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映画の言葉『しあわせな選択』イ・ミリの言葉より

そんなに一生懸命生きなくてもいいのに

『しあわせな選択』場面写真
©️2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED
映画の中の何気ない台詞が、
あなたにとっての特別な“言葉”となり、
世界を広げ、人生をちょっと豊かにしてくれるかもしれない。
そんな、映画の中の言葉を紹介します。

そんなに一生懸命生きなくてもいいのに

By イ・ミリ

『しあわせな選択』

平穏で順調な毎日だったのに、予想もしない不運に見舞われた! 必死に築いてきた人生が、一瞬で崩壊…。そんな経験はありますか? そういうとき、人はどんな行動に出るのでしょうか?

巨匠パク・チャヌク監督の最新作『しあわせな選択』(2026年3月6日公開)は、そんな「急転直下の危機」に見舞われた男の物語です。製紙会社で順調に出世してきたサラリーマンのマンス(イ・ビョンホン)は、妻と二人の子どもとペットたちと共に満ち足りた日々を送っていました。しかし、勤務する製紙会社が買収され、あろうことかマンスが解雇されることに。リストラに遭ったことで状況は一変。なかなか再就職先を見つけることができず、一気にピンチに陥ります。製紙業界にも、豊かな生活にも未練があるマンスは、ジタバタした挙句に驚きの行動に出るのでした。

「そんなに一生懸命生きなくてもいいのに」

これは、マンスの最愛の妻・ミリ(ソン・イェジン)がマンスを抱きしめながら言うセリフです。家族に対しては平静を装い続けるマンスに疑念や不安を感じながらも、決して問いただしたり取り乱したりはせず、グッと足を踏ん張り続けるミリは、本作におけるもうひとりの主人公。突如訪れたピンチに動揺して視野が狭まり、どんどん暴走していくマンスとは反対に、ミリは冷静に現状を把握して淡々と、家族の最低限の生活を守るために必要な行動をとっていきます。本当は夫の様子にも将来にも強い不安を抱えているのに、彼女はその気持ちを押し殺し、こうして夫を優しく受け止めながら……おっと、これ以上はネタバレになるのでやめておきましょう。

しかし、本作で描かれる、マンスが自ら選んだ「極端な選択」を笑い飛ばせないほど、社会では格差が広がり、転がり落ちないために、幸せな生活を守るために、人々の必死さは増していると感じます。でも、その「守りたい幸せ」は本当の幸せなのだろうか……と考えざるを得ません。

ところで、私もマンスの「ジタバタ」には身に覚えがあります。息子が迷子になったことに焦ってそこら中を探し回り、どう考えてもいるわけがない場所にまで入っていってスマホを落とし、靴をなくし、最終的には色々な人を巻き込んで大騒ぎ。どうやら私もマンスのように、ピンチになると極端に視野が狭まって「一生懸命」になってしまうタイプのようです。結果、無事に息子は見つかったので今となっては笑い話なのですが、本人にとっては「一生懸命」そのものでも、あとから考えると滑稽だったり理解不能だったりするというのも、本作を楽しむ上での大きなポイントのひとつです。

予測できない斜め上の展開にドキドキハラハラしながら、ミリのような眼差しで愛すべき人間の可笑しみを見守ってみてください。

『しあわせな選択』場面写真
©️2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED
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FEATURED FILM
「全てを叶えた」
製紙会社で25年間、堅実に仕事をしてきたマンスは、心からそう思い、妻と2人の子供、2匹の犬と郊外の大きな家で“理想的”な人生を送っていた。突然、会社から解雇されるまでは。必死に築いてきた人生が、一瞬のうちに崩壊!? 好調の製紙会社への就活も失敗したマンスが閃いたのは、衝撃のアイデアだった。それは……
「ライバルがいなくなれば、仕事は手に入る」
©️2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED
監督:パク・チャヌク
出演:イ・ビョンホン、ソン・イェジン、パク・ヒスン、イ・ソンミン、ヨム・ヘラン、チャ・スンウォン
配給:キノフィルムズ
【PG-12】
3月6日(金) TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開

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