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映画の言葉『We Live in Time この時を生きて』 トビアスの言葉より

「僕が見るべきなのはーー
目の前の君だった」

『We Live in Time この時を生きて』
© 2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION
映画の中の何気ない台詞が、
あなたにとっての特別な“言葉”となり、
世界を広げ、人生をちょっと豊かにしてくれるかもしれない。
そんな、映画の中の言葉を紹介します。

僕が見るべきなのはーー
目の前の君だった

By トビアス

『We Live in Time この時を生きて』

「老後資金には〇〇万円必要です」「今は勉強を優先しなさい」……私たちは日々こんなことを言ったり言われたりしながら生きています。未来のことを考えて、現在の行動を決定する。それはいかにも理にかなっているように見えますが、『We Live in Time この時を生きて』を観た人はきっと「ちょっと待てよ?」と感じるのではないのでしょうか。

離婚直後で落ち込んでいるトビアス(アンドリュー・ガーフィールド)は、ひょんなことから新進気鋭のシェフであるアルムート(フローレンス・ピュー)と出会い、恋に落ちます。対照的な性格のふたりは衝突を繰り返しながらも家庭を築き、絆を深めていくのでした。しかし、アルムートの命に限りがあることが発覚します。

本作では、トビアスとアルムートの関係が、現在と過去を行ったり来たりしながら、丁寧に描かれていきます。意見の齟齬があるたびに、自分の意見を言い、相手の意見を聞き、お互いに譲れるところと譲れないところを検討して歩み寄っていくふたり。いつだって真剣に向き合っている彼らの姿は、「誰かと生きていくためには、相手を思いやらないといけない」という真理を改めて私たちに教えてくれます。

それと同時に、限られた時間を共に生きるふたりを描いた本作は、「私たちが生きているのは、過去でも未来でもなく“いま”なのだ」という真理も提示しています。

「僕が見るべきなのはーー 目の前の君だった」

これは、ある対話の際にトビアスがアルムートに伝えた言葉です。起こり得る未来を心配してしまうトビアスは、傷つくことを恐れて不安になるですが、“いま”を大切にするアルムートの考え方を理解し、自分もそうあるべきだということに気付きます。“いま”自分が向き合っているのはまだ現実になっていない未来ではなく、紛れもなく目の前に実在している相手なのですから。

大切に思う相手がいたら、“いま” 目の前に存在しているその人のことを思いやって、対話を重ねていく。起きてもいない未来ではなく、“いま”まさに目にし、触れ、味わい、感じるものを大事にする――本作を観た人は、そんな風に“いま”という瞬間のかけがえのなさを再認識するに違いありません。

BACK NUMBER
FEATURED FILM
新進気鋭の一流シェフであるアルムートと、離婚して失意のどん底にいたトビアス。何の接点もなかった二人が、あり得ない
出会いを果たして恋におちる。自由奔放なアルムートと慎重派のトビアスは何度も危機を迎えながらも、一緒に暮らし娘が
生まれ家族になる。そんな中、アルムートの余命がわずかだと知った二人が選んだ型破りな挑戦とは──
© 2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION
監督:ジョン・クローリー(『ブルックリン』)
出演:フローレンス・ピュー、アンドリュー・ガーフィールド
配給会社:キノフィルムズ
6 月 6 日(金)TOHO シネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
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