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映画の言葉『兄を持ち運べるサイズに』村井理子の言葉より

支えであり、呪縛ではない

『兄を持ち運べるサイズに』
©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
映画の中の何気ない台詞が、
あなたにとっての特別な“言葉”となり、
世界を広げ、人生をちょっと豊かにしてくれるかもしれない。
そんな、映画の中の言葉を紹介します。

支えであり、呪縛ではない

By 村井理子

『兄を持ち運べるサイズに』

私には少し年の離れた兄がいます。なかなか激しい反抗期を経て20歳でアメリカに渡り、大怪我をしたり結婚離婚を経験したりとドラマチックな人生を歩んできた彼は、最終的にアメリカ人アーティストとして生きる道を選びました。個性が強くて議論好きでなにかとルーズ、いつも冗談なのか本気なのかわからないような発言ばかりしている兄には、未だに顔を合わせると文句ばかり言ってしまいます。

『兄を持ち運べるサイズに』は、兄(オダギリジョー)の突然の訃報を受け、彼が生前住んでいたゴミ屋敷のアパートをその元妻・加奈子(満島ひかり)らと共に片付けることになった妹・村井理子(柴咲コウ)が兄の後始末をしながら、家族を想いなおす4日間を描いた映画です。

母親に溺愛されて定職にもつかず、親の脛をかじり続けた挙句に、病に伏した母親を見捨てて逃げた理子の兄。妹にまで金をせびるクズっぷりは私の兄とは比較にはなりませんが、いい加減なような真剣なような発言だったり、自分の子供にかけるありったけの愛情だったり、妙なところに全力投球だったりする理子の兄のマイペースさを見ていたら、私は自分の兄のことを考えずにはいられませんでした。

「支えであり、呪縛ではない」

これは、作家である理子がこの経験を記した著書の冒頭に記した言葉です。兄に愛想をつかし、迷惑に感じていた理子は、彼の死をきっかけに、再会した加奈子やその子供たちとの対話を通じて、それまで目を反らしてきた兄との思い出や、自分が知らなかった彼の姿を直視していきます。それは「家族」という存在が、自分にとっては確かに「支え」であったということを、ゆっくりと受け入れ直していく作業でした。

自由人で突拍子もないことを言い出したり、やたらと政治の話をしたがったりする兄に会うたびに呆れてばかりの私は、いつしか理子自身に憑依してしまったような錯覚すら覚えながら作品を鑑賞していました。そして、認めざるを得ないと観念しました……そう、小さい頃から、どうしたって私は兄のことが大好きなんだということを。

『兄を持ち運べるサイズに』
©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
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FEATURED FILM
作家の理子は、突如警察から、兄の急死を知らされる。兄が住んでいた東北へと向かいながら、理子は兄との苦い思い出を振り返っていた。警察署で7年ぶりに兄の元妻・加奈子と娘の満里奈、一時的に児童相談所に保護されている良一と再会、兄を荼毘に付す。 そして、兄たちが住んでいたゴミ屋敷と化しているアパートを片付けていた3人が目にしたのは、壁に貼られた家族写真の数々。子供時代の兄と理子が写ったもの、兄・加奈子・満里奈・良一が作った家族のもの・・・ 兄の後始末をしながら悪口を言いつづける理子に、同じように迷惑をかけられたはずの加奈子はぽつりと言う。「もしかしたら、理子ちゃんには、あの人の知らないところがあるのかな」 兄の知らなかった事実に触れ、怒り、笑って、少し泣いた、もう一度、家族を想いなおす、4人のてんてこまいな4日間が始まったー。
©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
原作:「兄の終い」村井理子(CEメディアハウス刊)
脚本・監督:中野量太
出演:柴咲コウ オダギリジョー 満島ひかり 青山姫乃 味元耀大
制作プロダクション:ブリッジヘッド/パイプライン
配給:カルチュア・パブリッシャーズ

11月28日(金)公開
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