY HARDING PICTURES, LLC ALL RIGHTS RESERVED. ©JON PACK, HALL MONITOR INC.
NYの大学でアーティスト・コーディネーターとして働くマギーは、小説家を目指す新進気鋭の文化人類学者のジョンと出会い、恋に落ちる。ジョンは既婚者で妻ジョーゼットは教授として働くバリバリのキャリア。家庭を顧みない妻に疲れ果てたジョンは離婚を決意し、自分の小説を好きだと言ってくれるマギーと再婚する。
数年後、娘も授かり幸せに見えた2人だが、仕事も辞め小説家の夢を追い続けるジョンとの結婚生活に不安を感じるマギー。一方、忙しいジョーゼットの子供たちの面倒を見るうち彼女とも親しくなり、彼女が“鬼嫁”ではなく知的で魅力的で、今でもジョンを深く愛していると気づく。ジョンはジョーゼットと一緒にいた方が、きっと幸せになれる・・・そう思ったマギーは【夫を前妻に返す】という、とんでもない計画を思いつく―。
PROFILE
ライター
安多香子
Takako Yasu
滋賀県生まれ。相撲と映画とビールをこよなく愛する。編集プロダクション勤務を経て、現在はライティングや編集の仕事に携わる。
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